「ふるさと納税激減でも今はハッピー」平戸市の元担当者が語る理由

[元超公務員の地方元気塾]

高知県須崎市の公式マスコットキャラクター「しんじょう君」とともに、須崎市のPR活動を行っている「元超公務員」の守時健さんと「ふるさと納税日本一」になった黒瀬さんが、前回に続いてふるさと納税がなくなったらどうなるかについて語ってくれました。

「ふるさと納税はなくなったほうがいい」その真意は?

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守時:えっ。ふるさと納税なくなったらどうするんですか

黒瀬さん:依存しすぎないように、当時からなくなってもいいと思ってやってたよ。事業者さんにも何度も何度もそれは伝えてた。

守時:まあそれは大事ですよね。ふるさと納税で一度は莫大な利益をあげたけど、売れなくなって倒産した事業者さんもいらっしゃるみたいですし…。

黒瀬さん:もっといえば、還元率問題(※)のときなんかふるさと納税なくなっちゃえばいいと思ってた。

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還元率問題:お礼の品が豪華な方が寄付が集まるため、総務省が示す3割程度の基準を無視して高還元率でお礼の品を出展したり、ズルするところが熾烈な競争を繰り広げていた。中には90%を超える還元率のお礼の品もあり、素直に3割ルールに従う自治体に寄付が集まらなかった。
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守時:えっ。

黒瀬さん:だって、みんな目先の寄付金を集めることばっかりに無茶しすぎだから。そもそも、法を守れと本来指導する立場の行政が総務省のルール破ったらだめでしょ。だから1回なくなってしまえと。

平戸市は寄付額が下がってハッピーになった

守時:確かに…。ただ、元ふるさと納税担当の私としては1回何億円!って行っちゃったら下がるのが怖くてちょっと無茶しちゃう気持ちはわかる気が…。

黒瀬さん:だから平戸はいちばん最初に転落してよかったと思ってる

守時:えっ。

びっくり
えっ。

黒瀬さん:日本一になって26億円行ったけど今は5~6億円。でもそれがハッピー。

守時:えっ。

驚き1
は…は…はっぴぃ…

黒瀬さん:もしこれが100億円から5億円だったら大変なことだったし。平戸はいちばん最初に転落を知れたのね。それに、絶対この制度のみに依存してはいけない。といい続けてきたから平戸の事業者さんからは、「(寄付金は)あったらあったでいいけど、黒瀬さんにこの制度に依存してはいけないっていわれてたから」って感じで、当時から短期的な売り上げを求めて群がってくる感じはなかったかな。

守時:なるほど。当初から担当として事業者と先を見据えたいい関係がつくれていたんですね。ただ、まあ寄付額は多いに越したことはないと思うんですよね。

黒瀬さん:それはそうだけど、そもそもお金がなければいい街づくりができないと思っているのが間違い。いくら集めても使い道がダメだと意味がない。

守時:確かに。ふるさと納税といえば使い道よりいくら集まったかにスポットライトが当たってますよね。

平戸では寄付金による創業者支援が成功

黒瀬さん:そう。いくら集めるかより何に使うか。平戸では集まった寄付金で創業者支援を始めて、最初は平戸の創業者支援を活用していたんだけど、今その業者さんたちは平戸の枠を超えて全国的に活躍してる。

守時:すごい。単に寄付金を消費してしまうのではなくて、集めた寄付金が更なる投資を生んで地域を豊かにするのって理想ですよね。地域で経済が循環して、持続可能な地域をつくる

黒瀬さん:それに、制度としてもふるさと納税って始まってから10数年間基本設計が変わってないのも問題だと思う。市場規模としては5000億円を超えたけど、成功例はいくらでもある。ただ、劇的に町が変わったって例がほぼない。これってやっぱり集めるばかりで使う方の設計がないことが原因だと思う。しかも集まった寄付金は財政に行く。

守時:ですね。ふるさと納税担当が寄付を集めるけど、いただいた寄付金は財政担当課に行き、集める担当と使う担当が違うので、思いや認識のズレが生じるし…。言い方アレですが、寄付金は財政担当課のものになるって感覚も公務員だったらあるかもしれません。

黒瀬さん:そうそう。でもそれだとせっかく寄付者が指定した使い道や期待に応えられてるかわからないんだよね。使う方の設計が大事。今の90%が集める事ばかりに注力してる現状は問題だと思う。

守時突然ですが

突然ですが
突然ですが

黒瀬さん:ん?

守時:そろそろ1500文字くらいになるのでこのへんで終わりにしようと思います。

黒瀬さん:うん。

守時:ありがとうございました!!

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公務員でいていいわけが無い二人
公務員でいていいわけが無い二人

 という事で初めてのゲストはふるさと納税日本一の黒瀬さんでした。本当にありがとうございました!!

ふるさと納税で持続可能な社会をつくることが大切

 なんかこう、ふるさと納税ってメディアに出るとき「こんなにお得です!」「不祥事がおきました!」「どれだけ集めました!」みたいなところばかりがクローズアップされるんですが(まあ、そうでもしないと世の中の皆様の興味が引けないのも事実ですが)

 それによって地域がどう変わったか、持続可能な社会に向けてどう進んでいるかを伝えていけたらいいと思うんですよね。

 今回のコロナ禍でも、農林水産省の事業の元気いただきますプロジェクトで「ニコニコエール品」っていうのがあって、こちら行き場を失った特産品の調達費が補助されて、通常より量が多くなってるんです。

ニコニコエール品
農林水産省の事業の元気いただきますプロジェクト「ニコニコエール品」(画像:ふるさとチョイス「ニコニコエール品」より)

 これによって、ふるさと納税のお礼の品として行き場を失った特産品や業者さんがめっちゃ助けられてるんですよね。そして、こちらも対象品目がない自治体にとっては不平等だってご意見もありますが、個人的には目の前で廃業見えて、死ぬほど困ってる生産者さんに「いやちょっと不平等なので助けられませんー。」なんてのが果たして正義であるのかと思うんですよね。

 特に出荷先がなくなった生産者さんってめちゃくちゃ困ってるので。全然笑えないくらい大変なので。生きるか死ぬかの世界なので。

 ということで、世界は複雑怪奇で全員にとっての正解なんて存在しないけれど、私は世を憂うよりも私にできる範囲のことをがんばって行きたい!と思いながら…「裕福な家庭に生まれて働かなくても生きていける人生を送りたかった」と考え、「早くどれだけ食べても太らないラーメンが開発されないかな」といろいろなことを考えながら原稿を書いているのです。もしかしたら第三回に続くかもしれません…。

それでは、このあたりで。

皆様、ごきげんよう。

黒瀬啓介
2000年に平戸市役所に入庁。2012年から移住定住推進業務とふるさと納税を担当し、2014年に寄付金額日本一に。2019年3月に平戸市役所を退職し、現在はLOCUS BRiDGE 代表。

守時 健
高知県にある須崎市役所元気創造課に所属していた「元超公務員」。同市の公式マスコットキャラクター「しんじょう君」とともにPR活動を行う。内容は観光PRにとても役立つ(嘘です)ブログもやってます。

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