熊本産山村で冠づくりのワークショップ。身近な花や枝を使って癒されるひとときに

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(59)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、大分との県境にある熊本県産山村(うぶやまむら)で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は冠づくりのワークショップの様子をレポート。

お客さんからもらった花冠をかぶって営業

女性が鮮やかな黄色の花冠をかぶっている
以前いただいた三俣の花の冠

 草原や山々に囲まれた阿蘇地区の奥に位置する産山村。そのさらに奥に位置する私たちのお店、asoうぶやまキュッフェ。そんな山奥で冬の樹木を使った冠づくりのワークショップを開催しました。

 きっかけは、お店のお客様のYさんから手づくりの花冠をプレゼントしていただいたこと。もらったその日、花冠をかぶりながら営業をしてみました。

 街なかで見かけたらまぁ変わった人ですよね。ところが、かぶってみたところ、とってもよかったのです! 頭にたまった熱をほんのり冷たい草花が吸い取ってくれる感覚。自分の体温で温まった冠からは花や葉の香りが漂い、頭上の冠の静かなしっとりとした重みが心地いい。はじめは冠が落ちないか気になっていましたが、すぐに慣れてその存在を忘れるほど。

 そもそも、頭に草花を編み込んだ冠をかぶったことありますか? そんなのマンガか海外の映画でしか見たことないですよね? ほとんどの人は頭に花冠なんて、経験がないはず。私も産山村に来るまでは、そんな経験はありませんでした。

植物の香りに癒されるワークショップ

テーブルの上に並んだ樹木を使って女性たちが作業をしていている
参加者のみなさんはニコニコしながら制作

 あまりの心地よさにワークショップを開催したいと思い、Yさんに講師をお願いしたところ、気持ちよく引き受けてくれました。

 冠とリースは同じようにも見えます。確かに姿形は似ていますが、冠は頭上に乗せたりかぶったりするもので、リースは壁やドアに飾るもの。これ、似て非なるものだと、以前かぶってみて実感していました。

 ということで、今回は完成した冠を各自頭にかぶって、ティーパーティをするところまでをワークショップとして企画しました。

テーブルの上に花や樹木の枝が置かれている
準備の段階から樹木のよい香りが広がる

 講師のYさんが1か月近く散策をしながら探してくれた、杉やヒノキやアスナロから珍しいブルーアイスや当日朝に摘んできてくれた山茶花のお花たち。触る指先からそれぞれの植物の香りがしてきてセラピー効果も感じます!!

 最初に基本のつくり方を教えてもらった後、参加者のみなさんはニコニコ、ニヤニヤしながら冠つくりに没頭。

 同じ材料を使っているにも関わらずデザインは十人十色、人それぞれです。たとえば同じヒノキを選んでも、どのくらいのボリュームで使うかで印象も変わってきますし、枝の長さによってかぶった際に頭にどう垂れてくるのかで雰囲気も異なってきます。

 また葉の緑も樹木によってつややかな緑、細くて繊細な印象の緑、シルバーがかったクールな緑、ぽってりとした厚みを感じる緑と、さまざまな緑のグラデーションが美しい。そこにポイントポイントでカズラの実や杉ボックリやマユミを入れるとまた印象が変わるのです。

つくった冠をかぶってティーパーティ

樹木の冠をかぶった女性
つくった樹木の冠を頭にのせてティーパーティーの準備

 あっという間に1時間が過ぎ、各自できあがった冠を頭にのせてのティーパーティの時間に。

 デザートはasoうぶやまキュッフェのオーガニックチョコ入りジンジャーシフォンケーキと、この日のためにつくったオリジナルハーブティー。こちらも香りが楽しめる組み合わせ。ハーブティーは今回の冠をイメージして畑で栽培しているシュロ、山茶花、クロモジを乾燥させたブレンドティーにしました。

ハーブティーが入っている薄い木製の円形容器
お土産用につくったハーブティー。「FUYU NO ASA」と名づけた
 
 参加者のみなさんからは「本当に本当に楽しい!」「樹木の香りにも癒され、完成した冠にもさらに癒された」「ずっとつくっていたい!」「自分たちの住んでいるところが豊かなんだとあらためて思った」との感想が。そして講師のYさんからは「皆さん少女みたいな乙女な顔になるね」とのお言葉いただきました!

 久しぶりに、里山ならではの取り組みのワークショップを開催した移住9年目の冬でした。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(59)]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。