ブドウを狙うイタチを襲う天井裏の天敵。山村移住は動物との共存が大変

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(42)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、天敵の生き物についてをレポート。

天井裏にブドウを狙ったイタチが侵入

レストラン
暖炉に火をともした店舗。こちらは隠れる屋根裏がなく、動物が入りこむことはないのでご安心を

 秋になり、ブドウが熟してくるとブドウ畑一面によい香りが漂い始める。そうなるとやってくるのが奴らです!
 電柵はもちろん、ネット(網)や箱罠、光や動物の嫌いな音が出る機械や爆竹などなど。あの手この手を試すも、毎日毎日少しずつ動物たちに食べられるブドウ。

 害獣という漢字だけ見ると嫌なやつみたいですが、シカ、イノシシ、イタチ、アナグマ、ハクビシン、ヒヨドリ、ムクドリ…と害がなければ愛嬌のある生き物ばかり。しかし1年間さまざまなお世話をし、手間ひまかけて育ててきたブドウの実を食べてしまうとなると、かわいいばかりではないのです!!!

アナグマ
害がなければかわいい、天敵のアナグマ

 そんな戦いの真っ最中の明け方、トコトコトコ、ガタン、バタバタバタバタと寝室の天井裏で動物が慌てて走り回る音がした! 右往左往している様子が手にとるよう。
 隣に寝ている夫を「動物が天井裏にいるよ」とすぐ起こしました。夫はすぐ洗面に行き、様子をうかがおうと屋根裏に通じる点検口を開け…。

「うわぁー!!!!」と叫び声。洗面所のドアから夫が飛び出しバタン! と勢いよくドアを閉めながら「スズメバチ!!」とさけんだ。慌ててそばにあったバスタオルでドアの下の隙間をふさぐ。
 ドアの向こうでは怒ったスズメバチがウワンウワン飛び回ってる音が。

畑の蜂
ブドウ畑のスズメバチ。粘着シートが大活躍

 どうやら天井裏にスズメバチの巣があったようです。それを知らないでイタチ(恐らく)が天井裏に呑気に侵入。そんな侵入者に怒った大量のスズメバチがイタチを襲い、イタチがバタバタと走り回る音で私たちの目が覚め、怒ったスズメバチが充満する天井裏を夫が寝ぼけながら開けてしまったらしい。

スズメバチが落ち着くのを朝まで待つ

ブドウ
鳥だけでなく動物にも狙われるブドウ

 ただでさえ秋口のスズメバチは近寄るなと言われるほど狂暴なのに。
 点検口を開けた際に、腕を1か所スズメバチに刺された夫は点検口を閉めることなく、開けっ放しで飛び出てきてしまったようです。私は以前、頭を数か所スズメバチに刺されてかなり痛い思いをしたことがあり、もう眠気なんてどっかに吹き飛んでしまいました。

 外はまだ真っ暗。室内の電気をつけて明るくしてしまうと隙間からスズメバチが侵入してきてしまうので、暗闇でおびえながら外が明るくなる夜明けを待ちました。

 待つこと1時間半…。やっと外が明るくなると同時に、スズメバチの怒りも収まり天井裏の巣に戻ったらしく、ドアの向こうの羽音はほとんど聞こえなくなりました。恐る恐るドアを開け、スズメバチがいないことを確認し点検口を閉め。巣に戻れなかった1匹がどこからともなく登場しましたが、バチっとハエたたきで仕留める。

はち
1匹ならばハエ叩きで仕留める!!

 このまま冬になり女王蜂以外が死んでしまうまで待ち、巣を片づけるか、意を決して天井裏にバルサンを仕かけて追い出すか…悩ましいところです。

 ちなみに、スズメバチ騒ぎの2日後の夜中も、また動物が天井裏を歩き回る音がしました。「もう下手に関わらないでいいよね! 寝てよう」と再度眠りに入ろうとしたところ、ポタポタと天井から廊下へ水の滴る音がしてきたのです。

 なんと、動物の尿が…。飛び起きて、床と天井を拭き掃除しました。こんなふうに、動物や虫との共存も里山暮らしにはついて回るのです。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。