九州なのに毎日0℃以下の山村。でも冬の楽しみもいろいろあります

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(24)]―

東京生まれ東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落で、忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。

九州とは思えない寒い寒い産山村

産山の景色
2021年の大雪風景
 
 2017年、産山村で過ごす2回目の冬、初めてすごく雪が降り積もりました。ここは本当に九州なのか?と思ったほど降り積もったのです。
 
 当時、お店はまだ完成しておらず、古民家再生の大工さんがせっせと山を越えて通っては工事をしてくれていました。ところが、冬に入ってからは「途中まで来たけれど雪がすごいので引き返します」とか、「マイナス気温の中、モルタルがきちんと強度を保ったまま固まらないので作業は延期します」とか、山間部ならではの事情により作業は本当に進みませんでした。
 
工事中のレストラン
 
 そして、この冬を経験するまでは、そのときが一番寒い冬でした。

 その翌年も翌々年も、雪らしい雪は降らず比較的暖かな冬を過ごしました。オープンしたお店は、大雪を想定して、1月中旬から2月いっぱいは冬季休業にしていました。そんな雪のない2年間の冬は、寒くて木が眠っている時期に行うブドウの剪定作業を「雪がないなら、お店オープンしていても大丈夫だったねぇ」なんて呑気に話しながらにするくらい、穏やかな冬でした。
 
 すっかり暖かな冬に慣れた2020年の年末。いつもなら最高も最低もマイナス気温が続くのは1月末から2月にかけてのこと。なのに…今シーズンは早くも12月から最高&最低がマイナスの日々がやってきたのです。

 しかも1日2日どころじゃない!

マイナス気温の日々は、凍る水道とのせめぎあい

暖炉と愛犬

 毎日寝る前に気温をチェックしマイナス気温が数時間以上続くようなら、家じゅうの水道の蛇口からちょろちょろと水を出す。一度、給湯機の部品が凍結して破損し、数日お湯が使えず修理の方を呼び、修理代で痛い思いをしたので、どんなに眠くても寒くても必ず行います。
 
 その後、冷え冷えの体で湯たんぽの入っている暖かーい布団に入ると、はぁ~幸せと思うのです。産山村の寒い冬を過ごすようになってから、湯たんぽは欠かせないアイテム。わが家の愛犬の寝床にも湯たんぽを入れてあげます。すると湯たんぽを枕に朝までぐーすかと気持ちよさそうに寝ている。
 
 そんな冬のこのマイナスの世界は、もうかれこれ1か月近く続いています。特に1月の3連休は雪が降り続き産山村は一面の銀世界になりました。
 
 大雪前の日々も冷え込みが激しく最低気温がマイナス10度、最高気温がマイナス3度だったりもしました。そんなときは、外の水道はもちろん家の中でも水道は一日中出しっぱなし、ちょろちょろ出しでは夜中に凍ってしまうので“じょろじょろ”くらい出します。
  
 洗面所のお湯用の蛇口も凍ってしまうので、ちょろちょろ出しておくのですが、その水蒸気がお風呂場の天井や床でまた凍ってしまうというような状況。入浴後の浴室内が暖まっている状況なのにバスマットが凍りついて床と一体化し取れなかったときは、この先高齢になってもここで暮らせるだろうか?と不安になりました。
 
 お湯を出しておくせいで小さな給湯器は常に通電中で、給湯器が絶えずお湯を沸かしてます! がんばってます! 状態…。今月の電気代は…、いや凍結したほうが高くつくしと頭の中でぐるぐると計算したり、思ったり。
 

大小いろいろ、大雪への備えは怠れない!

雪道

 こんな大雪のときは電線に影響があり停電の可能性もあります。山間部ならではのあるあるなので、常に携帯の充電は100%近くにしておき、お米も多めに早めに炊き上げ、懐中電灯や暖房器具の灯油も補充する。
 
 家のメインの暖房器具は薪ストーブなので昼間のうちに1日分の薪を室内に運び入れておく。いざというときに車が出せるようにガソリンも満タンにし、雪が凍る前に道路は雪かきをする。急な坂道は役場支給の塩化カルシウムを近所の方と一緒にまく(車にも影響があるのでよっぽどの量の雪以外はまかないけれど)。
 
 そんな作業も何度か経験してから身についたもの。水抜きしておいた洗濯機も室内にあるにも関わらず、水が出なくなり数日間洗濯が不可だったこともあります。
 
 はっきり言って冷蔵庫を開けると冷蔵庫の中が温かく感じたくらい。凍らないように冷蔵庫に入れると聞いていたが、確かに! 納得!
 

寒くても大雪でも至福の朝食ができている

野菜スープ

 普段から遠くまで行かないとお店がないので食材のストックはたっぷりあります。なかでも1日中いや数日間、火を入れっぱなしの薪ストーブのお楽しみといえば、煮込み料理! 冷凍庫にストックしていたたっぷりのトマトやシイタケやいただきものの大量の白菜や大根たち。
 
 適当に切って鍋に入れて薪ストーブの上においておけば、あら不思議! おいしい野菜のスープになるのです。イノシシ肉でつくる角煮も、八角はじめ材料を鍋に入れストーブの上に置いておくだけ。後からゆで卵を入れたり、楽しくっておいしい。
 
 朝ご飯のみそ汁も寝る前に、野菜とお水を鍋に入れストーブの上に置いておけば、野菜がクタクタになり優しい味のみそ汁ができる。もちろんみそは自家栽培の大豆でつくった自家製です。今はそれにプラスして自家製のキムチが食卓に上がります。
 
 そして畑で春を待つ野菜たち。このシーズンは、うまく成長しているニンジンたちは土がカチカチに凍っていて数日は収穫できず。そしてこの寒波にやられないよう、寒さが和らぐように稲藁や牧草で草マルチ=お布団をかけてあげたタマネギは、もうちょっとがんばって、という感じで心配。同じように草のお布団をかけて不織布でトンネルをしてあげたソラマメやインゲンの苗たちは心配でしたが、今のところなんとか無事なようです。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。