観光ホスピタリティコンサルタントとして国内外のあらゆる地に足を運んできた石田宜久さん。そんな観光のプロが綴る「ふるさと旅を10倍楽しくする」方法とは? 今回は、先入観に囚われない“旅先での新たな魅力探し”のコツについてです。
温泉、食事、観光地……旅の目的、どうやって決めてますか?
旅の計画をする際、まず最初に「どこに」「何をしにいくか」を考えると思います。目標を設定するのは、旅の第一ステップですよね。では、その目標はどのように決めていますか?
たとえば「温泉に行きたい!」となれば、有名温泉地の名前が頭に浮かび、そのなかで季節感や宿の値段などを照らし合わせながら希望にマッチしたものを選択すると思います。ただほとんどの場合、これまで見てきたテレビの旅番組や自分自身の経験や知識、あるいは最近目にした旅雑誌による情報がベースとなり、そうした先入観によって行く場所が定まるのが常ではないでしょうか。
断言します。それではもったいない!!
まだ多くの人には知られていないけど、その地域で密かに盛り上がっている“核心”を知ると、旅はもっと面白く、思いがけない発見があるものになるのです。
旅先の地元民に愛される“隠れソウルフード”を堪能
観光地には「観光客向け商品」というものが存在します。その地域を訪れる人たちに向けて、自治体や地元のお店が自信を持ってお届けできる名産や食べ物を売っています。ただし、それらが「今もなお地元民にも愛され続ける名物」とは言いがたいケースも出てきています。
たとえば、北海道の名物として認知されているジンギスカン。じつは地元の人が普段からよく食べている県民食というよりは、地元の人にとっても“ちょっと贅沢な食事”という位置付けです。以前は北海道のどこの家庭にもジンギスカン鍋があったそうですが、近年は“ジンギスカン離れ”も進み、必ずしもそうではないとか。私の北海道に住む友人にいたっては、「最新の北海道名物はジンギスカンではなく、函館の塩ラーメンだ」とまで言っていました。
確かに最近の北海道の旅行雑誌をめくって見ると、ジンギスカンよりも「札幌・函館・旭川の北海道三大ラーメン」と称して、徐々にラーメン特集が多くなってきています。実際に、北海道全域でラーメンが「北海道遺産」として選定されています。
ほかにも、高知県の「たたき」と聞けばカツオを思い浮かべる人が多いでしょう。ところが私が観光コンサルタントとしてお仕事で高知に訪れた際、当時の役所担当者の方がオススメしてくれたのは「ウツボのたたき」。カツオと同じく地域の味として親しまれていて、ウツボを専門に漁をしている漁師さんもいるほど。高知ではスーパーなどでも普通にウツボが売られていて、唐揚げや天ぷらでも食されています。まだまだ全国的な知名度はありませんが、身は鶏肉のようにしっかりしていて、皮の内側のコラーゲン部分と合わせて大変おいしかったのを覚えています。県外ではなかなかお目にかかれない、珍しいものと出会うことができたことで深く印象に残っています。
先入観の先に、オリジナルの旅がある
では、こうした“新たなる魅力に触れる”旅のネタをどうやって探せばいいのでしょう?
私の場合は、仕事の関係であれば地元の人が身近にいるので聞いてしまいます。あるいは観光案内所の係の方に聞いたり、思い切ってお土産屋さんの店員さんに聞いたり……。行き当たりばったりでお店に飛び込んで、お店の人のオススメに乗っかるなんてことも、旅の思い出作りにはぴったりです。
また、最近ではその地域に深く密着したガイドブック「街ラブ本」も売られていますので、人に聞くのが億劫だったり恥ずかしいなんてときには、いっそのこと頼ってしまってもいいかもしれません(この「街ラブ本」については、今後この連載で触れたいと思います)。
長年の情報の蓄積によって作られた先入観というのは誰にでもあります。ただ、観光地も家電や医療などと同じで日々進化・発展しています。その地域の新たな魅力も日々更新されているということです。それらを探し、見つけに行くことで、他にはないオリジナルな旅をすることができるかもしれません。自分でその地域の知られざる魅力を発見したときの喜びはひとしお。「この地域のここがスゴイ!」とみずから発見した魅力を自慢してみてはいかがでしょうか?
観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi(ディシィ)代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ
https://www.dithi.net/