2023年「地方創生&多文化共生マガジン カラふる」で掲載した人気記事を厳選してお届けします。今回は、安芸高田市に移住した水戸家のmizutomidoriさんが、竹でつくる保存食「竹スルメ」に挑戦した記事をどうぞ!(初公開2023年6月8日、内容・データは掲載時のものです)
かむほどに味が出る、幼竹を使った「竹スルメ」
里山の緑はさらに濃くなって、こちらでは朝からあちこちで草刈りの音が響いています。
タケノコのおいしいこの季節には、水戸家では恒例の「竹スルメ」づくりを行います。竹スルメとは、タケノコが伸びて2mくらいに成長した幼竹を使ってつくるスルメのような保存食。おつまみにもぴったりです。最近では竹林の整備をかねて、この幼竹で国産のメンマなどをつくる取り組みが全国で行われています。
採ってきた幼竹はまず穂先を切り落として、縦にまっすぐ切れ目を入れ、皮とくっついている部分をはがして中身を取り出します。下の固い部分や節は取り除き、6~7cmくらいの長さにそろえて大まかにカットしたら下ゆで。大釜でゆでて、柔らかくなったら1時間くらい水にさらします。
その後は繊維にそって1cm弱の幅で短冊切りにして、しょうゆ、酒、みりん、唐辛子などの調味料で煮て、一晩おいて味を染み込ませます。
翌日からはトレーに広げて天日干し。天気のいい日が続くときを狙ってつくるのですが、幼竹の成長具合で都合がつかず日差しがたりないときには、薪だきの乾燥機を使って乾燥させています。
乾燥すると重さは元の10分の1ほどになり、かめばかむほど味の出る竹スルメの完成です。
1年分のお茶を釜で炒ってつくる
5月には重要な仕事がもうひとつ。1年分のお茶づくりです。
お茶の木(チャノキ)は昔から大切にされていたようで、畑や田んぼの石垣沿いなど家のまわりのあちこちに生えています。この時季の柔らかい黄緑色の新芽がお茶になるのですが、1年分をつくるためには大量に摘まなくてはいけません。もうすぐお茶摘みという5月の半ば、なんとおばあちゃんが転倒して足を骨折してしまいました。
健康そのもののおばあちゃんにとって、96年の人生ではじめての手術と入院です。面会に行くと、思ったよりも元気そうではやく回復しそうな様子ですが、退院まではまだ時間がかかりそうです。
大雑把だけどいつも大量にお茶の葉を摘んでいたおばあちゃんが居ないため、今回は少しずつに分けてお茶仕事をすることになりました。
お茶にも種類がいろいろあるようですが、水戸家では釜炒り茶をつくっています。
まず新芽を固い葉っぱや虫が入らないよう注意しながら摘みとって一晩置きます。翌日は朝からの作業で、お茶用の大きな鉄釜で茶葉を炒っていきます。はじめに少し水を加えて蒸しながら炒るので、湯気とともにお茶のいい香りが一気に広がります。全体的にしんなりしたら次は板の上でしっかり揉んで、これをムシロやトレーに広げカラカラに乾燥するまで天日干しします。
これでお茶は完成ですが、わが家ではこの茶葉にハブ草をブレンドしたものが定番の味になっています。畑では今年のハブ草の芽がちょうど出てきたところ。これから大きく育つのが楽しみです。(ハブ草は以前のお盆の記事でもご紹介しています)
歌いながら苗を植える「はやし田(花田植え)」
5月の終わりには、地域の伝統行事「はやし田(花田植え)」が行われました。コロナ禍で開催を見合わせていたため実に4年ぶりとなります。
「はやし田(花田植え)」とは中国山地に伝わる豊作を祈願して行う田植えで、今回私も早乙女(さおとめ)として参加させてもらいました。かけ合いで歌いながら苗を植えていくのですが、地域ごとにそれぞれ違うというその独特の歌やはやしはとても魅力的です! 高齢化で参加する人も減ってしまっていますが、地域の方々が今まで受け継いでこられた文化です。これからも大切にしていきたいと感じました。
田んぼを見下ろす水戸家の梅の木には大きな実がたくさんついて、重たそうにしなっています。来月には梅を収穫したりとまた忙しくなりそうです。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して6年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。