八幡神社の総本宮、大分「宇佐神宮」はご利益万能のパワースポット

大分県北部に位置する国東(くにさき)半島には、歴史的遺産が多数点在しています。なかでもパワースポット好きには絶対に外せないのが、古代から現在まで歴史と人々の信仰が脈々と続く八幡神社の総本宮、「宇佐神宮」。開運、ご利益を求めてお参りに行ってきました。

宇佐神宮は全国の八幡神社の総本宮

宇佐神宮の外観

 日本全国にまつられている神社。各都道府県でもっとも社格が高いとされる一宮(いちのみや)から、地域の氏神様や鎮守様まで合わせると、8万8000社以上もあるそうです(諸説あり。小さな社(やしろ)や祠(ほこら)まで合わせると、約14万~15万社という説もあります)。
 ちなみに、全国にコンビニは約5万5000店、歯科医院は約6万8000施設、郵便局は約2万4000局あるそう。

 そうした神社のなかでも、総数で1、2を争うのが(別に競争しているわけではないですが)八幡神社と稲荷神社です。その八幡神社の総本宮が大分県宇佐市に鎮座します「宇佐神宮」です。

 つまり、日本全国にある八幡神社や八幡宮の発祥の地、大元がこの宇佐神宮ということです(なお、宇佐神宮のホームページには、全国の神社の数は約11万社、八幡様がもっとも多く、4万600社あまりと記載されています)。神社好きであれば、一度は訪れたいパワースポットです。

神仏習合の発祥地でもある宇佐神宮

宇佐神宮御由緒

 宇佐神宮は大分空港からクルマで約1時間、宇佐市内に入って国道10号線を進み、広大なイチイガシ(天然記念物)と楠の杜が見えてくると、そこが宇佐神宮です。別府温泉に観光後なら、鉄道の場合はJR日豊本線の別府駅から宇佐駅まで特急「ソニック」で約30分、宇佐駅から宇佐神宮まではタクシーで10分ほどで到着します。

 宇佐神宮の歴史は古く、御由来書によれば、第29代欽明天皇の時代の571年、八幡大神(応神天皇)のご神霊が3歳の童子の姿となってはじめて宇佐の地に示顕(じげん)され、その後の725年(神亀2年)、現在の地に社殿を造立(ぞうりゅう)したのが始まりとのこと。

 古代からの神仏混淆(しんぶつこんこう)の信仰の場所で、日本ではじめて神宮寺(弥勒寺)が建立された「神仏習合(しんぶつしゅうごう)発祥の地」でもあるのです。明治期までは境内に大規模な寺院があったのですが、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)のため今は跡地のみが残っています。

金運から家内安全、国家安泰まで万能のご利益

宇佐神宮の入り口

 大鳥居をくぐり、長い参道を歩いていくと、左右に鳥居がある分岐点が見えてきます。宇佐神宮には「上宮(じょうぐう)」と「下宮(げぐう)」があり、古くから「下宮参らにゃ片参り」と言われているそう。まず左に進んで上宮にお参りしてから、その帰りに下宮のお参りするのが習わしです。

 ちなみに、上宮と下宮には同じ神様がおまつりされていますが、上宮は国家鎮護の神、下宮は民衆の神で私たち一人ひとりの守護をしてくださるという違いがあるのだそうです。

 鮮やかな朱色とこげ茶色の美しいコントラストに、しばし見ほれる壮麗な上宮の社殿は国宝に指定されています。三つの御殿が並んでいて、向かって左から一之御殿、二之御殿、三之御殿となっていて、それぞれの御祭神は八幡大神(はちまんおおかみ)、比売大神(ひめおおかみ)、神功皇后(じんぐうこうごう)。

 主祭神は八幡大神(誉田別尊=応神天皇)なのですが、中央に比売大神(宗像三女神=多岐津姫命・市杵島姫命・多紀理姫命)がまつられているのは謎だといいます。ただ、はるか昔の神代、この宇佐の地に比売大神が降臨されたことが『日本書紀』に記されているため、古代からの地主神として中央に大切にお祀りしているのかもしれません。

お詣りしている様子

 宇佐神宮の参拝では、一般的な神社での「二拝二拍手一拝」と違って、「二拝四拍手一拝」です。出雲大社(島根県)や弥彦神社(新潟県)でも同じ形式ですが、その理由はよくわかっていないといいます。

 それぞれの神様のご神徳(ご利益)に合わせて手を合わせました。八幡大神には、国家安泰と勝負運、仕事運、出世、厄除け、開運を。比売大神には、交通安全、航海安全、金運、芸能上達を。神功皇后には、家内安全や縁結び、安産、子育て、教育を。

 宇佐神宮では、人間のあらゆるお願いにご利益がいただけると言えそうです。謎に彩られた宇佐神宮の古(いにしえ)のロマンに思いをはせながら、「家内安全、無病息災。また、ふたたび大分に元気に遊びに来られますように」と手を合わせました。ご神徳が万能だからこそ八幡信仰が全国に広まっていったのかもしれませんね。

宇佐神宮4つのご利益スポット

宇佐神宮境内図

 今回は、宇佐神宮の神職の権禰宜(ごんねぎ)である山本宗龍さんに境内を案内していただきました。

夫婦石

 1つめのご利益スポットは、良縁です。上宮への鳥居をくぐって本殿に向かう石畳の、右側に若宮神社(厄除けの神様)が見えるあたりに、大きめの三角形の石が寄り添うように並んでいるのが「夫婦石」。夫婦やカップルは手をつないで一緒に踏むと幸せに、独身の人は両足で踏むと良縁に恵まれるそうです。しっかり石を踏みしめました。

ご神木

 2つめのご利益スポットは、上宮の三之御殿前にどっしりと立っている樹齢800年といわれる御神木です。高さ約30m、幹回り約5mの立派な「大楠」です。御神木に触れながら1周すると、ご利益をいただけます。

 3つめは、上宮の裏手、境内の中央にあるのが菱形池。そのほとりには御霊水が湧き出る聖地があります。そもそも、八幡大神が最初に現れたのがこの場所で、神秘的な空気に身が引き締まる思いがします。ありがたい御霊水をいただけますが、そのままではなく煮沸してから飲むようにしましょう。

願掛け地蔵

 4つ目として忘れてはいけないのが、一生に一度だけ願いをかなえてくれる「願掛け地蔵」。ただし、願いを伝える際は「誰にも見られてはいけない」という掟があるのだそう。弥勒寺跡の裏手にいらっしゃいます。

 宇佐神宮は創建後、伊勢神宮に次ぐ皇室の宗廟(そうびょう)として信仰されて繁栄し、神仏の霊験あらたかなことで全国に八幡信仰が広がっていきました。あなたが生まれた土地や現在住んでいる町に八幡神社があるなら、そのルーツを辿りに大分県の宇佐市にある宇佐神宮を訪れてみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見があるはずです。

<取材・文/脇谷美佳子>
<取材協力/宇佐神宮>

脇谷 美佳子(わきや・みかこ)さん
東京都狛江市在住。秋田県湯沢市出身のフリーの「おばこ」ライター(おばこ=娘っこ)。2児の母。15年ほど前から、みそづくりと梅干しづくりを毎年行っている。好物は、秋田名物のハタハタのぶりっこ(たまご)、稲庭うどん、いぶりがっこ、きりたんぽ鍋、石孫のみそ。