600年続く山口七夕ちょうちんまつり。今年はリモートで開催

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第16回:池田モト(山口県)]

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化などさまざまな角度から地方の魅力をお届け。今回は女子アナ47メンバーで現在、山口県のフリーアナウンサーとして活躍し、0歳児の息子の育児にも奮闘中の新米ママ・池田モトアナがリポート。山口県の祭りについて紹介します。

600年続く『山口七夕ちょうちんまつり』が中止に

池田アナとちょうちん
山口県在住の池田アナが地元のお祭りをレポート

 毎年8月6、7日に開催される「山口七夕ちょうちんまつり」は、笹竹につるされたおよそ2万個の紅ちょうちんが山口市の中心商店街などを彩り、例年およそ10万人を超える人出があります。このお祭りの見どころは、ちょうちんの灯りがほとんど「ろうそく」だということです。ろうそくならではの優しく柔らかな、ちょうちんの光はとても癒されます。

ちょうちん祭り
山口の伝統あるちょうちん祭り

 これはおよそ600年前の室町時代、山口を治めていた守護大名の大内盛見がお盆の夜に先祖の冥福を祈るため、笹竹の高灯籠に火を灯したのが始まりとされるお祭りです。今年も多くの人がこのお祭りを楽しみにしていたのですが、新型コロナウイルスの影響で5月に中止が発表されました。

 あの景色は見られないのかと残念に思っていたのですが、今年は『おうちでちょうちんまつり』というイベントを実施。『山口七夕ちょうちんまつり』の「ちょうちんの灯り」を今年は「おうち」で灯し、みんなで繋いでいこうというものです。

 人を集めてお祭りを行うことが難しい状況の中、長年続く『山口七夕ちょうちんまつり』の伝統を繋いでいきたい、なんとか別の方法でお祭りを楽しんでもらえないかと模索した結果、各家庭で楽しんでもらうため『おうちでちょうちんまつり』が企画されたということです。いわば「リモートの夏祭り」!

ちょうちんまつりを自宅で楽しむ2つのイベントを開催

おうちでちょうちん祭り
山口市の特産品ショップで販売されていたちょうちん

『おうちでちょうちんまつり』では2つのプロジェクトが、例年祭りが開催される8月6日と7日にそれぞれ分けて行われました。

 1つ目は8月6日の『つながるあかりプロジェクト』。それぞれの願いや思いを記入した短冊と共にあかりを灯したちょうちんをそれぞれが自宅などに飾り、その写真をインスタグラムに投稿するというものです。さらに投稿した人の中から抽選で山口市の特産品も当たるというとてもうれしい企画です。

「家で紅ちょうちんのあかりが楽しめるなんて!」

 私も早速ちょうちんを購入しました。このちょうちん、山口市の特産品ショップと通販で販売されていたのですが、用意された1000個がすべて売り切れたそうです。

 ちなみに私が書いた願いごとは「家族みんなが健康で元気に過ごせますように」と「少しやせたい(産後太りがなかなか戻らなくて…)」です。

願い事
願い事を書いて家に飾るだけで祭りに参加できる

 8月6日までに投稿すればよいということだったので、私はお祭りの日より一足早く、満月の日に紅ちょうちんを飾りました。お祭りでたくさん飾られたちょうちんもきれいですが、自宅で1つだけ飾ったちょうちんもふんわりと柔らかな光を独り占めでき、負けないぐらいきれいでした。

お祭りのスペシャルステージをライブ配信

ライブ配信
当日ライブ配信されたちょうちん祭り
 
 そして、2つ目のプロジェクトは8月7日の『希望のあかりプロジェクト』です。3密を避けて、完全シークレットの会場で行われるスペシャルステージをライブ配信するというものです。山口ではあまりない試みだったので、当日、私もワクワクしながらパソコンの前でスタンバイ。

 ライブ会場には伝統の紅ちょうちんだけではなく、新型コロナウイルスの治療・検査などに日々奮闘する医療従事者への敬意と感謝を表するメッセージとしてブルーちょうちんも掲げられていました。

 オープニングを飾ったのは山口高等学校演劇部による山口市出身の詩人・中原中也の詩の朗読です。私自身、中原中也の詩のいくつかは教科書で読んだことがありますが、じっくりと朗読をきいたことはなかったのでひとつひとつ言葉の意味を考えながら聞いていました。

