「地域活性化」「健康」「文化・アート」「観光」「環境」「防災」……多岐にわたるテーマを横断的に結びつけ、全国各地のプロジェクトに参画するソーシャルビジネスプロデューサーの大羽昭仁さん。全国各地を見てきた彼が考える、未来の「地域が稼ぐ観光」のあり方とは?
初めまして。「未来づくりカンパニー」の大羽昭仁です。私が普段携わっている全国各地のプロジェクトで見聞きしたことからご当地グルメ情報まで、いろいろなことをここで書かせていただきたいと思っていますが、まずはご挨拶と人となりを知ってもらうために、私が考える「これからの地方創生のあり方」について書かせていただきたいと思います。
「移住者は増えているけど、人口減」地方のジレンマ
先日、ある記事を見てショックを受けました。「国全体が地方創生のためのさまざまなアクションをしているのに、東京一極集中は進んでいる」というニュースです。
どうやら、首都圏への転入者は相変わらず増え続けているようです。一方、ある県の移住プロモーションについて調べていたところ、「移住者は増えているのに、社会減(※1)の数が横ばい」という事実を発見しました。本来、移住者が増えれば社会減が減り社会増へと転じてもいいのですが、若者がより都市圏へと転出しているのか、移住者が定住しないのか、その理由をちゃんと調べてみることが必要かもしれません。
(※1)社会減:その自治体に入ってきた人の数より、出ていった人の数が多い状態。
地方の人口減少に対しての移住定住施策、地域おこし協力隊、観光促進……。地方創生を実現するための施策に対して、国は地方創生加速化金をはじめとするさまざまな補助金で支援したにも関わらず、あまり効果がなかったのでしょうか? それとも、何もしなければもっと早いスピードで転出者が増え、人口が減少していたのでしょうか? 前職の博報堂時代から地域に関わるさまざまなプロジェクトに参画してきた経験から、その原因を考えてみたいと思います。
スマホが地方に住む人々の価値観を変えた
いつも僕が地域に関わる社会課題について話すとき、最初に話すのが「スマホの普及」による環境の急激な変化です。とくに’15年前後がその節目と認識しています。
老若男女がスマホを持ち、ネットやSNSで情報を得る。さらには、ネットで自由に買い物もできる。そして、今ではスマホさえあれば決済まで行えるという進化です。これは単なる所有物の変化ではなく、人々の買い物行動や思想、ライフスタイルまで変えてしまいました。
ところが、その変化は「その地域で生まれ育った若者が、大人になってもその地域に住み続ける」ことを良しとする地方創生の観点から見ると逆効果だったかもしれません。とにかく社会は変化していて自分の生活も変化しているのだから、変化に対応できる環境に身をおくべきではと不安に感じてしまう。さらに、地方のほうがさまざまな課題にあふれ閉塞感が大きいため、より不安に感じて都会へと向かう、というのが私の仮説です。そんな現状に置かれた地方のために変化しないといけないのが行政機関ですが、その多くは前例踏襲的な思考をもったままのようです。