―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(39)]―
東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、新商品完成についてをレポート。
野草も草花もおいしい食材になる
阿蘇産山村(うぶやまむら)は、大自然や美しい水源や草原の広がる自然豊かな村。春先の私は、道を歩きながらもキョロキョロ。あの見慣れた野草もこの草も「お茶にしたらおいしいんだよねー」とか「あの山菜は天ぷらにしようかな」と草花の芽吹きと共に食欲も全開です!
農薬不使用、化学肥料不使用の野菜づくりを始めて5年。野菜だけでなく、春の始まりにはワラビやウドやフキ、ヤマミツバや山椒なども、私たちのレストラン「asoうぶやまキュッフェ」の料理に取り入れています。春の山菜の苦味や香りがアクセントになり、より一層味わいが深くなり口の中に豊かな季節が広がります。
自然の恵みを楽しむ生活からか最近ではオリジナルでハーブティー(キュッフェではボタニカルティ―と呼んでます)もつくってます。
ハーブティーはお好きですか? じつは私、あまり好きではありませんでした。なんだか草っぽい味を健康のために我慢して飲むというイメージ(今思うと偏見ですね!) そして飲み終わった後のポットのメッシュにハーブが絡みついて洗いにくい。という理由で、なんとなく敬遠してました。そんな私がオリジナルでハーブティ―をつくり販売するようになるとは!
フレッシュと乾燥でハーブの味わいや香りが変化
そもそも最初にハーブティーっておいしいかも!? と興味をもち始めたのは産山村に来てから。この地で始めたキュッフェ農園のフレッシュなカモミールやレモングラスをポットに入れて飲み始めたことがきっかけです。
農薬不使用&化学肥料不使用の自店のキュッフェ農園では、食事の最後に出すコーヒーが苦手な方に向けて出せるように、レモングラスやカモミールやミントを栽培していたのでした。いれると、ポットだけでなく部屋中にいい香りが漂いなんとも言えないすてきな気分になります。
自分が好きな味になるように工夫をしてみたりもしました。たとえば、たくさん収穫できるミント。種類も4~5種類栽培してます。夏にミントを入れたミント水は飲みますが、フレッシュなミントにお湯を注いだミントティーはなんだか青臭くて苦手でした。
あるとき、一度にたくさん収穫できるミントを乾燥ハーブとして料理に使おうと乾燥させてみることに。乾燥後、ふとハーブティーにして飲んでみると…。あら不思議ほんのりと甘味を感じ、後味はすっきり!! あの苦手だった青臭さもないおいしいミントティーに。
フレッシュな植物と乾燥した植物。こんなにも味わいや香りに変化があるとは!
花束のように束ねたブーケティーも開発
変化のおもしろさに気がついてからはさまざまな植物を乾燥させることに夢中になりました。ハーブや野草や果実やエディブルフラワーを乾燥しては飲んでみる。気に入った味や香りをさらにふくらませてイメージしブレンドして、また飲んでみるということが楽しくなり、いろんなオリジナルボタニカルティーができました。
簡単ドリップタイプで、あとかたづけ問題も解決! 自分たちのキュッフェ農園で栽培している植物か、環境が完全に把握できる敷地内で自生している野草だけを基本的には使用しています。
そして、ひとつひとつを丁寧に乾燥させたボタニカルを、花束をつくるようにまたひとつひとつ束ねてブーケにした見た目も美しく愛らしい「ブーケティー」も商品化しました。ブーケをポットやカップに入れてお湯を注ぐと美しくおいしいボタニカルティーが!
ブレンドごとに自分がイメージしたシーンを言語化し、「月夜」「春待ち」「ひだまり」「みずたま」「野のベルベット」「夏の草原」など、それぞれのブレンドに名前もつけています。
移住してからは、大自然にインスピレーションをもらいながらモノつくりを驚きと共に楽しんでいます。(ブーケティ―は商標登録済みです)
折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。