「未来に泊まれる宿泊券」も。今、困っている観光業を支援する方法

[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]

観光ホスピタリティコンサルタントとして、国内外のあらゆる地に足を運んできた石田宜久さん。そんな観光のプロがつづる「ふるさと旅を10倍楽しくする」方法とは? 新型コロナウイルスの流行で大打撃を受けた観光業。私たちが今できる、観光業を応援する方法を教えていただきました。

コロナの影響で打撃を受けた観光業を支援する方法

旅行

 非常事態宣言は解除されたものの、県をまたいでの移動はまだまだ自粛対象。ふるさと旅を楽しめるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。外出自粛要請によって観光客が激減したことで、歴史ある旅館や観光地の飲食店が閉店してしまうというニュースが、4月頃から私の耳にもよく入ってくるようになりました。

 観光コンサルタントである私のまわりでも、進行中だった地方活性化プロジェクトは停止せざるを得なくなり、地域一丸となって進めていたキャンペーンも中止に。つまり、コロナ禍において観光業は大きな打撃を受け、衰退の一途を辿っています。いつか憂いなく旅を再開できるようになる日のために、私たちにできることはなんなのか? 今回は、ごく一部ですが観光を応援する方法をご紹介します。

配達や容器が間に合わず、お取り寄せで業者が赤字になることも

 まず思いつくのは、グルメや名産品など、地方からのお取り寄せ。全国各地で「お取り寄せによって地域を応援しよう」という試みが始まり、多くの飲食店が参戦しています。しかし、緊急事態宣言以降、政府や各自治体からの提言のなかに「通販・宅配の有効活用」という内容が盛り込まれたこともあり、宅配物の量は2倍以上に膨れあがったといいます。大手の宅配会社ではセールスドライバーの感染者も確認され、ただでさえ人不足という状況のなか、さらなる負担がかけてしまうのも忍びないものです。

 また、送り主側である地域の商店でも、販売する中身はつくれるものの、それを入れるびんや包装するものがたらず、それに対処するために通常時とは違う発注方法を取ることにより、注文が入れば入るだけ赤字になってしまっているケースも少なくありません。悲しいかな、応援するつもりが各業界の首を絞めてしまっている場合もあるのです。

「ドライブインシアター」をクラウドファンディング

ドライブインシアター

 そんななかで私がオススメしたいのが、クラウドファンディング。インターネットを通して、その活動や想いに対して応援したいと思った人から募金を募る仕組みですね。このクラウドファンディングを使った動きが各地で進んでいます。

 ここで紹介するのは「ドライブインシアター」。駐車場にスクリーンを配置し、ラジオを通して音を流す、自家用車の中から映画を観る上映施設です。日本でも1990年代に流行したのですが、今ではこのようなサービスを提供している場所は非常に限られていました。しかし、このドライブインスタイルが「安全に映画を観ることができる方法」として注目されているのです。屋外で、かつ車内ごとに隔離されているので、不特定多数の人が集まりながらも3密を防ぐことができますからね。

 現在、株式会社ハッチが運営するシアタープロヂュースチーム「Do it Theater」が「ドライブインシアター2020」というプロジェクトをクラウドファンディングを活用して進行中です。新型コロナウイルスの混乱によって大きな被害を受けているのは、エンタメ業界も同じです。映画館は休業要請の対象でもあり、閉館ギリギリの施設も少なくはありません。今回のプロジェクトでは、ドライブインシアターの運営と合わせて、閉館間近となっているミニシアターへのへの寄付も兼ねたものとなっているそうです。

 第1回の予定開催会場は大磯ロングビーチ駐車場ですが、中長期的に全国へのムーブメントを目指したいと、今後も活動を続けていくとのこと。外出が難しく、地域の動きが止まってしまっている今、地域を少しでも盛り上げるきっかけと、映画施設の支援ためになるのではと期待されています。

「未来に泊まれる宿泊券」で宿泊施設を支援

未来に泊まれる宿泊券

 最後にもうひとつ。クラウドファンディング以外で特筆すべきは、株式会社CHILLNN(チルン)が立ち上げた「未来に泊まれる宿泊券」というサービス。これは、ラグジュアリークラスのホテルやヴィラから、民宿のようなカジュアルクラスまで、さまざまなクラスの宿泊施設が「いつか未来に泊まってもらえる宿泊券」を販売するサービス。 今すぐ助けが必要な宿泊施設に対して、「落ち着いたら行くから!」という意思表示と「今できる応援」を進めることが未来の観光へとつながるのです。

 もちろん、実際に商品を買うという行為も大きな助けになるのですが、観光業はそれだけではありませんし、負担を敷いてしまう方々がいることも忘れてはいけません。いつか旅に出られる日のために、楽しい時間を提供してくれる方々の応援も必要です。ここに記せたのはごく一部。観光業に携わる人間のひとりとして「ぜひ観光業を助けてください」とみなさんにお伝えしたいのです。

[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]

観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi(ディシィ)代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