金沢の初夏の風物詩「氷室まんじゅう」名店3つの味を食べ比べ

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第55回:多賀祐子アナ(石川県)]―

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は石川県在住の多賀祐子アナが、金沢では夏に欠かせないという「氷室(ひむろ)まんじゅう」を紹介します。

江戸の将軍に献上する氷の貯蔵庫「氷室」が由来

多賀アナと氷室まんじゅう

 毎年7月1日、金沢では無病息災を願って「氷室まんじゅう」と呼ばれる和菓子を食べる習慣があります。由来は江戸時代までさかのぼるそう。

氷室小屋
画像提供:金沢市

 当時、金沢には冬場に積もった雪を保管する「氷室」と呼ばれる氷の貯蔵庫があり、旧暦の6月1日に「氷室開き」をして取り出し、江戸の将軍に献上していました。氷は超貴重品でしたから、とても重要な任務ですね。

 江戸に着くまでに氷が溶けてしまうのでは……なんて思ってしまいますが、氷が無事に江戸まで届くよう祈願も含めて「氷室開き」と呼ばれていたそう。

 氷室開きの際に、ある和菓子職人が考案した、あん入りのまんじゅうを神前に供えていたことが、氷室まんじゅうの始まりといわれています。

 氷室開き自体は昭和30年頃に廃れたものの、氷室まんじゅうを食べる習慣は残り、7月1日前になると、多くの和菓子店がまんじゅうづくりに追われます。

氷室開き
画像提供:金沢市

 一度は途絶えていた氷室開きも現在は復活し、金沢市湯涌(ゆわく)温泉で夏の訪れを告げるイベントとして毎年、行われています。ただ、暖冬による雪不足の影響で氷室小屋に残る雪氷は少ないのが、少々さびしいところですが。

和菓子屋が休み返上で8万個を出荷

店頭で大々的に展開される氷室まんじゅう

 6月の最終週になると、和菓子店をはじめ百貨店やスーパーでは氷室まんじゅうコーナーが設置されます。この時季にしか食べられない縁起物なので、毎年大勢の方が買い求め、行列ができるほど。休み返上で営業し、蒸したてを提供する店や、8万個以上の出荷を見込んでいる店もあるそうです。

 氷室まんじゅうの多くは酒まんじゅうで、皮の色は白、赤、緑の3色が定番、中にはこしあんが入っています。店によって違いもあるので、今年は食べ比べをしてみようと思い、特徴的な3店舗で購入してみました。

もっちり厚めの皮の「越山甘清堂」

越山甘清堂のまんじゅう

 まずは、近江町市場近くに店を構える金沢市の老舗和菓子店「越山甘清堂(こしやまかんせいどう)」。封をあけた瞬間、麹のいい香りがふわり。皮は厚みがあってもっちり、中には上品な甘さのこしあんが入っています。こちらは3色ともこしあんでした。

「氷室まんじゅうといったら越山さんやわ」と言われるほど市民から愛されているのも納得です。

こしあん、つぶあん、白みそあんの「和菓子 村上」

和菓子村上のまんじゅう

 続いては、こだわりの自家製あんに定評のある金沢市の「和菓子 村上」。こちらは、白いまんじゅうはあっさりと仕上げたこしあん、緑のまんじゅうはつぶあん、ピンクのまんじゅうは白みそあんと、3種類の味を楽しむことができます。

 ほんのりとみその風味が口に広がる白みそあんは、筆者のお気に入り。皮もふんわりやわらかく、「次はつぶあんを……」と、つい手が伸びてしまいます。

薄皮で小ぶりな麦まんじゅうの「柴舟小出」

柴舟小出のまんじゅう

 最後は、金沢市の「柴舟小出(しばふねこいで)」です。これまでの2店とは違い、こちらは昔ながらのころんとした麦まんじゅうで、中はすべて、こしあん。しっとりとした薄皮の下には、なめらかなあんがぎっしりと詰まっています。酒まんじゅうよりも日もちがするので、多めに買って数日間、楽しめるのもポイントですね。

氷室まんじゅう

 いかがでしたか? 氷室まんじゅうは、東京のアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」では事前予約で販売しているほか、石川県内の和菓子店のオンラインストアで注文、発送可能な場合もあります。

 販売期間が短いため、残念ながら今年は間に合いませんが、来年は金沢が誇る伝統菓子・氷室まんじゅうと共に夏を迎えてみてはいかがでしょうか。

<取材・文・写真/多賀祐子(地方創生女子アナ47)>
<写真協力/金沢市>

多賀祐子アナ
石川県在住。大学を卒業後、金沢ケーブルで9年間アナウンサーを務めフリーに。アナウンス業のほか、マザーズコーチングスクール認定マザーズティーチャーとしても活動し、親子のコミュニケーション力アップのサポートも行う。2児の母で小学校PTA会長としても奮闘中。

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第55回:多賀祐子アナ]―

地方創生女子アナ47
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