強い日差しで日焼けが気になる季節。体の中からの「食べてUVケア」もおすすめです。薬膳アテンダントの池田陽子さんに、熊本の食の幸がそろう熊本県アンテナショップ「銀座熊本館」で見つけた、UVケアするおすすめグルメを紹介します。
熊本県の特産品で夏のUV対策
薬膳の日焼け対策としては、まず体内にこもった熱をクールダウンさせるために、カラダを冷やす「寒涼性」の食材を取り入れること。野菜ではトマト、肉では馬肉が役立ちます。また、体に水分を補う食材を取り入れることも大事なポイント。体内に潤いを与えておくと、日差しという「火」を「水」が消してくれるので、日焼けしにくくなるのです。うっかり日焼けしてしまったときの緊急対策としても役立つテクニックです。おすすめは、こちらもトマト。体内の余分な熱を冷ますとともに、カラダに必要な水分を補う働きがあります。
また、ハトムギも肌に潤いを与える働きの高い食材。ハトムギの皮を除いた種は「ヨクイニン」の名前で、生薬としても使われています。薬膳においては、美肌に欠かせない美容食材。シミを予防するためにも、ハトムギで「食べるローションパック」を。
今回も、熊本県アンテナショップ「銀座熊本館」から、日焼け対策にうれしいグルメを紹介します。
上品なうま味をスモーキーに味わえる「馬肉の炭火焼」
熊本の名物といえば「馬肉料理」。馬肉は生産量と消費量ともに熊本が日本一を誇ります。その始まりは、肥後熊本藩初代藩主である加藤清正が、朝鮮出兵で大陸に渡ったことから、という説があります。苦戦が続き食糧難に陥った際に、やむをえず軍馬を食したところ、意外にもおいしかったため帰国後も好んで食べていたといわれています。今も熊本のスーパーには当たり前に馬肉が並び、焼き肉やホルモンの煮込みなどさまざまな料理で親しまれています。
「銀座熊本館」にも馬刺しをはじめとする馬グルメがそろっていますが、手軽に楽しめるのが「千興(せんこう)ファーム」の「UMADERI 馬肉の炭火焼」(857円)。千興ファームは馬肉専門メーカー。寛政元年に馬刺し専門店「菅乃屋」として創業、200年以上の歴史を誇ります。約90万坪の広大な牧場を所有し、阿蘇の伏流水とこだわりの飼料、栄養いっぱいの牧草でのびのび育った馬を使った多彩な商品を販売しています。
「UMADERI 馬肉の炭火焼」は馬肉を塩とコショウだけで味つけして、炭火で焼き上げた逸品。シンプルな調味でありながらまったくクセがなく、馬の上品なうま味、ほどよい脂が堪能できます。香ばしくスモーキーな風味で、ハイボールやバーボンのおつまみにぴったり! チャーハンに使ったり、丼にするのもおすすめ。パンに野菜といっしょにサンドしてもおいしくいただけます。常温保存可能なので、お土産にもとっても便利。
とろみがあるのにあと味すっきり「阿蘇ものがたりトマトジュース」
熊本はトマトの生産量も日本一。年間の収穫量は約12万8000t、全国シェア17%を誇る「トマト王国」です。温暖な海沿い・平坦地では秋~春、高冷地では夏~秋と1年をとおして安定した出荷が行われています。通年温かく日射量の多い熊本のトマトは、香りがよく、深みのある味わいが魅力です。
阿蘇の特産物を使ったこだわりの商品を販売する阿蘇市・阿蘇ものがたりの「阿蘇ものがたり トマトジュース(ストレート)」(390円)。熊本のトマトのおいしさをギュッと凝縮したジュース。高冷地の阿蘇で育ったトマトは、甘味と酸味のバランスに優れ、とろけるような食感、高糖度でコクがあるのが魅力です。「阿蘇ものがたり トマトジュース」には、完熟したトマト「桃太郎」を使用。トマト本来の味を生かすために、100%ストレート果汁を沖縄の自然塩のみで味つけ、着色料や保存料はいっさい使わずに仕上げています。
その味わいは、みずみずしいトマトそのもの! 濃厚でコクがあり、豊かな甘味、ほどよい酸味。グラスに注ぐと、トマトのすりおろしのようなとろみ感があるのに、あと味はきわめてすっきり。さわやかな余韻だけが残ります。このままでももちろん、とろみをいかしてドレッシングやソースにアレンジしたり、カレーやシチューなどの隠し味として使うのもおすすめです。
上品な甘味と洗練された味わいの「はとむぎのおこし」
ハトムギは熊本にゆかりのある食材。加藤清正公が朝鮮半島から持ち帰り、日本で初めて栽培したという説があり、380年ほど前の細川家の古文書にも記載されているそうです。八代市・肥後はとむぎ会 日月亭の「薏苡仁(よくいにん)糖」(857円)は、江戸時代からの歴史をもつ、ハトムギが原料の干菓子。千利休の茶の湯を受け継ぎ「利休七哲」の1人に数えられるほど、茶道に精通した細川忠興公が、茶席の菓子としてつくらせていたという「おこし」の一種です。
八代市の和菓子店が代々、御用菓子としてつくり続け親しまれてきたものの、昭和半ばに廃業。それを機に、製造は途絶えていました。しかし、八代市と熊本市の農家で結成された肥後はとむぎ会が、幻の銘菓の復活に挑戦。製法の記録はなく、県の協力を得ながら残されていた資料や、文献などをもとに、5年がかりで復活を果たしたのです。
ハトムギを水に漬けてからせいろで蒸し、干してひき割りに。熱した塩で焙煎し、てんさい糖で固めて仕上げます。その工程は1週間がかり! 手間暇かけてつくられた薏苡仁糖をかじってみると、小気味よいカリカリ感。そして上品なやさしい甘味とともに、口の中ではんなり溶けていきます。白雪のように美しい洗練されたおこしは、丁寧に入れたお茶とともにいただきたい、味わいです。
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)