「トレランってなに?」小さな町がランニング大会を始めたワケ

 岩手県の山間にある小さな町でトレイルランニング(登山道や林道を走るレース)の大会が開催されました。「山の中を駆け回るなんて思いもしなかった」という町の人たちが、どうして大会を始めようと思ったのか? 町で取材しつつ、編集部もレースに参加して楽しんできました!

震災ボランティアの発案で始まった、住田つながりトレイルランニング大会

スタート
第1回の大会にはランナー70名、ボランティア20名が参加

 岩手県の山間部にある住田町は、林業を主な産業とする静かな山村。ここで第1回「住田つながりトレイルランニング大会」が開催されました。

 トレランの大会は地元の山岳会やランニング愛好家たちが中心になって行われることが多いのですが、ここではまったく事情が違ったそう。

「そもそも、『トレイルランニングってなに?』っていうところからのスタートだったんですよ。山は仕事をするところで、遊びに行くっていう発想は全然なかった」と笑うのは、大会事務局長の金野正史さんと住田町役場の佐々木淳一さん。

佐々木さん金野さん
右が町役場の佐々木さん、左が大会事務局長の金野さん

「もともと町を盛り上げることをやりたい、と思っていたんですが、うまく形にできず……。そんなとき、東日本大震災のボランティアの人たちが、企画書をもってきてくれたんです」と、地域おこし協力隊のメンバーでもある金野さんは振り返ります。

 津波で大きな被害にあった陸前高田市や大船渡市と隣接する住田町には、震災直後から被災者のための仮設住宅が数多く建てられ、ボランティアの拠点もできたのだそう。

 そのボランティアグループである邑サポートの人たちが、震災支援がひと段落した頃、町を盛り上げたいと企画したのがトレラン大会でした。

「前町長に邑サポートのメンバーたちが企画を説明したら『やってみようか!』と盛り上がったようで、後日仕事中に声をかけられ『協力してあげて』と指名されたんです 」(佐々木さん)。

 そこから町の協力を得ながら、金野さん、佐々木さんら町の人たちとボランティアで構成する実行委員会が主体となって準備を進めてきました。

「なにしろノウハウはないし、ゼロからのスタートなので本当に大変でした。コースの草刈りに1日8時間もかかったり……。本当にどうなることかと思いましたよ(笑)」と金野さんがいうように、手探りでスタートした実行委員会ですが、今年第1回大会を無事に開催することができました。

気仙川昭和橋
気仙川沿いに古い町並みが残る住田の集落

 大会には県内や首都圏から70人を超えるランナーが参加。住田の自然あふれるコースを堪能しました。また、首都圏からやってきた大会ボランティアが地元のお母さんたちと一緒に、レース後にふるまう食事づくりにも協力し、ランナーたちをもてなすひと幕も。

「みなさんに喜んでもらえてよかったです。今後も身の丈サイズの大会を地道に続けることで、住田町の関係人口を増やしていきたいですね」(佐々木さん)。

 来年は100人規模の大会にするべく、準備を進めているそうです。

コース集合
スピードを競うより、仲間と楽しみながら走るランナーが多かった