移住先の人づき合い。最初は慎重に、地元の人の言動を理解して

[憧れの田舎暮らしを母子でスタート]

移住を考える人にとって、現地での人間関係は本当に気になるもの。どうやったら円滑に地元の人と仲よくなれるのか? 当時2歳のお子さんと母子2人で(夫は仕事の都合で都心を離れられず)岡山県和気郡和気町(わけちょう)に移り住んだ祥子さんに、移住先探しの基準と、移住先での人づき合いについて教えてもらいました

移住先探しは選択基準を明確に

花が咲く川沿いの道
初夏に向かう時期、お気に入りの川沿いの景色

 緊急事態も解除され、初夏を迎えた和気町は草木の緑の勢いが増して、晴れた日の心地よさはなんともいえません。
 
 今回は、移住先を決めるうえで、私が外せないポイントとしていた「人づき合い」について、お話したいと思います。移住に限らず、初めての場所で暮らすとなると、近所づき合い、人づき合いは気になるところですよね。とくに都会と田舎の場合、人間関係のつくられ方が違うイメージがあって、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
 
 私は2年前、都会から田舎へ母子で移住すると決めて移住先を検討していたとき、以下の項目を選択基準としました。

1.移住者を受け入れている実績がある
2.地元の人と移住者が仲よく暮らしている
3.母子でも受け入れていて、孤立していない

 よく移住フェアに行くと、どこも大歓迎で「来て!来て!」 と誘われるので、すごくモテているのではないかと思いますが…錯覚です(苦笑)。フェアだから、どこもPRをしているので当然なのですが、PRポイントだけを見て選んでいるといつまでも決まりません。大事なのは、その地域で現実的に暮らせるか、というところです。

 フェアでは、豊かな自然や食環境に目移りしそうになるのをこらえながら、上記3つのことを訪ねてみます。すると自ずと絞られてきます。とくに母子で移住となると、田舎はファミリー中心、さらに2世帯も多いので、子どもが小さいとなると「厳しいと思います…」という回答がほとんどでした。

 その点でオールクリアだったのが、いま私の住む和気町でした。出合いは移住フェアではなくて、山手線の中吊りだったのですが(笑)。メールで問い合わせをしたとき、「母子なのですが、大丈夫でしょうか?」と聞いたら、即、「何人かいるので大丈夫ですよ!」と明るい返答をいただき、すぐ下見に行ってとてもいい印象をもったのです。

移住先の人づき合いの問題は、地域性より個人の性格

水田で田植えの手伝い
昨年は、この時期に田植えのお手伝いをさせてもらいました

 どんな人が移住しているのかは分かったけれど、次に気になるのは地元の人たちです。住んでまだ2年弱ではありますが、私の和気町への印象は、「晴れの国」ならではの明るさと大らかさがあり、温かく前向きで、子どもにとてもとてもやさしい! です。

 子どもに対してはだれにでも本当に自分の孫のように接してくれます。その温かさに感動して何度も泣きそうになりました。都会だと、マナーを守れない子どもには冷たい扱いですが、こちらでは少々悪ガキでも自分ごとのように温かく接してくれます。

 一方の気になる点については、私自身も周りの移住者に聞いても、地元の人とトラブルになったという話は聞きません。問題になるとしても、地域性というより個人の性格によるものだと思います。

 あえてここが気になる人はいるかもしれないというところをあげるとすると、方言の特徴から口調をややキツく感じる人がいるかもしれないこと、比較的さっぱりしている人が多いように思うので、ドライと感じる人もいそうということくらいです。

 また、これはコミュニティが狭い田舎あるあるかもしれませんが、出る杭は打たれるといいますか、目立つことをよしとしない、同調圧力が強い、世間体を気にする、まわりの言動に合わせて行動する、うわさ好きで悪いうわさはすぐ回る、というところは、少なからずあると思います。

先輩移住者に聞いた、田舎での人づきあいのポイント

稲が植えられた棚田
少し離れた場所にある棚田。和気町は米どころで、米農家さんも多いのです。

 たとえば過去には、私のSNSの投稿を見て「いろいろ出かけて優雅ね」とか、「子どもを自分の都合で連れ回してかわいそう」などと言われたり、私が「先祖は○○○です」と自慢して歩いているという、身に覚えのないうわさが耳に入ったりしました。思い悩んだこともありますが、個人の印象は、よいも悪いも人それぞれだろうという結論に至り、ある程度は気をつけますが、あまり気にせず、自分の信念に従って行動することが大事だと思って生活するようになりました。

 先輩移住者に人づき合いのアドバイスとしていただいた「気をつけたいポイント」が物語っているので紹介します。

・移住してあげるというようなお客さん目線
・都会風を吹かせること
・はじめましてで学歴などを話すこと
・高級な持ち物などで目立つこと

 まさにその通りで、質素が好まれる空気感からか、自動車ひとつとっても軽自動車でないと目立ちます。これも田舎あるあるかなと思いますが、町内会や地区掃除、消防団への参加は必須。
 
 不在の際、近所の人に「雨が降ってきたから洗濯物を取り込んでおいたよ」という親切を受けることは普通。あまりカギを閉める習慣がないのです。不用心と思われるかもしれませんが、洗濯物に気づくくらいなので、常に人の目があるから逆に安心なのかもしれません。

 経験からの結論としては、移住先での人づき合いは、地元の人の考え方や言動の傾向をつかむまで、最初は少し慎重に、ただ構えすぎず、焦らず、ある程度は割りきりながら、徐々に慣れていくことが大切。私の場合はおかげさまで大きな問題なく、とても快適に幸せに暮らしていけていると、実感を込めてお伝えしたいと思います。

<写真・文/祥子>

[憧れの田舎暮らしを母子でスタート 第5回]

祥子さん
40代のワーキングマザー。当時2歳だった娘と東京から岡山県和気郡和気町に移住し、Webディレクターとして東京の仕事をリモートワークをしながら、地元でパソコンインストラクター、月1回パン教室も開催。趣味はフルート、フラダンス。
岡山県和気町移住サイトWAKESUM