熊本県産山村で山菜採り。タンポポやセイタカアワダチソウもおいしくいただく

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(54)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、大分との県境にある熊本県産山村(うぶやまむら)で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、産山村の春の味覚についてレポート。

順番に芽生えてくる春のおいしい山菜

コースの一皿
山菜や花が7種類以上添えられたそばの実のサラダ。asoうぶやまキュッフェのコースの一皿(写真提供 リカ)

 数日マイナス気温が続くことも多い標高600~1000の産山村。3月の野焼きあたりから寒いながらもなんとなくあちこちに春の気配を感じます。

 そんな山村生活での春の楽しみは山菜! まず春の最初のおいしいものは野焼き後の焼きつくされた真っ黒な大地から出てくる、きれいな白っぽい黄緑色のフキノトウ。春の山菜の代表でもあるフキノトウは、天ぷらはもちろんフキみそやみそ汁に入れたり炒めものに入れたりと、少量であれば使いやすい山菜です。

イベントの山菜
山野草の先生と散策しながら学ぶイベントにて。収穫し、天ぷらにしていただく

 次にでてくるのが、ワラビ。ワラビは人気です。アク抜きも灰か重曹をまぶし熱湯を入れそのまま一晩漬けておくだけでできる手軽さも人気の理由。また一面に生えているワラビをひたすらポキポキ折って収穫していくのも楽しくて、あっという間に時間が経ってしまうほど。
 茎が細いものから太いものまでありますが、慣れている方は茎が太いワラビだけを選んで折っていきます。食べた時の食感と味のしみ込みがいいからでしょうか。

 そして、コゴミ、タラの芽、コシアブラ、ノビル、ツクシ、セリ、タケノコ、山三つ葉、菜の花、山椒、ウド、葉ワサビ、ウコギ、フキ、ユキノシタが。いずれも天ぷらにしたり煮物にしたりおひたしや佃煮にして楽しみます。

 ここまでは皆さんも聞いたことのある山菜の名前でしょう。

ハルジオンやタンポポ、セイタカアワダチソウもおいしく

ユキノシタ
美しいユキノシタ

 更に! ここ数年私が楽しんでいるものは…街に住んでいた頃には雑草にしか見えなかった野草たち。この野草たちが楽しくおいしい!!!

 散らせばサラダや料理のアクセントになるカキドオシ。まるで春菊? いや春菊よりもおいしいハルジオンのつぼみのついた新芽。なんともいえないよい香りが口の中に広がるヨモギの新芽。やさしい苦味がクセになるタンポポの若葉に花びら。

 また、畑の邪魔者のスイバも新芽の柔らかな酸味でサラダや魚料理などに合い、セイタカアワダチソウの新芽も天ぷらやおひたしで味わえ、甘くてさわやかな香りの藤の花も華やかな天ぷらになります。

ハーブ
ハハコグサ、カキドオシ、ハルジオン

 また乾燥させてハーブティーとしても楽しめるのはスギナ、ドクダミ、タンポポ、カキドオシ、ハルジオン、ヨモギ、クロモジ、ハハコグサ、桑の葉などなど。

 村在住の野草に詳しい人に教わったり、ハーブと野草の研究家を呼んだ村のワークショップに参加したりして知識を広げています。気がつけば、私たちはなんてたくさんの素晴らしい植物に囲まれて生きているのだろう! とワクワクし楽しくなってきます。

リース
野草やハーブなどをドライにしてつくったキュッフェのオリジナルリース

 目に入るあの植物もこの植物もおいしい、そして役に立つと知ってしまってから困ってしまうことがひとつ…。なにも考えずに草刈りしていたのに、知ってしまうと草刈りがしにくくなってしまいました。

 ちなみに、村では山菜によって各個人が毎年行く秘密の場所があるのもおもしろいです。ただし、山も草原もだれかの土地なので、持ち主に了承を得て入ります。また立ち入り禁止の場所には入らないこと! そして、山菜を収穫する際のマナーとして採りつくさない、必要な分だけ採る、出たゴミは持ち帰ることも大切です。

 もうすぐ移住9年目に突入しそうな春のお話でした。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

【折居多恵さん】
雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。