広島県安芸高田(あきたかた)市の山あいの集落で、両親とおばあちゃん、山で保護した犬「てん」と暮らす水戸家のmizutomidoriさん。お父さんの実家である今の家に移住して7年目、愛犬てんと家族のにぎやかな暮らしのレポートをお送りします。今回は、今年も里山で行われた伝統行事「花田植え」と、水戸家のお茶づくりについて。
伝統行事「花田植え」で豊穣を祈願
安芸高田市の里山では木々の緑がすっかり濃くなって、草もぐんぐん伸びています。朝早くから草刈機の音が響く草刈りシーズンが始まりました。水が張られた田んぼでは水面に映る空や山がきらきらと光って、車で走っていてもあちこちで代掻き(しろかき・田植えの前に水田を整える作業)や田植えで忙しそうな農家さんの姿が見られます。
5月の下旬には豊穣を祈願する伝統行事「花田植え」が開催され、今年も母と一緒に早乙女(さおとめ)として参加しました。昔はとても賑やかに行われていたそうですが、今では人数も少なく、代掻きをする飾り牛も出なくなりました。それでも毎年、太鼓や田植え歌の練習をして現在まで続けられています。
田植えの後には大きな朴(ほお)の葉っぱをお皿にして、きな粉をまぶしたまん丸のおむすびと、チシャ(レタスのような葉野菜)と焼きサバを酢であえた「チシャもみ」という郷土料理をいただきます。
私はこちらに移住するまで、父の実家といっても知らないことが多く、なんでもこなす地域の人たちには驚くばかりです。この地にはこうした花田植えや神楽、盆踊りといった独自の文化があって、目にするたび不思議な感動があります。過疎高齢化が目に見えて進んでいますが、こんなに魅力的で今まで大切に継承されてきたものですから、途絶えることなくこれからも続いていってほしいと願っています。
1年分のお茶づくりは茶葉摘みから
水戸家では5月の大切な仕事、お茶摘みを行いました。お茶づくりの作業は2日間で、1日目はひたすら茶葉の摘み取りです。お茶の新芽はきれいな黄緑色で茎の部分も柔らかく、手で簡単に摘むことができます。次の日にはそれを大きな釜で炒ってしっかりと揉み、天日で干します。その後2日くらい干してカラカラになったらお茶の完成。
家で飲む1年分のお茶をつくるためにはたくさんの茶葉が必要で、お茶摘みはできるだけ家族全員で行っています。おばあちゃんは昨年、骨折して入院となり不参加だったので今回はやる気満々!
朝早くから始めて、しゃべりながらでも葉を摘む手を休めることはありません。とんでもないスピードでだれよりも多い量の茶葉を摘んでくれました。子どもの頃から97才の今までずっと、この家でお茶をつくってきたのですからさすがです。
ただ、早いだけに固い葉っぱや枝も混ざっていて、じつをいうと夜中にこっそり母や姉と選り分ける作業をしています。それでも、おばあちゃん不在の年は残りのメンバーでがんばっても1年分より少したりなかったので、やはり大変ありがたい戦力です。今年は摘み取りと釜炒りを2回して、無事にお茶づくりを終えることができました。
カメムシやムカデが大好物のニワトリたち
一気に草が伸びるこの季節。道路や道端では黒っぽい毛虫をよく見かけます(シロヒトリという白いガの幼虫だそう)。虫が大好きなニワトリたちは、不思議なことにこの毛虫には見向きもしません。毒はないようですが、やっぱり毛が生えているのが嫌なのでしょうか。逆に、食べても大丈夫なのか心配になるカメムシやムカデは大好物。大きなトノサマガエルだって捕まえて食べています。自分たちに合うものがちゃんとわかるようで、草や野菜も喜んで食べるものと手つかずのものがあります。
雄鶏のガルスくんは早朝以外にもよく鳴くようになって、最近は車で出かけるときと帰ってきたとき、それから犬のてんと散歩に出るときにも毎回コケコッコーと挨拶してくれます。私が仕事に行くときにもおばあちゃんと母の見送りにコケコッコーの声が加わって、朝からちょっと幸せな気持ちで出発できます。
【mizutomidori】
広島県安芸高田市の祖父母の家へ移住して7年目。家族とおばあちゃん、犬のてんとの田舎暮らしの日常をInstagramで発信中。