特技を生かして小商い。下諏訪には個性的な商店があります

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

 長野県の諏訪湖のほとりの宿場町で、地域おこし協力隊として活動する小林由香里さんと綿引遥可さん。「この町を小商いが育つ場所にしたい!」と奮闘する彼女たちの仕事ぶりをつづってもらいました。今回は町でがんばっている個性的な商店街の人たちと、それに続く小商いの人をご紹介。

20年前から、商店街をよくする運動を始めました

 下諏訪町(しもすわまち)の地域おこし協力隊、略して「ちおこ」の小林由香里と綿引遥可です!

 前回「『小商い』で町を元気に!小さなことからはじめています!」でご紹介したとおり、下諏訪町を「小商いが育つ場所」にしていくという活動をしているわけですが、既に下諏訪には地域に愛される小さなお店がいっぱいあるのです。それはなぜか…!

 下諏訪町は中山道(なかせんどう)と甲州街道が交わる場所で、中山道では唯一温泉がある宿場町です。さらに、全国の諏訪神社の大元である諏訪大社の4つのうち、諏訪大社下社(しもしゃ)の春宮(はるみや)と秋宮(あきみや)の2つがあります。7年に1度、行われる「御柱祭(おんばしらまつり)」も有名です。

 また、駅から歩ける距離に諏訪湖(諏訪湖からは富士山も見えます!)、クルマで30分の所に八島湿原があり、歴史が深く、自然に恵まれた観光地でもあります。さらに地域のおばあちゃんの話だと、精密機械の工場が最盛期のころは、渋谷のスクランブル交差点くらい人がいたのだとか。そのような場所なので昔から人の往来が盛んで、よそから来る人を抵抗なくウェルカムする素質がある地域なのです。

岡本太郎
町歩きをすると岡本太郎が愛した「万治の石仏」にも会えます

 以前ご紹介したミーミーセンタースメバがある、「御田町商店街」では、精密機械の工場が衰退して空き店舗が目立ってきた20年ほど前から、商店街の人たちは「できることで商店街をよくしよう!」と動き始めました。
 
 始めはお花を植えたり、イベントをしたり。そして15年ほど前に古びた空き店舗を自分達のできるDIYできれいにし、「あら、すてきじゃない!これならだれかに使ってもらえる!」「でも、ただの販売店ではつまらないから、工房に入ってもらおう!」という流れで、新しく木工房や布織物を扱うお店ができ始めました。

 ちょっとおせっかいだけど、ちょうどよい距離感で見守ってくれる商店街の方とのコミュニケーションは、なんだか心地がよく感じます。そんな雰囲気と口コミで、御田町商店街の空き店舗は、ゼロになりました。

宴会
地元の人も移住者もみんなで宴会!

みんなに愛される個性的なお店がたくさんある!

 そんなコミュニケーションが盛んな町にできる、お店も店主さんもとても魅力的。ほんの一部をご紹介します。

●「ninjinsan」

 縄文から平成までの目利きの店主さんが選ぶ古道具が所狭しと並んでいるお店。店主さんはUターンをして地元でおもしろいことを!とお店を始めました。古道具の詳細な説明やアドバイスはもちろんですが、地域で作家さんとイベントを開いたり、絵を描いたり、DJをしたり、人のつながりで県外のイベントへ出店したりと多彩。お客さんの話を熱心に聞いてくれるので、お店には高校生からおじいちゃんやおばあちゃんまで訪れ、慕われています。

古道具屋
店主の人柄にひかれ、町の人はもちろん、県外の人も訪れます

●「あんず木工房」

 東京出身の店主さんは2人のお子さんのお母さん。店奥の工房で木材を加工し、器や家具をつくっています。町外から家具の修理の依頼もある信頼できるお店。
 先日まで育児休業をしていましたが、下のお子さんが保育園に入ったタイミングで再開されました。お子さん連れの移住者にとって相談にも乗ってくれる頼もしい存在です。

木工坊
子育てしながらの営業の為、平日のみ営業。無理がなくていい!

 そのほかにも、古い旅館をリノベーションし、海外に旅をしたときの経験を元にゲストハウスを開いている方。

 移住を機にカフェを開き、もともと好きだった料理を提供する方。

 知り合いをきっかけに移住をし、地元の人も旅行者も移住者も集うカフェをされている方。

 自分達の畑でつくった野菜や小麦で、こだわりのパンを提供している方などなど。

 このように個性あふれるお店がありますが、みなさん、自分の特技をいかしたり、暮らし方を大切にされたりしています。そこからあふれる雰囲気が、人に愛される魅力なのかもしれません。

次に続く「コアキナイビト」も現れています

 今はお店をもっていないけれど、自分が好きなことを仕事にし、いずれお店をもちたい!と思っている「コアキナイビト」も増えています。

 島田さんは前回紹介した「ホシスメバ」に住んでいます。昼は珈琲焙煎のお店で修業をし、夜は地域の人が集まるバーでアルバイト。「観音崎珈琲」という名前で、丁寧に焙煎された珈琲豆を少しずつ販売しています。「おいしい」と評判になり、観光案内所にも置かれる商品になりました。キッチンカーをDIYで作成し、始動が目前。

キッチンカー
ホシスメバはコーヒ―アロマが漂っています。なによりいりたてを買えるのがうれしい

 唐戸さんは、観光分野の地域おこし協力隊としても活躍していますが、刺繍のワークショップをはじめ、洋服のオーダーメイドも行っています。地域おこし協力隊の任期終了後は空き家を改修し、自身が学んできた北欧の社会人でも学べる、人生のための学校「フォルケフォイスコーレ」のように、刺繍教室やさまざまなお店が集まる空間を友人と開きたいと構想中。

刺しゅう
唐戸さんの人柄も伝わってくるような、すてきな作品が並ぶマルシェ

 このように自分の「好き」や「やりたい」にチャレンジしている人が増えてきました。小さく始めて、どんどん「コアキナイビト」が活躍すれば、もっと地域が元気に楽しくなるはず! わたしたちはそんな思いで活動しています。

 次回は、そんな流れを加速させるために企んでいる「仕掛け」についてご紹介します。

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

小林由香里さん 綿引遥可さん 
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。