WEBライターを経たのち、現在は富山県滑川市の地域おこし協力隊として活動する田中啓悟さん。今回は、子どもたちが滑川の未来についての提言を行ったイベント「子どもサミット」の様子をレポートします。
「なめりかわ未来学校 サマースクール」2か月後に再び集合
2024年10月19日(土)、滑川市民交流プラザで「子どもサミット」が開催。本プログラムは、以前行われた「なめりかわ未来学校 サマースクール2024」の成果を発表する場として設けられたものです。
「子どもサミット」は、33回目の歴史あるイベント。滑川市の小・中・高・大学生などを対象とした実践的な学びと遊びの場として2023年にスタートした「なめりかわ未来学校」のコンセプトのもととなったのが、この「子どもサミット」だそう。これまでは児童会や生徒会の代表が参加していましたが、「なめりかわ未来学校」の発表の場として、新たに生まれ変わりました。
サマースクールが終わってから2か月余りの時間が経ち、久しぶりに顔を合わせた子どもたち。最初は照れくささがあったのか、もじもじとした様子を見せます。このむずがゆさのような感覚は大人の私でも共感できて、なんだかほっこりしました。
サマースクールで制作した成果物と、発表原稿の準備を進めます。少しの間眠っていた作品たちのなかには、補修が必要なものも。きっちりと自分たちの思いが伝えられるよう、念入りに準備を進めます。
作品のひとつ「アイディア棒」は、なんと振るだけでアイデアがわき出てくるという優れもの。実在するのなら、どれだけお金を積んでも手に入れたい一品です。こちらも風船がしぼんでしまっていましたが、新しく吹き込まれた命のおかげでイキイキとしていますね。
数時間後には市長をはじめ、市内で活躍する事業者やサマースクールの協賛者の皆さん、インタビューに答えてくれた人たちの前で発表を行う子どもたち。緊張しているのが見て取れます。
2か月前に発表した内容がうろ覚えになっていたところもあり、何度も確認しながらリハーサルを進めていきます。自分たちだけでなく、ほかの班の発表を聞いて「そんなのあったね~」などといいながら、サマースクールの日々を思い返しました。発表のあとに行われる「サミット会議」では各班のアイデアについて討論することになっているため、皆とても真剣な表情。
大勢の大人たちの前で未来の滑川について堂々と提言
そして、いよいよ本番。地域の大人たちが続々と集まり、気づけば部屋を埋めつくすほどに。手元のプログラムを見ながら、未来の滑川市を真剣に考えてくれた子どもたちの発表を心待ちにしています。私も緊張で手の震えが止まりませんが、子どもたちを引っ張っていけるように気持ちを固めます。
壇上で子どもたちの発表が始まると、参加者は温かい視線を送ります。しかし、子どもだからと侮ることなかれ。しっかりと考え抜いてつくられた資料のなかには、未来の滑川市、未来の日本を支えていく小さな種がたくさん転がっているのです。
サマースクールに帯同してくれた大学生や高校生も、発表者として前に立ちました。地域おこし協力隊の私ももちろん発表しましたが、大人たちからの視線が鋭いのなんの。私も未来の滑川市を担う一人として、滑川の文化をもっと発信していきたいと語りました。
それぞれ出た意見を基に、「本当に実現できそうなもの」「形を変えれば実現できそうなこと」を洗い出しました。大人たちは口を出すことなく、子どもたちだけで議論が進められていきます。
「悪口がない公園」「体験型の屋台だけが集まるお祭り」「AIが搭載された掲示板を使っての市民集会」など、すぐにでも実現できそうなアイデアの数々が、未来の滑川市にどう影響を与えていくのか。聞いている大人たちもたびたびうなずいており、反応がよくてうれしかったです。
サミットの様子を見守っていた水野達夫滑川市長からは、講評をもらいました。滑川生まれ滑川育ちの市長も、滑川をよくするため日々尽力しています。大人目線で子どもたちに問いかけながらも、数々のすばらしい提案に感銘を受けているようでした。
サマースクールでの体験を経て、2か月ぶりの再会。最初はうまく発表できるか不安でしたが、皆最後まで立派にやり遂げてくれました。最後は円になって1人ずつ思いを語り、「チェックアウト!」のかけ声で子どもサミットを締めくくります。
年齢こそ違えど、分け隔てなく接してくれた子どもたち。まずは簡単なところから、楽しいことから始めようと案を出してくれたその思いを引き継ぎ、次は我々が実行に移すことで、一緒に滑川市の未来をつくっていけたらなと思いました。彼らの幸せと、これからのワクワクを願って──チェックアウト!
<取材・文・撮影/田中啓悟>
【田中啓悟さん】
大阪府大阪市出身。大阪の専門学校を卒業後、WEBライターとしてデジタルゲーム関連の記事を執筆。その後、「訪れたことがない」という理由で富山県に移住し、地域おこし協力隊として、空き家バンクの運用・空き家の利活用をメインに、地域の魅力発信やイベントの企画に携わっている。