 朗読する高校生の皆さんが本当によく詩を読み込んでいて、細部までこだわったであろう表情や声色から中原中也の詩に込められた思いが伝わってきました。中原中也の詩についてもっと知りたくなったので、山口市の中原中也記念館に足を運んでみようかと思います。

 そして、次のステージを準備している間には世界で活躍するスポーツ選手の石川佳純さんや大野将平さん、久保裕也さん、俳優の川野太郎さんなど山口市出身の著名人からの山口市やちょうちんまつりへのメッセージ、そしてインスタグラムに投稿された写真と一般の方から寄せられたメッセージが紹介されました。今回のライブ配信の中で最も印象深かったのが、このプログラムです。

「リモートの夏祭り」だったからこそ、山口に住んでいる方はもちろん、離れた場所にいる皆さんからの声・写真もたくさん寄せられていました。お祭りに行っていたとき、私は「たくさん人が来ているな~」ぐらいにしか思っていませんでしたが、来ているそれぞれの人が「山口七夕ちょうちんまつり」にいろんな思いを持って来ていて、長年たくさんの人に愛され続けてきたお祭りなんだということをあらためて実感することができました。

 続いて山口鷺流狂言保存会(山口県指定無形文化財)による創作狂言「ちょうちんまつり」の上演。この創作狂言はちょうちんまつりの様子を町の人々から聞き取り、集まった意見や感想をもとに、このお祭りのために書き下ろされた演目だというから驚きです。

 狂言を聞くのは初めてだったのですが、現代の言葉を使うなど脚本も工夫されており分かりやすく、今までの狂言のイメージとは違いました。内容は市民の思いや知らなかったちょうちんまつりに関する話などを知ることができるもので、聞いていて非常に面白く、私はもう一度聞いてみたくて、ライブ配信後また再生しました。

 そしてフィナーレを飾ったのは山口県岩国市出身のシンガーソングライター原田侑子さんによる弾き語り。ここまで聞いてきた山口へのいろんな方の思いを表現しているかのような原田さんの力強くも透き通る歌声を聞いてうるっときていしまいました。

 1時間のスペシャルステージは本当にあっという間でした。短時間の中に山口市、そして『山口七夕ちょうちんまつり』への愛がぎゅぎゅっと詰まっていました。ライブ配信後も『おうちでちょうちんまつり公式サイト』から見ることができます。

自宅に飾ったちょうちん
ちょうちんの灯りを独り占め

「リモートの夏祭り」は私にとって初めての体験でしたが、家でご飯を食べながらのんびりと夏祭り気分を味わえたこと、ステージに立つ出演者のみなさんの表情や声がはっきりと見たり聞いたりできること、もう一度見たいシーンが再び見られることなどメリットもたくさんありましたよ。そして、もちろん生でみるちょうちんが一番きれいですが、画面を通しても赤い柔らかなあかりはとても夜の景色に映えていて十分きれいでした。

 リモートで物理的距離は離れていますが、多くの方からのメッセージなどを通じて「つながり」は今までのお祭りの中で一番感じることができたお祭りでした。

 まだまだ新型コロナウイルスの収束の目処は立ちませんが、来年の夏、紅ちょうちんに彩られたきれいな景色がまた生で見られることを願っています。

<取材・文・撮影/池田モト(地方創生女子アナ47)>

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第16回:池田モト(山口県)]

池田モトアナ
山口県宇部市出身。元NHK秋田・山口キャスター・リポーター。NHK秋田ではスポーツキャスターとして高校スポーツ、BリーグやJリーグ、オリンピック関連取材のほか、スポーツ雪よせなど幅広いスポーツに関する話題を取材。NHK山口ではスポーツのほか、旅ロケ、中継リポーター、生活情報、ラジオニュースなど様々な分野を担当した。出産を機に退局。現在は山口県在住で、0歳児の育児に奮闘しつつ、フリーアナウンサーとして活動を始めたばかり。動物園・水族館が大好きで、北は秋田、南は沖縄までさまざまな動物園・水族館に足を運ぶ。最近、地元の動物園の年パスを購入。推しはリスザル。

地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト