黒キクラゲや桑の実で若々しく。熊本アンテナショップでゆる薬膳

最近物忘れが激しい、なんだか老け込んだ気がする、など自身の老化を感じたときは食事を見直すことが大切。と教えてくれたのは薬膳アテンダントの池田陽子さん。熊本の食の幸がそろう熊本県アンテナショップ「銀座熊本館」で、薬膳の観点から見つけたおすすめのグルメを紹介します。

「腎」の働きで若々しさをキープ

銀座熊本館
熊本県アンテナショップ「銀座熊本館」

 老化は、中国伝統医学の「中医学」で「腎」(じん)と呼ばれる臓器との関わりが深いとされています。腎は人の成長や発育、生殖、老化をつかさどり全身のエネルギーをためておく臓器。まさにアンチエイジングの要です。腎が弱ると白髪が増え、耳が悪くなり、足腰が曲がって弱くなる、歯がもろくなる、物忘れが激しくなるなど老化現象が加速します。

 若々しい身体をキープするためには、腎の働きを高める食材を積極的に取り入れる必要が。おすすめは「黒食材」。薬膳の考え方のひとつである「五行説」では、体の機能と色を関係づけています。腎をつかさどる色は黒。黒キクラゲや黒ゴマや海藻類、黒酢などは生命力や気力を養い、若々しさを保つパワーがあります。また、栗や桑(クワ)の実もアンチエイジングにパワフルな効果があるとして薬膳ではよく使われます。

そんなアンチエイジングにおすすめのグルメを、熊本の食の幸がそろう熊本県アンテナショップ「銀座熊本館」からピックアップ。

プリプリシャキシャキの「キクラゲぽん酢和え」

キクラゲぽん酢和え
「キクラゲぽん酢和え」(360円)

 日本で流通しているものは輸入品が多いですが、じつは熊本では絶品の黒キクラゲが栽培されています。熊本県最南部に位置する人吉球磨地方は、九州山地の連山に囲まれ、中央部には球磨川が流れる自然豊かな町。そんな内陸性気候による寒暖差、盆地特有の霧の発生が多い人吉球磨地方では、良質な米や野菜などの農産物が栽培されています。そして黒キクラゲの栽培も盛んです。

キクラゲぽん酢和え
ごはんのお供に、おつまみにぴったり

 人吉市の「せんい生活」は、10年ほど前から「黒キクラゲを人吉の特産品に」と地元で立ち上がったメンバーでスタート。良質な黒キクラゲの生育にとって重要な温度、湿度、二酸化炭素、照度を徹底的に管理した、丁寧な栽培を行っています。丹精込めて育て、ひとつひとつ手作業で収穫された黒キクラゲは見事な大きさ。肉厚で豊かな食感が魅力です。

 そのおいしさを存分に堪能できるのが「キクラゲぽん酢和え」(360円)。黒キクラゲをポン酢、手づくりのユズコショウで味つけした佃煮。漆黒のつややかな黒キクラゲは、煮つけてプリップリ、そしてシャキシャキの食感で、驚くほどのみずみずしさです。黒キクラゲは味がないイメージがあるかもしれませんが、しっかりした濃いうま味に感動! さわやかなポン酢の風味、爽快なユズコショウの辛味でご飯がすすみます。そして焼酎のおつまみにもぴったり! ここはぜひ、人吉球磨が誇る「球磨焼酎」といっしょにいかがでしょうか?

極上の味わいが堪能できる「栗ジャム」

やまえ栗ジャム
やまえ堂の「やまえ栗ジャム」(756円)

 熊本はクリの生産量が西日本一。熊本県南部に位置する山江村は、歴史あるクリの産地。皇室にも献上されたブランドクリ「やまえ栗」で知られています。昼夜の寒暖差、南向きの丘陵、肥沃な赤土の土壌と栗の生育に恵まれ、甘味が強くて大きく身がしっかりつまった、やまえ栗は、全国の有名菓子店で使われています。

やまえ栗ジャム
上品でやさしい甘味がたまらない!

 山江村「やまえ堂」は、やまえ栗を使ったさまざまな商品がそろうお店。なかでも高い人気を誇るのが「やまえ栗ジャム」(756円)。やまえ栗を100%ぜいたくに使用。砂糖(トレハロース少量)のみで味つけしたジャムです。ひと口食べると、こっくり深く、上品でやさしい甘味と豊かな風味が口いっぱいに広がります。栗そのものをしっかりと感じられるジャムはバターや乳製品との相性がバツグン。バタートースト、パンケーキに、また生クリームと合わせて「モンブラン」風にして楽しむのもおすすめです。

桑の実を使ったまろやかな味わいのジャム

発酵桑の実ジャム
合志市・峯樹木園の「発酵桑の実ジャム」(1182円)

 桑の実は、桑の果実でやわらかい粒が集まった細長い形をしています。初夏のころに赤黒く熟し、そのまま食べても甘酸っぱくておいしいフルーツ。英語でマルベリーとよばれ、美に貢献するスーパーフルーツとしても注目されています。桑の実を乾燥させたものは「桑椹(そうじん)」とよばれ、腎の働きを高める生薬としても使われます。ただし、熟した桑の実は収穫時期が短く、とってもやわらかくて繊細。つぶれやすいため収穫に手間もかかり、貴重な食材なんです。

 そんな桑の実を1年じゅう手軽に楽しめるのが合志市・峯樹木園の「発酵桑の実ジャム」(1182円)。峯樹木園では自社農園で土壌づくりからこだわり、農薬・化学肥料は不使用で桑を栽培。さまざまな加工品を製造しています。発酵桑の実ジャムは、手づみした完熟した桑の実をたっぷり使ったジャムで、桑の実そのものの風味をいかすために独自の共生発酵で生まれたブドウ糖を使用。甘味やうま味を引き出し、まろやかな味わいに仕上げてあります。

発酵桑の実ジャム
貴重な桑の実がたっぷり

 つぶつぶの食感も残った桑の実ジャムは、どこか懐かしい味わい。とがった感じがなく、さりげなく、おだやかな甘酸っぱさです。ベタベタした甘さはなくすっきりしたあと味も魅力。パンにはもちろん、ヨーグルトにもぴったりです。

銀座熊本館

―[日本全国アンテナショップでゆる薬膳/池田陽子]―

池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)