観光ホスピタリティコンサルタントとして国内外のあらゆる地に足を運んできた石田宜久さん。そんな観光のプロが綴る「ふるさと旅を10倍楽しくする」方法とは？ 今回は、旅で必ずと言っていいほど訪れることになる駅にまつわる楽しみ方です。
普段何気なく使っている駅にも「百選」がある！
以前、富士山を望むことのできる場所やエリアを選定した「関東の富士見百景」を紹介しましたが、日常生活に欠かせない 駅にも百選が存在することをご存知でしょうか？ 日本の国土交通省・地方運輸局ごとに選定されていて、現在では東北・関東・中部・近畿の地区ごとに百選が存在します。あなたが普段使っている駅が百選に選ばれているかもしれませんよ。
観光コンサルタントとして日頃からさまざまな地域を巡っていますが、その度にお世話になるのがその地域の駅です。近年では多くの地域で再開発の一環として駅舎のリニューアルが行われていますが、どこも似たり寄ったりのデザインとなっていることに私は懸念を感じています。
そんな時代だからこそ、百選を選定することで、地域の魅力にマッチした面白味のある駅が誕生したり、残されているのは非常に嬉しいムーブメントだと思っています。地域の特性を反映した駅であったり、優れたデザイン性をもつ駅であったりと、選定された駅舎はどれも個性豊かです。気になる方はぜひ調べてみてください。
アニメやスマホゲームの舞台としても親しまれる「西武秩父駅」
今回ご紹介するのは、「関東の駅百選」に認定されている「西武秩父駅」です。西武線の終点駅であり、秩父市や秩父地方を巡るための玄関口ともいえるこの駅。毎年12月の「秩父夜祭」開催時や紅葉の時期には毎年多くの人で賑わい、最近では女優の土屋太鳳さんのCM効果もあって利用客数も増加傾向にあるそうです。
さらには、NHK「ブラタモリ」のロケが行われたり、人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の舞台としても人気を博しています。また、コロプラが運営するスマホゲーム「白猫プロジェクト」では現在、「秩父コラボイベント」が開催されています。秩父夜祭や武甲山がゲーム内に登場するなか、この特徴的な西武秩父駅もゲーム内で見事に再現され、ゲームの世界に見事に溶け込んでいます。
この西武秩父駅で特に注目すべきは、駅としては異例の「グッドデザイン賞（’17年）」を受賞していること。文房具や家電などで受賞を示す「G」マークを見かけたこともあるのではないでしょうか？ 公式サイトによると、このGマークの認知度は87.7％にもおよび、58.5％もの生活者がGマークの付いている商品に対して魅力を感じ、購入時の選択に影響を受けているとしています。つまり、それだけ好イメージを与える効果があるのですから、建物が受賞しているとなれば「どんな形になっているだろう!?」とワクワクしませんか？
また、駅構内の商業施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」のユネスコ無形文化遺産に登録された「秩父夜祭」の屋台をモチーフにしたデザインも一見の価値ありです。お土産エリア「ちちぶみやげ市」では秩父土産を買い揃えることができ、飲食エリアでは秩父名物を堪能、イベントエリアを挟んで温泉エリアでは源泉掛け流し、露天風呂と内風呂や岩風呂なども楽しむことができます。
帰りの電車に乗る前にひとっ風呂、あるいは仮眠・宿泊ができるラウンジもあるので、秩父での疲れを癒しながら電車を待つ、なんてこともできます。全体的に木材が多く使われている印象で、自然の多い秩父にマッチしていて、私と同様にカメラを向ける方が多かったのを覚えています。
このように、シンボル的な存在があるというのは旅行する際のポイントにもなりますよね。ゲームやアニメの舞台になっていて作品でその土地や建物に親しんでいれば、実物をみた時の感動も人一倍。とくに、駅というのは旅の玄関口になるスポットですから、駅ひとつとっても旅の思い出に大きな影響を与えるものになります
旅のプランを組む際、駅にこだわりを持ってみるのも面白いかもしれませんよ。
観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi（ディシィ）代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ
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