おひとりさまに田舎暮らしをすすめる理由。移住して分かったお得な生活

2021年5月から50代目前でひとり、東京から和歌山県那智勝浦に移住し、地域おこし協力隊として活動している堀良子さん。1年が経とうとしている最近、「移住」に対する考え方が大きく変化したそうです。

移住のハードルは思っていたほど高くない

地域おこし協力隊として廃校を活用
地域おこし協力隊として廃校を活用

 脱東京してもうすぐ1年、那智勝浦で廃校活用をミッションに活動しています。新天地も初夏から冬、湿気と極寒の季節を超えると、すっかり地元民の気分に。

 日々発見しては、お気に入り登録を更新し、ちょっとした名所案内もできるくらいに慣れてきて、気がつけば自分から家族や友人に「とにかくおもしろいから一度来て!」と力説するほどになりました。

 そんななか、年末の帰省で久しぶりに東京で過ごし、自分の新生活を少し離れて見たことが、移住ってなんだろうと考えるきっかけになりました。いちばんの発見は、「移住」は私が長年イメージしていたものと違って、もっと自由で気軽な選択肢だったとわかったことです。

 那智勝浦には移住者がたくさんいるのですが、思えばそんな移住者たちは集まってきたルートもさまざまで、あちこち移動しながらここにたどり着いたという人がほとんど。しかもこの先も移動する可能性をプンプン秘めていたりするのです。

 ある移住者から「石橋の下を流されて辿り着いてみる」と聞いたときは、移民族、遊牧民、という言葉が思い浮かびました。

「移住」とひと口に言っても、生涯の住処とガチガチに考えなくてもいい、もっと自由さがあってもいいんじゃないか、もっともっとお気楽に、そこそこ移住生活という感覚で始めてみていいんじゃないか。1年間で、いうならば「移住革命」と表現したくなるほどの、価値観の変化が起きたのです。

一軒家を借りると庭、納屋、田んぼ、山までついてくる

庭と納屋がついている一軒家
一軒家についている庭と納屋

 移住をお気楽に考えられるのは、田舎は信じられないくらい住居費が安い、という理由も大きいです。例えば最新のMACや冷蔵庫を買うくらいの投資で、一軒家なら庭はおろか、納屋、田んぼ、山までついて、固定資産税もお小遣いレベルなんて物件は珍しくありません。里山界隈で100万円代なら強気の数字です。

 親戚の家(空き家)をだれかに管理してほしい、田んぼの草刈り、山の手入れなど、もってるだけで大変だから、あわよくば手放したいという大家さんも多く、家をもらったという一家も。一軒買ったらもう一軒ついてきたという物件もありました。

 那智勝浦に限らず似たような田舎は多いのではないかと思うと、365日住まなくてもオッケーなら、北に、西に、島に、3つくらい家が買えそうに思える今日この頃です。

 一度は考えるような田舎暮らしが、手が届くくらいの資金でスタートでき、まったく違う時間と空間というドでかいリターンをゲットできる、そんな選択肢が増えたら、肩の力がふ~っと抜けるような気がしませんか。

おひとりさまの田舎暮らしはお得&安心

いただきもので贅沢な朝ごはん
いただきものの南高梅と梅ジャムを麹ドリンクと

 ひとり暮らしの特権か、仕事柄の特権か、野菜や米はスーパーがなくても困らない(笑)。移住してすぐの梅雨どきには、香り高い南高梅をたくさんいただいてほっこり。田舎暮らしは、もらいっこ、助け合いっこのおつき合いだと知りました。

 とくに、私がひとりだからか、相手の方も気楽に誘ってくれるようで、おひとりさま暮らしって、やっぱりお得! と思うこと多々。最初は距離の取り方が掴めなかったご近所付き合いも、回数を重ねていくなかで、取り繕わずに自分サイズで行こうと決めてみたら、「村全体が大家族みたい」に思えてくるようになりました。

 もちろん、ひとり暮らしはさびしいなぁと思うこともあるのですが、なにより日々隣合わせだから、外に一歩出たら、ひとりになるほうが難しい。そして、よおく見ると、子どもが巣立ったり、パートナーと別れたりで、じつにひとり暮らしの女性の多いこと!

 先日、夫が亡くなった方は、同じ経験のあるお隣さんが駆けつけて、諸々の手配をちゃっちゃと助けてくれたそう。その後も支え合っているそうで、聞いているだけで頼もしい。

 役場の人も郵便局員さんも自分の名前を知っているとか、日々気にかけてくれるつき合いがすぐそこにあり、たとえ住まいはひとりでも、孤独じゃない安心感がある田舎暮らしは、おひとりさまにこそいいのかもと思う理由です。

近所の人と憩いの時間
近所の人と憩いの時間

 季節や気分に合わせて生活スタイルごとまるっと移り住む移住スタイルもありじゃないか。働き方革命のように、移住革命がやってくるのではないか?
 そんなことを考えながら、ちょこんとひなたぼっこをしていれば会話が生まれる暮らしを楽しんでいます。田舎暮らし、まだまだ極めていきたいです。

<写真・文/堀 良子>

堀良子さん
2021年5月、和歌山県那智勝浦町に移住した独身アラフィフ。和歌山県の廃校活用と地域活性化のため、地域おこし協力隊員として活動中。一男一女は東京と台湾でそれぞれひとり暮らし。