シャキッとほんのり甘い。山口の野菜「はなっこりー」のおいしい食べ方

山口県のスーパーには、秋から冬にかけて菜の花のような形をした野菜「はなっこりー」が並びます。緑の野菜が少なくなる冬季にどんな料理にも使いやすいはなっこりーは、山口県民にとってはおなじみの万能な地場野菜。キッズ食育トレーナーの藤原真希さんが教えてくれました。

はなっこりーは中国野菜とブロッコリーのかけ合わせ

ハナッコリー

 はなっこりーは中国野菜のサイシンとブロッコリーをかけ合わせてつくられた山口県オリジナル野菜です。1996年、山口県農林総合技術センター(旧:山口県農業試験場)で95通りの組み合わせのなかから選抜され誕生しました。

 ブロッコリーのようなつぼみと、サイシンから受け継いだ細長い茎は、シャキッとして歯ごたえがよく、ほんのりとした甘味とクセのない味が特徴です。花も茎も葉っぱもまるごと全部食べることができ、捨てるところがありません。

売られているパッケージ

 栄養面ではビタミン類やカルシウムなど多く含み、とくにビタミンCは、もともと数値の高いブロッコリーよりもさらに多く含んでいます。油との相性もよく、炒め物でも焼き物でも揚げ物でも、大抵の料理に使うことができるので、万能野菜として消費者から重宝されています。

生産者第一に開発されたつくりやすい野菜

畑の様子

 高齢化の進む生産農家では労働力不足は深刻な問題です。そんななか、はなっこりーは「お年寄りや女性でも簡単につくれる、軽くて収穫が楽な野菜」を目指して開発されました。

 定植しやすく軽いので、その他の重量野菜に比べて栽培や収穫の負担も比較的少ないのが特徴です。誕生以降も生産農家の意見を聞きながら改良を重ねることで、11月~6月までと長期間にわたり収穫できるようになり、収穫量も安定するようになりました。

畑で育つハナッコリー

 発祥地であり県内最大生産地域である山口市名田島で、試験栽培から携わっている河村喜子さんは、「はなっこりーは1回収穫したら終わりではなく、1つの苗から10本以上、採れるのも魅力のひとつ」とおっしゃっています。

給食メニューでもおなじみ。子どもにも人気

畑とハナッコリー

 ハナッコリーは子どもにも食べやすい野菜です。学校給食では、あえ物やサラダ、スープとして登場し、授業で植えつけから収穫体験をすることで、食料生産についての理解を深める学習を行う小学校もあります。

 緑が濃く、つぼみがギュッと締まっていて、茎がしっかりしたものがおいしいとされています。つぼみが開いても食べられますが、栄養がとられ、若干の苦味が出るので、新鮮なうちに消費するのがおすすめ。歯ごたえを損なわないように、さっとゆでただけでもおいしくいただけます。

おすすめのレシピを3点、ご紹介します。

●生産農家一押しの「はなっこりーのかき揚げ風」
(JA全農やまぐち・はなっこりーレシピ参照)

【材料】4人分
はなっこりー 200g
天ぷら粉 1カップ
冷水 100g
むきエビ 100g
揚げ油 適量

【つくり方】
① はなっこりーをさっと塩ゆでし、かるく絞って5cmの長さに切る。
② 天ぷら粉と冷水を合わせ、揚げ衣を作る。
③ はなっこりーとエビを②に入れ、180℃の温度で色よく揚げる。

ハナッコリーのかき揚げ風

●男性や子どもにも人気「はなっこりーのベーコン巻き」
(JA全農やまぐち・はなっこりーレシピ参照)

【材料】4人分
はなっこりー 8本
ベーコン 4枚
塩・コショウ 少々
サラダ油 小さじ1

【つくり方】
① はなっこりーをさっと塩ゆでし、かるく絞ってベーコンの幅に合わせて切る。
② ①のはなっこりーをベーコンで巻き、爪楊枝でとめる。
③ フライパンに油をひき、②を表面に色づく程度に焼く。
④ 塩コショウで味をつける。(ベーコンに味がついているので好みで加減する)

ハナッコリーのベーコン巻き

●学校給食でも人気の定番「はなっこりんあえ」
(山口県HP「まるごと!やまぐち学校給食献立集」より)

【材料】1人分
はなっこりー 15g
キャベツ 20g
リンゴ 10g
すりゴマ 1g
砂糖 1g
酢 2g
塩 0.2g
薄口しょうゆ 1.5g

【つくり方】
① はなっこりーは2cm、キャベツは千切りにする。
② リンゴは5mm程度に切る。
③ 野菜をゆでて冷ます。
④ ②と③を調味料であえる。

はなっこりんあえ

 はなっこりーは、たくさんの農家につくってもらえて、たくさんの人に食べてもらいたい、という想いから生まれた、山口県ならではの野菜です。筆者もあらためて、おいしいだけではなく生産者にとっても栽培しやすく愛情にあふれた野菜であることを実感しまた。

 県外ではまだまだ流通の少ない珍しい野菜ですが、全農が運営する産地直送通販のJAタウンから全国発送も行っていますので、ぜひ一度、山口県生まれの万能野菜をご賞味ください。

<取材・文・料理写真/藤原真希>
<取材協力/山口県農業協同組合山口南営農センター、はなっこりー生産農家・河村喜子、山口県農林水産部ぶちうまやまぐち推進課

[地元の食文化から食育を考える]

藤原真希
山口県在住。キッズ食育トレーナー/管理栄養士/2児の母。
「食で親子のコミュニケーション」・「ママが料理を楽しめる工夫で家族みんなをHappyに」をテーマに、大人も子どももキッチンに立つことが楽しくなる方法を日々考案している。
(社)日本キッズ食育協会認定 青空キッチン山口周南スクール 主宰