神様も認めた「うまし国」! 日本でもっとも有名な神宮が伊勢にある理由

[JINJA TRIP/仲田舞衣]

“神社を巡る旅”好きライターが、日本全国の神社を紹介。その土地とともに生きる神社の歴史や背景を知れば、もっとその土地が好きになります。第一回は三重県伊勢市にある、日本でもっとも有名な神社「伊勢神宮」を旅します。

伊勢神宮内宮入り口
内宮への入口、神聖な世界への架け橋として五十鈴川にかかる宇治橋

伊勢神宮は「日本人の心のふるさと」

 2019年10月22日、天皇陛下の即位を国内外に示す「即位礼正殿の儀」が皇居で行われ、チャールズ皇太子など各国賓客をはじめとする約2000人が参列しました。

 朝からあいにくの雨模様だったにもかかわらず、儀式が始まると雨が上がり、さらに虹が出たことで、Twitterでは三種の神器のひとつである「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」や「天照大神(あまてらすおおみかみ)」がトレンド入り。皇室の祖先とされる「天照大神」が、太陽を司る神さまであることから「リアル神話の国かよ!」と盛り上がりを見せました。

「即位の礼」は、5月から数回にわたり行われています。一般的には「即位礼正殿の儀」がそのハイライトですが、神社好きなら11月中旬に行われる五穀豊穣などを祈る「大嘗祭(だいじょうさい)」も気になります。

 そして、これら一連の儀式の締めくくりとして11月21〜23日にかけて天皇皇后両陛下が参拝するのが、天照大神が祀られている三重県伊勢市の伊勢神宮なのです。

【伊勢神宮】
●内宮(皇大神宮) 三重県伊勢市宇治館町1
●外宮(豊受大神宮) 三重県伊勢市豊川町279
https://www.isejingu.or.jp/

伊勢神宮の更地
外宮の神殿右横の「古殿地(こでんち)」。次回遷宮の際はここに社殿が移動する

 ところで、日本には神社がどのくらいあるかご存知でしょうか?

 文化庁によれば、約8万社。よく言われることですが、全国に約6万店舗あるコンビニや、ドラッグストアよりもはるかに多いのです。ちなみに、8万社には小さなお社は含まれていないため、実際はそれ以上! とも言えます。

 そんな全国8万社の神社の代表格が、三重県伊勢市にあり、「お伊勢さん」として親しまれる伊勢神宮です。伊勢神宮には天皇の祖先神であり、日本国民すべての守り神である「天照大神」を祀る「内宮(ないくう)」と、衣食住や産業の守り神である「豊受大神(とようけのおおみかみ)」を祀る「外宮(げくう)」があります。伊勢市の森林の約半分を占める神宮林(※神宮が管理する森林)を含めると、なんと東京ドーム約1200個分という広大な敷地に125もの宮社があり、それらすべてを含めて「神宮」(※伊勢神宮の正式名称)として成り立っています。

 内宮は2000年、外宮には1500年の歴史がありますが、約20年に一度の「式年遷宮(しきねんせんぐう)」というお祭りで古来の建築様式にのっとって社殿を建て替えてきたことで、驚くことにその姿はほぼ創建当時のまま今に至っています。伊勢神宮が“不変の聖地”である最大の特徴です。

伊勢神宮の夫婦岩
神宮参拝前の禊(みそぎ)の場として知られる「二見興玉神社」の夫婦岩。5月~7月頃には岩の間からの日の出が見られる

神様も納得の、海と山の幸に恵まれた土地

 では、なぜ伊勢なのでしょうか?

 天照大神はもともと都である奈良の皇居内に祀られていましたが、永遠に鎮座するのによりふさわしい土地を求め、諸国を巡ったといいます。そして、かなりカジュアルにいえば、こんな感じのお告げを授け、伊勢に腰を落ち着かせました。

「温暖な気候でいい感じだし、新鮮な海と山の幸に恵まれた“うまし(=美しい、美味しい、良いなど満足すべき状態を意味する)国”であるここがいいわ~! 理想郷よ!」

 いつの時代も、美しい景色や美味しいものがある土地に住みたいと願うのは当然のこと。

朝熊山
伊勢音頭の一節にも唄われた「朝熊山」展望台には、伊勢湾の絶景を見ながら入れる足湯あり!

 日本有数の多雨地帯である紀伊山地を抱える三重県は清浄な湧水が豊富。おいしい水が要の米や日本酒、野菜をはじめ、さまざまな食材を取り揃えています。

「松坂牛」や「伊勢海老」、「アワビ」(海女さん発祥の地としても有名!)、「南紀みかん」といったブランド力のある“うまし”食材を考えれば、太陽の女神・天照大神に選ばれるべくして選ばれた土地というのも頷けます。

 そうした食材も食べられる「おはらい町」や「おかげ横丁」など伊勢神宮周辺にはたくさんの“うましスポット”がありますが、筆者のお気に入りは、外宮表参道にある「伊勢せきや本店」2階の「あそらの茶屋」です。

 朝7時半~10時のあいだ、天照大神の食事を司る神様である豊受大神に1500年間毎日欠かさず捧げられている食事をモチーフにした「朝かゆ」をいただけます。

 朝いちばんに外宮でお参りをしてから、ここに立ち寄れば、清々しい気持ちで“伊勢のうまし”を堪能できるのです!

朝かゆ
やさしい「朝かゆ」は旅のスタートにぴったり

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【あそらの茶屋】
三重県伊勢市本町13-7(外宮表参道)
https://shop-sekiya.com/products/list?category_id=8
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 また、冬至の前後1か月(11月下旬〜1月下旬)の朝7時半頃には、内宮宇治橋の大鳥居から昇るドラマチックな日の出を見ることができます。これからの季節は紅葉も楽しめる絶好の観光シーズン。ぜひ、伊勢にJINJA TRIPしてみてはいかがでしょうか。
<撮影/山下陽子>

[JINJA TRIP/仲田舞衣]

神社好きライター 仲田舞衣さん
編集プロダクションを経てフリーランス。好きな神社は、歌舞音曲の神・事代主神を祀る島根県の「美保神社」。編集書籍に『JINJA TRAVEL BOOK』『JINJA TRAVEL BOOK2』がある