全国のさまざまな返礼品を取り寄せている、ふるさと納税コンサルタントの小野くみさん。今回はふるさと納税の返礼品をきっかけに現地に来てほしい、知ってほしいと自治体が企画するツアーについてレポートします。
寄付金で復旧中の「球磨川」を視察
ふるさと納税といえば、ものや旅行などを楽しむイメージですが、ふるさと納税をとおして関わった方々と触れ合うツアーがあります。先日、熊本県八代市の「八代満喫ツアー」に参加し、歴史ある温泉、日本遺産、地元食材を豊富に使った食事など楽しんできました。
ツアーの最初に訪ねたのは日本三大急流のひとつ、球磨川。最初に訪れる場所にしては少し地味な気もしますが、令和2(2020)年の記録的豪雨で球磨川が氾濫、その復旧工事に寄付金が使われているとのこと。
3年が経とうとしているのに? と、ピンとこないまま川上に向かう道中も、狭い車道を進むのは前も後ろも工事車両。川沿いに目をやると、あちこちにショベルカーやダンプトラック。
当時のまま手つかずに残された橋脚もあるなか、この長く広い流域を修復するのに何十年かかるのだろう?と途方に暮れてしまいました。
当時の様子がよくわかる場所として降りたのは、今は使われていない駅舎と道の駅。壁には氾濫時の水位がわかるラインがくっきりと残っていました。そこでは迫りくる水から逃れるために車の屋根、それでもたりず建物の屋根へと登り移って命をつないだという話や、鉄道がないことで限界集落に拍車がかかる切実な現実を教えてもらいました。
これも自治体ツアーに参加しなければ想像もつかなかったリアル。災害復旧にこんなにもお金と時間が必要とされること、長期的な支援が必要であること、ふるさと納税が必要とされていることを改めて感じました。
「い草農家」を守る。国産畳の存続を寄付金で応援
長いバス移動の間も、職員の方から災害対応に切迫した話や、日本遺産でもある石積みの技術がつまった眼鏡橋が数多くあることなど、興味深い話をたくさん聞かせてもらいました。
なるほどと思ったのは、「八代にはしあわせの三原色がある。トマトの赤、い草の緑、晩白柚(ばんぺいゆ)の黄色」と、八代を代表する産品にかけた言葉です。
トマトについてはいうまでもありませんが、国産い草の95%は八代産。しかし近年は外国の安い畳に押され、国産畳は存続の危機。産地の使命として、い草農家を守る施策にも寄付金が使われているとのこと。
この日は花器などを置くのにぴったりなミニ畳をつくるワークショップを体験。さわやかな香りに包まれながら、い草農家さんとヘリの柄を選んだり、手順を教えてもらったり交流しました。
い草を使ったアイスクリームやそうめんなども試食しましたが、ほんのりと緑茶風味の味わいが想像以上においしく、たくさんの人に知ってほしいと応援したくなりました。
トマトの甘さとあたたかいおもてなしに満たされる
緑の次は赤です。トマト農家さんを訪問すると、テーブルクロスが敷かれた机にきれいに並べられたトマトが迎えてくれました。旬の時期のトマトはフルーツのように甘く、味見程度のつもりが伸びる手が止まらず、何個食べたかわかりません。
生だけではなく、オリーブオイル漬けのドライトマトとチーズを合わせたものなども。帰りには自宅でも食べられるようにとミニトマトとドライトマトのお土産までくださり、見えなくなるまで手をふり見送ってくれた農家さん。こんな温かさも自治体が用意するツアーだからこそ知ることができた気がします。
寄付先が第二のふるさとにも
黄色の晩白柚は冬の味覚。残念ながら直接味わうことはできませんでしたが、開湯600年の日奈久(ひなぐ)温泉で晩白柚サイダーをいただきました。
世界一大きなかんきつといわれている晩白柚を食べられなかったのは残念でしたが、足湯や自分で焼いた熱々の日奈久ちくわと一緒に飲むサイダーはさっぱりとのどを潤してくれました。
このほかにも地元の道の駅、お米農家さんなど、普通には1泊2日で回り切れないほど、盛りだくさんの内容でした。「第二のふるさと」という言葉がありますが、どこへ行っても一期一会の出会いに精一杯のおもてなしをしてくれて、たった1泊2日で本当にそのような気持ちになりました。
もし寄付した先でツアーが募集されていたら、お休みをとっても行く価値ありです。ふるさと納税とのかかわり方が、ちょっぴり変わるかもしれません。
小野くみさん
ふるさと企画ポム・ポム代表。ふるさと納税コンサルタントとしてTV出演、記事執筆多数。自治体や事業者と寄附者との橋渡し役や、返礼品の開発、記事の執筆、イベントの企画、セミナー、講演などを行う。
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