青いハチもいる山村ではちみつ採取に挑戦。3年目でやっと来た!

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(28)]―

東京生まれ東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、「日本ミツバチ」の巣箱設置から到来までの様子をレポート。

産山村ではちみつ採取に挑戦。1年目は空振り

ヒゴタイの花とブルービー
ヒゴタイの花と青い色のハチの“ブルービー”(画像提供:産山村)

 2年前のこと。その年は、産山村全体でなんとなくミツバチブームが来ていました。もともと産山村にはきれいな青い色のハチ、ブルービーが季節になると飛んできます。ヒゴタイ公園の花とともに写るブルービーの写真が、公園内に飾ってあったり村の施設のホームページにも出てくるくらいです。

 そんなことや農薬によるミツバチ減少との話題とが相まって、村では日本ミツバチの巣箱をつくるワークショップが行われました。残念ながら私は仕事で参加できませんでしたが、定員を上回る申込があったほど人気だったそうです。

「いいな~、ミツバチの巣箱ほしいな~」と思っていたところに、「わが家の巣箱には入っているから、1つ巣箱あげるよー」とサプライズプレゼントが! 育苗用のビニールハウスを建てた次の日に、手伝ってくれた隣の集落の方に日本ミツバチの巣箱をいただいたのです。

巣箱設置
いただいた巣箱を設置

 一緒にいただいた蜜蝋を巣箱の内側に塗り、ワクワクしながら待ったのです。ところが、毎日毎日チェックするものの、待てど暮らせど羽音のブーンのブの字も聞こえない…。

 梅の花の開く頃には、あんなにブンブン言いながら飛び回っていたのに。なんで!? その時期に置けば簡単にミツバチが入ると思っていたのが、そもそも甘かったようです。

2年目も巣箱にミツバチはやってこなかった

蜜蝋
蜜蝋を塗りたくった巣箱

 その1年後の去年は、「金稜辺(きんりょうへん)」というラン科の1種を巣箱のそばに置いてみました。この金陵辺の花が開花すると、その香りに誘われてミツバチが寄ってくるそう。ですが、ミツバチが来て受粉してしまうと花が終わってしまうので、受粉しないようにネットでくるんで置いておきます。

「今年はもう入ったから貸してあげる」とのことで金稜辺をお借りし、いそいそと巣箱のそばに置いたものの来ず…。2回ほどあるという分蜂する微妙なタイミングを逃したのか、結局入らずでした。

 ちなみに日本ミツバチの分蜂とは、子である女王蜂に元の巣を譲り、母である女王蜂が働きバチの半数を引き連れて引っ越しをすることです。

高い花を購入し、やれることはやった3年目

犬と花
金稜辺の花の香りをかぎに来た愛犬

 そして今年。今年は巣箱にミツバチをお迎えするぞ!!! と意気込み、まずは金陵辺の鉢を近くの道の駅に買いに行きました。ミツバチを呼びたい人が買っていくので、毎年この時期には売っているのです。

 小さな鉢にも関わらず5000円!!!!と高級なお値段。「ちょっと高くない?」としばらく悩んだものの、今年はなんとしてもミツバチを入れるのだと意気込み、お買い上げ。

 さらにミツバチの落ち着いて過ごせる環境を調べました。雨のあたらない場所、風通しのいいところ、ほどほどに陽が当たる場所。飛んできて、すーーーっとそのまま巣箱に入れるよう障害物がない、農薬を使ってない環境。水飲み場がある、においに敏感なので悪臭がしない。

 そんな条件を満たす場所を探すのに畑も含め、わが家の敷地内を歩いてみました。ここがいいね!となった場所は井戸がそばにあり、梅や花梨の木陰。早速巣箱を移動し雨よけの屋根をのせました。

 夫は念入りに蜜蝋を巣箱の中に塗りたくり、更にはハチの出入り口にヤスリをかけスベスベに。意味あるのかな? とは思ったけれど、やれるだけのことはやってみようということでした。

 そして毎日毎日チェックをしていた春のある朝、数匹のミツバチが巣箱の周りを飛んでいたのです。「もしかして、偵察隊のミツバチかも!?」と興奮。ミツバチは移動する前に偵察隊を送り込み、巣箱や周りの環境のチェックをするらしい。

 それからしばらくして、ものすごい音量でぶぅんぶぅんという唸るような羽音がしてきました。とうとう働きバチを引き連れた女王蜂のいる大群がやってきた!!! とは言え、何千から何万匹の働きバチの塊の中心にいる女王蜂の姿は一切見えません。

 巣箱の底辺からあごひげのように大量の日本ミツバチが垂れ下がっている!!!!

 うわぁぁぁぁぁぁぁ~、こんなにたくさんのミツバチがこの小さな巣箱に入るの~!? と思うほど。その中心にたった1匹の女王蜂がいるはずなのです。

大量の日本ミツバチ
巣箱に垂れ下がっている日本ミツバチ

 しばらくして見に行くと、あれだけたくさんいたミツバチがいなくなっていました。全部無事に巣箱に入ったようで、小さな出入口から門番役のミツバチと忙しく出入りするミツバチが確認されました。

 それから夫はうれしそうに1週間おきに巣箱の掃除をしています。巣くずをそのままにしておくと、スムシが発生してミツバチの巣を侵食するそうです。今日の朝もドキドキしながら見に行くと、ちゃんとミツバチたちが忙しそうに出たり入ったりしていました。なんだかかわいい日本ミツバチなのです。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。