目指せふるさと納税1億円。山村の仲間とワクワクする返礼品を開発中

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(34)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、新商品開発についてをレポート。

「ふるさと納税1億円を目指す」とスタートした商品開発

あか牛
阿蘇特産のあか牛。ふるさと納税の返礼品でも人気

 やりたいことはたくさんあるが資金がない!! と気がついた産山村。そんな産山村が2020年、無謀にも「目指せ1億円!!」と掲げて、ふるさと納税に力を入れ始めました。300万~500万円だった金額が、2020年は3.5倍くらいの1700万円にまで増えましたが、1億円という大きな目標にはまだまだ遠く…。

 売るものがなければ稼げないよね!?と開始したのは、産山村役場と商工会がタッグを組んだ「ものつくり塾」。新しい商品やサービスをつくり出したい人に知恵と研究費を出しましょう!という太っ腹な試みです。

 希望者にとっては、商品やサービスを考え、どんな商品にするのか、名前はどうする? だれにどうやって売る? をふぅふぅ言いながら畑作業の合間に時間をつくりつめていく作業です。

 ものつくり塾を産山村から業務委託されているのは南小国のまち起こし会社SMO。スタッフさんのアドバイスなどを受けながら、頭のなかでモヤモヤとした状態だったものがはっきりくっきりと形になっていきます。そして審査会という名のプレゼンを商工会の方、役場の方、SMOの方の前で行う。企画内容が無事に認められると研究費(50万円まで)が出るのです!!!

 2020年は、農薬不使用&化学肥料不使用のキュッフェ農園の野菜を使ったドライスクープドレッシングと、ハーブや野草やエディブルフラワーを使ったボタニカルティ―を商品化しました。

ハーブティー
ドリップタイプのボタニカルティー

 ボタニカルティーとは季節ごとにどんどんボタニカル(植物)が変わるハーブティーです。『petit terrain -小さな野原-』と名づけたブランドで展開し、キュッフェの店頭やホームページ内のショップにて販売しています。

ときめきやワクワクを共有できる商品をつくりたい

ブーケティー
花束みたいなお茶「ブーケティ―」は商標登録申請中

 さて2021年は? ときめくものつくりを!!という基本コンセプトは変えずに、でもなんだか今回は、村の人々に関わってもらいながら成り立つものがいいなと、ぼんやり思っていました。1個の商品が売れたときに、みんなに少しずつでも売り上げが入るといいなとも。

 この変化はなんだろう? ときめきやワクワクをもう少し多くの人と共有したくなったのかもしれません。自分の考えたものをだれかが気に入ってくれて、大事なお金を使って購入してくれている!という手ごたえをお節介にも分かち合いたくなったのかもしれない。

 それと同時に、自分の得意な部分がはっきりとしたことで、個で抱え込んでいっぱいいっぱいになるなら自分にたりない部分や苦手とする部分、シリアスになりすぎて楽しめなくなる部分などをそれぞれ得意な人にお願いすればいいんだ!!!と心の底から思えたのです。
 その方が自分自身のときめきも純粋なまま突っ走れる、と。

 今回の商品企画は「野草やハーブの香りをまとうためのセット」。産山村の野草を中心にハーブやお花やスパイスをブレンドし、焙煎したり、焚いたり、煮だしたりするセットです。裏テーマは『おとなのままごと』。

たくさんの協力者たちを頭の中で構想中

ボタニカル
プレゼン用に準備したボタニカルたち

 喜びや楽しさを共有したいたくさんの協力者を考えています。香りの研究開発のパートナーには魔女修業中の女性「organ」さん。素材の開発パートナーは、野草やハーブの知識に長けている「ふぁとりあin産山」さん。

 木の実や葉っぱなどを集めてもらうチームは、児童クラブのみんな。楽しんでもらえるかな? 素材をブレンドしてパッケージングするのは、ご年配のゴールドクラブ。手先を動かす作業だし五感を刺激するかな? 茶葉を摘んでもらうのは、産山学園。授業で茶葉を使った商品を考えていたよね? ご招待されて私、発表会に行ったもんね。

 ロゴなどデザインのパートナーは自然時計さんで、ある意味妖精みたいなキャラの方。焙煎皿など焼き物は、多彩な趣味をたしなみ、その一つの陶芸にハマっている退職後Uターン帰郷したSさん。

 今、頭の中で組んでみたチームはこんなメンバーです。すでに声をかけた方もいるし、これから声をかける方もいます。この先実現するにあたってさまざまな問題が山のように出てくるはずですが、周りの人々に話して、お願いして協力してもらうことになると思います。

 大変なことがあるとしても、2022年のふるさと納税返礼品には、いろいろな人の手を経たその商品が登場…今から待ち遠しい!! そんな新しい取り組みに挑んだ、移住5年目の冬の初めの出来事でした。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。