―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第34回:多賀祐子アナ(石川県)]―
全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は石川県在住の多賀祐子アナが北陸初の春巻き専門店をリポートします。
70代の母がコロナ禍で始めた「はるまき家」
2022年6月、石川県金沢市にオープンした北陸初の春巻き専門店『はるまき家』。自慢の春巻きは、定番のしょうゆベースから変わり種の大葉みそ、ショウガ、カレーチーズなど5、6種類の味があります。
黄金色の皮は薄くてパリッパリ、具がたっぷり詰まっており、油がいいから胃もたれせず何個でも食べられます。春巻きが苦手だった私の娘が喜んでおかわりするほどのおいしさです。
店を切り盛りするのは、佐藤大輔さんと兄・修一さん、母・千鶴子さん親子です。「なにか新しいことを始めてみたい。このままじゃ、だれとも会えなくなってしまう」、コロナ禍でそんな不安を募らせたのは、佐藤さん兄弟を女手ひとつで育てた71歳の母・千鶴子さんです。
佐藤家は昔から友人がたびたび集まる『たまり場』で、千鶴子さんがみんなに手料理をふるまうことが多かったそう。そんな母の、漠然とした夢をかたちにしようと立ち上がった次男の大輔さんは、母の得意料理で、自身も大好物だったという春巻きに目をつけ、これなら勝負できると思ったそうです。
プレ販売でスタート、キッチンカーで本格デビュー
「コロナ禍の今だからこそ家族でチャレンジしたい」と考えた大輔さんは、まずは小さく始めようと、2020年からゲストハウスのレンタルスペースを使ってプレ販売をスタートしました。開始から2か月でお店のSNSのフォロワー数が1000人を超え、口コミで来客が増えていきました。
プレ販売を通して手応えを感じた大輔さんは、脱サラを決意。親子2人3脚で、自宅横スペースのキッチンカーでの本格販売に挑むことにしました。
キッチンカーでの販売を始めてからは、地域との距離がぐっと近づきました。夕飯のお使いにくる子どもや、部活帰りの学生との触れ合いに、千鶴子さんは、「子どもたちの成長を見届けたい!」と、まるで寮母さんのよう。
セット販売の梱包は金沢らしく、箱だけみると和菓子が入っているのかなと思うような上品さです。校区内の小学校に卒業祝いとして春巻きをプレゼントしたところ大変喜ばれ、毎年恒例の贈り物にしたいと考えているそうです。
しかし、春巻きの仕込みは別のキッチンで行っていたため、仕込み場所とキッチンカー、自宅への移動と、千鶴子さんに身体的な負担がのしかかるように。そんな折、はるまき家の実店舗を構える夢を、かたちに変えるチャンスが巡ってきました。
兄弟で改装、念願の実店舗をプレゼント
実店舗は、大輔さんに加え、同じく脱サラを決めた兄・修一さんが約1か月かけてDIYで改装し、6月8日にオープンを迎えました。この日は千鶴子さんの71歳の誕生日。息子たちの優しさ、愛、夢の詰まった大きな誕生日プレゼントとなりました。
「夜中まで改装作業をして、ひとつの節目に間に合わせてくれた。身内じゃないとできないこと。まさかお店をもてるなんて、これっぽっちも思ってなかった!」と、千鶴子さんは微笑みます。
はるまき家の仲間に加わった兄の修一さんは「2、3年経ったら手伝うつもりだったが、予定より随分早くなった。母と弟と働く今が、以前より何十倍もおもしろい!」と話していました。
今年9月で1周年を迎える、はるまき家。現在は実店舗に加え、オンラインストアやキッチントレーラーでの移動販売も行っています。移動販売は保育所や病院、企業など、これまでキッチンカーの出店イメージがないような場所へ赴くなど、独自の視点で販路を開拓しています。
お店に行くと必ずお客さんに「はい、これ試食してね」と春巻きを1本。そういう気前のよさも、お母さんならではかもしれません。「家族の味」「家族の温かみ」を、金沢から全国、そして世界へ届け続けたいと話す佐藤さん親子のアツアツの春巻きを、ぜひ一度、ご賞味くださいね。
<取材・文・写真/多賀祐子(地方創生女子アナ47)>
多賀祐子アナ
石川県在住。大学を卒業後、金沢ケーブルで9年間アナウンサーを務めフリーに。これまでに100本以上のCMナレーションを担当。アナウンス業のほか、マザーズコーチングスクール認定マザーズティーチャーとしても活動し、親子のコミュニケーション力アップのサポートも行う。2児の母で小学校PTA会長。
地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト