広島県安芸高田（あきたかた）市の山あいの集落で、両親とおばあちゃん、山で保護した犬「てん」と暮らす水戸家のmizutomidoriさん。お父さんの実家である今の家に移住して6年目、愛犬てんと家族のにぎやかな暮らしのレポートをお送りします。今回は、山でとれたキノコについてと、田舎に暮らすようになって感じることについてです。
秋の里山でさまざまなキノコを堪能
山ぎわにはピンク色のかわいい萩の花が見られるようになりました。こうして秋を感じるようになってくると、今年もいよいよキノコシーズンの始まりです。父が早速山に入って、アンズタケやウスヒラタケを見つけてきました。私も一度近くの山へ入りましたが、少し歩いただけで斜面のあちこちにキノコが生えています。食べられない毒キノコばかりでしたが、色も形もおもしろいものがたくさんあって驚きました。
9月中旬を過ぎると、父が土の中に埋め込んでいたホダ木からマイタケが次々に顔を出し始めました。原木栽培なので香りもよく、天ぷら、炊き込みご飯、炒めものなど、なんでもおいしくいただけます。ペーストにしておくのもおすすめ。たっぷりのオリーブオイルとニンニク、鷹の爪で炒めたマイタケをフードプロセッサーでなめらかにするとうま味がギュッと濃縮されて、バゲットにのせたり、パスタにしたり、ポテトサラダに混ぜたりしてもおいしいのです。
まさに食欲の秋！ キノコ以外にも栗やサツマイモなど、里山はおいしいものでいっぱいです。
日々の「小さなやりたいこと」がいっぱいの田舎暮らし
以前、移住の経緯については少し記事でお話ししたことがありますが、ときどき、水戸家はなにをしている家なの？ と聞かれることがあります。わが家は事業を経営しているわけでも、専業の農家でもありません。野菜は家で食べるぶんだけつくっていますし、お米はおじいちゃんの代から地域の農業法人に田んぼを預けてつくってもらっています。
父は建築士で、公共建築の設計などに携わっていました。定年後、母と一緒に実家である安芸高田市の家に住み始め、現在は畑仕事やまきづくりなど生活に必要なことをして過ごしています。
私としては移住するにあたり、職探しがいちばんの懸念事項でした。ですが、地域に関わる現在の仕事を運よく見つけることができたのです。非正規雇用なので安定しているとは言えませんが、昔から持病があるためフルタイムで働くのは体力的に難しく、そういう意味でも私にとってありがたい職場です。
そんなわけで、今の私には「お店をしたい」とか「起業したい」といった大きな夢はなく、この野菜を育ててみたいなとか、ホウキを手づくりしたいなというような小さな目標しかありません。
それでも、そんな小さな「やりたいこと」がこの田舎に来てからはたくさんあって、まちなかに住んでいたときにあった閉塞感のようなものはあまり感じなくなりました。
これからの生活に不安がまったくないわけではありませんが、嫌なことがあっても外に出て黙々と草をとったりしているうちに気持ちが晴れてスッキリしてきます。
それに、こちらでは次々に思いがけないことが起きるので、モヤモヤと考え込んでいる時間はありません。最近では屋根裏で野良猫が子猫を産んで、天井が壊れそうなくらいの大運動会が繰り広げられて大変でした（子猫はなんとか捕まえて、今は知り合いの家でかわいがられています）。
一緒に住んでいる家族とも、いつも仲よくいられるわけではありません。ですが、愛犬のてんやニワトリ、周りの人たちがみんなの間を取りもってくれています。このように、「ただ田舎で暮らしている」水戸家では、自由な環境のおかげでそれぞれが伸びやかに日々を過ごしています。
わが家のシンボルツリーの銀杏も実り始める
9月の終わり、ヒガンバナが咲き始めると同時に銀杏の実もぽつぽつと落ちはじめました。今年は実の重さに耐えかねて折れてしまった枝もあるほど、大量の銀杏が実っています。朝晩も急に冷えこむようになりました。まだまだ秋はこれからです。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して6年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。
