山村で初めてのはちみつ採取。ミツバチを犠牲にしない方法を考えました

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(44)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、初めての自家採蜜についてをレポート。

敷地内の巣箱からはちみつを採取

ハニカム
巣箱の中に満タンのハニカム

 わーい! 私たちの日本ミツバチのはちみつができましたー! とうとうキュッフェの敷地のさまざまな花の蜜を味わえる日が来ました、念願の自家採蜜です!

 そろそろ日本ミツバチのはちみつをもらおうかな~と言い始めたのは秋のはじめ。

 2019年に設置した日本ミツバチの巣箱に、2021年(設置3年目)の春に自然に住み着いてくれました。そのときも喜びのあまり大騒ぎで感動もひとしおでした。が、さらに今年2022年の春にはめでたく分蜂までしてくれました。分蜂を想定し、敷地内にもう1つ新しい巣箱を設置していたところに入ってくれ、めでたくキュッフェミツバチは2世帯に! これもまた大騒ぎで喜びました。

 ミツバチの分蜂を簡単に説明すると、新しく生まれた女王蜂に今までの家を譲り、旧女王蜂は新しいおうちに働きバチとともに引っ越しします。新女王蜂は住み慣れた巣箱で新しい体制を築きます。そうして冬はせっせと蓄えていた蜜を食べ、寒い寒い寒いマイナス気温の続くうぶやま村の冬を乗りきっていくのです。

巣箱
拡張していく巣箱

 なので巣箱に入りたての1年目は蜜はとりませんでした。というのも取ってしまうと、食べ物がなくなり冬が越せなくなり巣箱からいなくなってしまうことが多々ある…。そう聞いて「ミツバチが餓えていなくなるくらいなら、はちみつを取らなくってもいいよね!? 自分たちが味わうはちみつは来年のお楽しみにとっておこう!!」と2人で話し、巣に入りたての昨年は蜜をとらなかったのです。

 ミツバチの巣箱は巣(ハニカム)が大きくなるたびに下に拡張していきます。巣箱の段を下に一段足して、その一段も重くなったらまた一段とたしていきます。そうして巣箱の中は、せっせとミツバチの集めた蜜の詰まったハニカムで一杯になるのです。今年のキュッフェのミツバチの巣箱も、ミツバチががんばってくれたおかげで3段から4段まで増えました。

ミツバチを殺さずにはちみつを採取

ネット付き帽子とブロアー
ネット付き帽子とブロアーを持つ私

 そして秋のある日、そろそろいいんじゃない? と村の友人と4人で採蜜を決行することにしました! 1人は完全防備の恰好で、残りの3人もネットを張った帽子に首元はタオルで保護し、手袋をはめてスタンバイ。

 採蜜するときにミツバチの翅に蜜がついてしまうと飛べなくなり、弱って死んでしまうのですが、ミツバチに愛着が沸いてしまっている私たちは1匹も死なせたくなかったので秘策を考えました。それは、ブロアーで風を送り、ハニカムから少しでもミツバチに離れてもらう作戦です。

 1人が箱を持ち上げ、1人がテグスで箱の中のハニカムを切り一段だけ取り出します。その取り出した一段の木枠の中にぎっちり詰まっているハニカムを丁寧にヘラなどで木枠から取り外し、取り外したハニカムだけを洗濯ネットに入れて吊り下げハニカムから自然に蜜が下に落ちるのを気長に待つのです。

稲わら
稲藁と麻袋で防寒対策をした日本ミツバチの巣箱。出入りできるように入り口は塞がないようにしている

 どの段階でもミツバチの翅に蜜がつかないように細心の注意を払いますが、とくに洗濯ネットにハニカムを入れるときに大量のミツバチがネットに一緒に入り込み、翅が蜜でべたべたになってしまうかもしれなので、重点的に気をつけます。うっかり翅に蜜がつかないようにあちらからこちらからとブロアーで風を送るのです。ブロアー担当の私、地味ながらも重要な役目でした!

 そのかいあってか、1匹もミツバチを死なせずに無事にハニカムを取り出せました! 作業中にちょっと味見をさせてもらいましたが…とぉーっても美味。やさしいまろやかな甘味のある味が口の中に広がりました。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。