全国のさまざまな返礼品を取り寄せている、ふるさと納税コンサルタントの小野くみさん。今回は異なる自治体がコラボレーションをしてふるさと納税の返礼品を開発した3つのケースをご紹介します。
遠く離れた自治体が返礼品でコラボ
先日、友人が取り寄せたという手焼きののりをおすそ分けしていただきました。さすがは専門店ののり、手で折り曲げただけでパリッと半分になり、その切り目も美しく食べる前からただ者ではないことがわかりました。こんな特別感のあるのりを主役にするなら…。夕飯は手まきずしに決定!
急に決めたことなのに、お正月直後でグッドタイミング。冷凍庫には北海道白糠町のエンペラーサーモン、静岡県焼津市のマグロのタタキ、福井県敦賀市の海鮮福袋のホタテの3種類がスタンバイ。ふるさと納税マニアとしては、のりを仲介人にして異なる自治体が仲よく並ぶ様子は心が躍ります。
浮かれすぎて、「おのり様とのマリアージュ、緊張の1本目は白糠町のサーモンさんからスタート!」「白糠町様に続いて焼津市のマグロさん、そう言えばどちらも「ESSEふるさとグランプリ」を獲得されている自治体!」「最後は今年大活躍の敦賀市海鮮福袋を代表してホタテさん!」など、返礼品を人に見立てて心の中で実況までする始末。これも寄付者ならではの楽しみ方なのかもしれません。
しかし、このような自治体同士がコラボした返礼品、実際にあるのです。
岩手の米農家と鹿児島の蔵元がコラボした焼酎
コロナ禍にある今、ふるさと納税のセミナーを通じて以前から交流のあったという岩手県北上市の米農家と、鹿児島県大崎町にある焼酎の蔵元、天星酒造が共同開発した米焼酎『kokokaraきたかみ』が話題になりました。天星酒造さんは本来、芋焼酎の蔵元。双方の助け合いを目的に生まれた返礼品ではあるのですが、「ご縁あるお米をなんとかしたい」そんな思いやりの心が動かしたチャレンジだったかもしれません。
そんな思いが通じたかのように、今は岩手の観光物産館で『kokokaraきたかみ』以外の焼酎も取り置かれているというのです。
静岡県焼津市と岐阜県関市が返礼品を一緒にPR
以前、カラふるでも紹介していますが、水産都市である静岡県焼津市と刃物の生産が盛んな岐阜県関市は、「豊かな食卓にしたい」という共通の思いから、マグロ(焼津市)をおいしくかつ美しく切るための包丁(関市)でコラボレーション。ふるさと納税のポータルサイトにて、焼津市はマグロのページで関市の包丁を、関市は包丁のページで焼津市のマグロを、一緒に取り寄せることをオススメしています。
確かに、刺し身をうまく切れないというのはあるある失敗談。それに加え切れ味が悪いとうま味も逃げてしまうとのこと。せっかく産地直送の自慢のお品、おいしくいただきたいと思う気持ちは消費者も同じです。
また、焼津市のページから関市に興味をもち、ほかの返礼品を見るなど、コラボ品を導線につながるまさに相乗効果。
焼津市のコラボ第二弾は岐阜県土岐市と
焼津市は、食材を美しく演出する岐阜県土岐市の美濃焼のお皿や急須ともコラボレーション。お茶どころ焼津市の緑茶と、モダンなデザインが目をひく土岐市の急須の組み合わせや、抹茶スイーツとお皿、焼津工場でつくられたビールと陶漆のビアカップなど、焼津市には海産物以外にも魅力的な返礼品がたくさんあり、土岐市の陶器にも幾通りものバリエーションがあることを相乗効果で伝えることができます。
一見、返礼品に限った交流に思えますが、先の北上市と大崎町のように、海のない関市や土岐市でマグロが食べられたり、焼津市の飲食店で関市の包丁や土岐市の器が使われる…そんな事業者同士の交流につながればすてきだなぁ、と思いました。
焼津市がコラボをする理由のなかに、自治体間の「競争」ではなくお互いの地場産品の魅力を引き出しあう「共創」という言葉を見つけました。競争は疲れてしまいますが、こうして相乗効果が生まれるような返礼品を開発することは自治体さんも楽しかったかもしれません。
最近はまた制度の意義が置いてけぼりに過熱しつつあるふるさと納税ですが、ふるさと納税を通しどんな取り組みをしたか? なにを残したか? しっかりとした足跡が残っていたらそれは力強く歩いてきたという証拠。寄付金がどれだけ集まったかも大事なことですが、制度を大切に利用しながらも努力しているように思えたので、拍手とともに少しお伝えしたくなりました。
<文/小野くみ>
小野くみさん
ふるさと納税コンサルタント。自治体や事業者と寄附者との橋渡し役や、返礼品の開発、記事の執筆、イベントの企画、セミナー、講演などを行う。また、ふるさと納税ブロガーとして『くみくみのふるさと納税返礼品の記録』を運営中。
カラふる×ふるさとチョイス