観光のプロが提案「思いどおり旅する」の第一歩とは?

[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]

観光ホスピタリティコンサルタントとして国内外のあらゆる地に足を運んできた石田宜久さん。そんな観光のプロが綴る「ふるさと旅を10倍楽しくする」方法とは? 第一回は、旅を最大限楽しむために日頃から取り組める“第一歩”について紹介します。

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「関東の富士見百景」に選出された富士見テラス(東京都東久留米市)から撮影した富士山(出典:関東地方整備局)

「思いどおりの旅ができなかった」と感じる人はとても多い

「どんなに洗練された大人のなかにも、外に出たくてしょうがない小さな子供がいる」

 これは、言わずと知れたディズニーランドの創設者でミッキーマウスの生みの親、ウォルト・ディズニーが残した言葉です。

 彼の言葉のとおり、知らない地に出かけて普段できない経験をすることは、いくつになってもワクワクしませんか? いつの時代も、人は旅へ出ることに魅力を感じるものです。現に日本でも、長期休暇や連休の際に多くの人が旅行に出かけ、家族やパートナー、あるいはひとりで思い出を作っています。さらには長年の勤務を終え、セカンドライフの楽しみのひとつとして“旅”に時間と資産をつぎ込む方も多くなってきています。そうやって、せっかく自分の時間と多額のお金を投じて旅へ出るのですから、旅の内容は少しでもいいものにしたいものですよね。

 しかし、ネットに出回っているツアープランやパッケージ、旅行代理店の団体旅行に参加した結果、残念ながら「思いどおりの旅ができなかった」と感じる人が非常に多いのも事実です。旅の形は人それぞれ。なかなか既存のツアープランが自分の思ったとおりのプランになっていることは稀なんです。

 そこで必要となってくるのが「自分で旅のすべてをプランニングするスキル」です。自分が乗りたい交通手段で目的地へ向かい、その地への滞在時間は「自分が満足できたかどうか」次第。時間に縛られることなくお土産を選び、写真の画角も自分で決めて心置きなく撮影する。みずからがすべてをプランニングする旅では、あらゆることが自由です。

 とはいえ、いきなり「自分で旅を作る」といってもイメージがわかないかもしれません。そこで第一回目となる今回は、理想の旅を実現するための“第一歩”として私がオススメしていることについて紹介したいと思います。

「みずから魅力を見つけ出す目」をもつことが旅を楽しむ第一歩

 理想の旅への第一歩、それは「普段のちょっとしたお出かけで、見どころを探してみる」ことです。

 普段、私は観光コンサルタントとして訪れる地域の魅力探しも仕事のひとつとなっているのですが、そこで多く耳にするのが、地元の人々の「こんなところに、こんな場所があったのか!」という声です。普段住んでいると見落としてしまう“いいところ”がどんな場所にだってあるものです。もちろん、それは観光コンサルタントという仕事をしている私にとっても同じです。初めて訪れる地では見つけることができても、行き慣れた街、見慣れた場所では、じつは見落としている魅力が多くありました。

 身近な例を挙げるとすれば、みなさんは「関東の富士見百景」というものをご存知でしょうか? 冒頭の写真のように、富士山を望むことのできる場所やエリアを国土交通省関東地方整備局が選定したものです。

 昔と比べると、高い建物が増え、空気も汚れ、ちょっと高いところに上がれば富士山が見えるというスポットは明らかに減ってしまいます。とはいえ、電車の車窓やちょっとしたビルの隙間から富士山が見えたとき、驚いたり少し嬉しくなったり、思わずスマホで写真を撮ってしまったりという経験をされた方は少なくないと思います。ましてや行き慣れた場所から富士山が見えると知ったとき、気分が高揚したり得をした気分になったりする人もいるでしょう。富士山が大好きな日本人にとっては、富士山が見える景色は特別に感じるようです。

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「関東の富士見百景」のひとつ、利根川境河岸付近堤防(茨城県)から撮影した富士山(出典:関東地方整備局)
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荒川総合運動公園(埼玉県さいたま市)からの富士山(出典:関東地方整備局)
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筆者の地元にある都立浅間山公園(東京都府中市)の富士山眺望スポット。ここも「関東の富士見百景」に選出されている(撮影:筆者)

 上記の写真は東京都の府中市民の憩いの場である都立浅間山公園なのですが、私の地元でありながら最近までこんな富士山眺望スポットがあるとは気がつきませんでした。多くの市民の散歩やランニングのコースになっているスポットなのですが、私の知人(府中在住)にも「知らなかった」という方が多くいました。普段は通り過ぎてしまうような場所が、見方を変えたり深く知ることで魅力溢れる場所になるかもしれない、ということです。そういった身近な場所を見つめ直してみるところから“魅力探し”の目を養っていくといいですね。

 ほかにも、埼玉県新座市役所本庁舎8階であったり、千葉県柏市の市立富勢中学校前の市道であったりと、「関東の富士見百景」はさまざまです。普段当たり前のように通っている道にも、「じつはすごい!」と思える見所があるかもしれません。

 日常のお出かけをちょっとした“旅”にするポイントは「固定概念を捨てて観察する」こと。何気なく歩いている道でも、毎日歩けば毎日違った風景が広がっているはずです。そんな風景のなかに、今回のような富士山が見えたり、気がつかなかった景色が見えるかもしれませんよ。

[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]

観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi(ディシィ)代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ
https://www.dithi.net/