広島県安芸高田(あきたかた)市の山あいの集落で、両親とおばあちゃん、山で保護した犬「てん」と暮らす水戸家のmizutomidoriさん。お父さんの実家である今の家に移住して7年目、愛犬てんと家族のにぎやかな暮らしのレポートをお送りします。今回は、安芸高田の花いっぱいの春について。
たくさんの花が咲き、山菜も楽しみな里山の春
4月は、安芸高田市の里山も花がいっぱいの季節。
水戸家の周りではヤマツツジや山梨、オトメツバキの花が咲いて、イチョウの枝からは小さなかわいい葉っぱが顔を出しています。毎年心待ちにしている山桜もついに開花しました。この山桜が咲くと、ミツバチやハナバチが集まってきて羽音がとてもにぎやか。ハチ以外にも蝶やほかの虫たちも飛んで、小鳥もやってきます。私たち家族だけでなく、たくさんの生き物がこの桜を楽しみにしているようです。
春ならではの味覚も楽しみのひとつです。フキやコゴミ、セリ、ノビル、ミツバ、葉ワサビのしょうゆ漬けに花山椒(はなざんしょう)の佃煮。
葉ワサビは家のそばの小川に自生していて、しょうゆ漬けにするとピリッとした刺激がおいしくご飯によく合います。山椒の花でつくる花山椒(はなざんしょう)の佃煮は、昨年つくったものが刺激が強かったので、反省をいかして今年は若葉は入れずに黄色く色づいたつぼみだけをつみとってみました。
持ち帰ってから茎もできるだけ取りのぞいて佃煮にします。なかなか面倒な作業ですが、花の開き具合と天気と休日を考えるとつくれるチャンスは1日だけ! こうなると気合いが入ります。
田舎での生活は毎年同じことの繰り返しですが、ついうっかりしていると種まきや収穫の時季を逃してしまって、また来年ということも。季節はあっという間に過ぎていってしまうので一日一日が大切です。
ガラス細工のような「ギンリョウソウ」と希少な野生ラン「キエビネ」
山桜が散る頃になると、次は木々の若葉が芽吹きはじめます。山の斜面には色みの違う淡い緑が重なって、その中に藤の花の紫色が混ざるのですが、その景色がなんとも美しくて見ほれてしまいます。
移住して7年目ともなると、だんだんと自然のサイクルもわかってきました。藤の花が咲くということは、山の中ではそろそろギンリョウソウとキエビネが咲くはず!
早速父の案内で山の急な斜面を上がっていくと、例年と同じ場所にちゃんと、あのムーミン谷のニョロニョロのようなギンリョウソウがあらわれました。見に行ったのが雨の日だったので、水に濡れてガラス細工のように透き通った姿がとてもきれいです。
エビネランの一種であるキエビネも無事に咲いていました。ほかの場所にも人知れず咲いているのかもしれませんが、この周辺には1か所だけしか見当たりません。見に行くまではちゃんとあるだろうかとドキドキしましたが元気そうで安心しました。
遠くから見ても、陽の光で輝いている姿はハッとするほどの美しさです。満開になる頃にもう一度訪れたときには、風下にいるととてもいい香りがして驚きました。毎年見に行っているのに、ここまでの芳香を感じたのははじめて。匂いを放つタイミングがあるのでしょうか。まだまだ知らないことばかりです。
キエビネの株も、もう少し増えてくれるとうれしいのですが、荒れた山が多くて、そう簡単にはいかないのかもしれません。これからもできる範囲で大切に守っていけたらいいなと思います。この里山で、楽しい毎日を過ごすことができているのは、周りの自然のおかげだとあらためて実感しました。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して6年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。