創業者支援でヒット商品をつくった女性と考える、ふるさと納税の意義

[元超公務員の地方元気塾]

 高知県須崎市の公式マスコットキャラクター「しんじょう君」とともに、須崎市のPR活動を行っている「元超公務員」の守時健さん。今回はふるさと納税がきっかけで長崎県平戸市で起業した小値賀さんと、生産者目線でふるさと納税を語りました。

ふるさと納税の創業者支援制度を活用して起業

小値賀さん

 ふるさと納税について今回は生産者の方にお話を聞いてみます。専業主婦だったのにふるさと納税を通じて起業、国内外に販路を開拓する小値賀 布美華(おぢか ふみか)さんです!

小値賀さん:こんにちわー。

守時:こんにちは。小値賀さんは長崎県平戸市でふるさと納税の創業支援制度(ふるさと納税の寄付金を活用して創業を支援する平戸市の制度)を活用して起業されたということですが、どんな流れかお聞きしていいですか?

小値賀さん:私、平戸大好きなんですよね。

守時:ふむ

小値賀さん:25歳で結婚。26歳で出産して専業主婦をやってたんですけど、平戸ってすごく子育ての環境もいいし、星空や海、食べ物もおいしい。生きてるだけで幸せってくらいなんです。ただ子育てするようになって、やっぱり平戸の人口減少や、町がだんだん寂れて行くのを目の当たりにしていて…。

守時:まあ地方はどこもそうですよね

小値賀さん:そこで初めて自分の人生を本気で考えたんですよね。平戸は素晴らしい、ここでずっと暮らしたい。だけど、仕事が少ない。ついでに自分の子どもも平戸ではきっと仕事がない、選択肢の幅がない。って考たときに「そうだ! 仕事は自分でつくろう!」って思ったんですよね。

守時:それが26歳のときですか?

小値賀さん:はい。

守時:すさまじく立派ですね…(私の26歳の頃って、1日中「酔っ払ってる」か「二日酔い」のどちらかの毎日だったな)

小値賀さん:そして仕事にするなら何かなって、いろいろなことをSNSで発信。エステやパンをつくってみたり、スイーツをつくって投稿したり。誰かが喜ぶことは何かってSNSで発信していたら一番スイーツが反応よかったんですね。

 それと、別軸で、私平戸が大好きなんですが、全然平戸ってブランディングできていないんですよ。ネットで発信できていない、デジタルに対応できてなかった。やっぱり、高齢者にはそれが難しいんですよね。そこで平戸に残った若者の自分がやろうと思ったんです

子育て真っ最中に500万円補助してもらって店舗をスタート

平戸市

守時:突然の謎の使命感ですね。

小値賀さん:そう(笑)謎の使命感で。専業主婦だし、お金がない。事業の内容には戦略も自信もあったんですが、設備とかの先行投資がいるんですよ。1000万円くらい。無理じゃん!!専業主婦だし!!

 一方で、平戸市役所ではふるさと納税が黒瀬さん(※)の代になり、寄付額が日本一になったので創業支援制度ができた。それを平戸市のfacebookで見たんですよね。子育て真っ最中で保育園とかいってたけど、補助金って年度が変わるとどうなるかわからないから、構想はあったし、無理してでも今年始めよう。そう思って連絡してみたんです。

※編集部注:黒瀬啓介さん
2000年に平戸市役所に入庁。2012年から移住定住推進業務とふるさと納税を担当し、2014年に寄附金額日本一に。2019年3月に平戸市役所を退職し、現在はLOCUS BRiDGE 代表。

守時:おー!そこで黒瀬さんが担当してたふるさと納税の創業支援につながるんですね。

小値賀さん:そうなんです! そして、また創業支援の制度がよかった。起業とはなんたるかを教えてくれる起業塾、中小企業診断士の相談が使い放題。そこでデータをとりまくったんですね。

 人口推移とか世帯収入とか人口流入とか観光客はどんな属性か、スイーツの売り上げシェアを調べて、平戸の中では競争しないことにしよう。平戸の外で勝負して平戸にお金を持ってこよう!とか、外に向かって平戸をPRしよう!それがみんなのwinだ!とか。そして、500万円を補助してもらい店舗をスタート。ECでのスイーツを販売を開始しました。

 ついでにふるさと納税にも出展しようかなとつくったのが、後に6万本のヒットとなる平戸のキャラメルと生乳を使ったキャラメルブリュレです。これがイオン九州で売られるようになったり、大手通販サイトでランキングにのったり、ヤマト運輸のカタログに載って売れまくったんですよ。

初年度からスタッフ2人で1000万円の売り上げを達成

キャラメルブリュレ
6万本のヒットとなったキャラメルブリュレ

守時:平戸にめちゃくちゃお金落としてるじゃないですか!! 

小値賀さん:運送会社のヤマトも超儲かってると思います。

守時:確かに(笑)。これって小値賀さんが製造してるんですか?

小値賀さん:実際の製造現場では漁師の奥さん達を雇用し、つくってもらってます。パティシエしかつくれないようなものをつくるべきではない。そもそも女性って超優秀なんですよ。マルチタスクもできるし、ミスもほとんどない、それを活用しない手はない。

守時:雇用も生み出してる!!

小値賀さん:そうなんです。そしてそのほかもいろいろなタルト類や、パンケーキミックスなどのヒット商品を生み出して、初年度からスタッフ2人で1000万円の売り上げを達成しました。今は起業から4年で海外での商品展開も進んでいます。

 田舎の何もないとこ、というかむしろマイナスの「専業主婦」プラス「誰も来ない山奥」で起業し、こんな経済をつくったんですけど、これって起業しなかったら0だったわけなんですよね。

 この経済循環も生まれてなかったし、いろんなところで賞をとったヒット商品も生まれなかった。でも、これはふるさと納税の創業支援があったから、このスピードでできた

賞状

守時:ふるさと納税でいただいた寄付を活用して、さらにそれが町を豊かにするんですね。

小値賀さん:そうなんです。私たちのスイーツを返礼品で出し続ける理由は、「みなさんの寄付は今も経済を循環させて、新しい展開を生み、新しいブランドを生み、新しい商品を生み出している」という証明なんです。寄付者にいただいた寄付なので、「できない」とか言えないんです。