青汁の原料だけど甘くておいしい。「ケール」の花芽は春限定のお楽しみ

茨城県は、白菜、チンゲン菜、小松菜、水菜など、葉野菜の栽培作付面積が全国1位。関東の野菜王国といわれています。なかでも今、注目されているのが、野菜の王様といわれる「ケール」。キッズ食育トレーナーの宮内真由美さんが教えてくれました。

冬から春に収穫するケールは甘い

中心部クルッと丸まっているのがケールの花芽

 ケールはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、ビタミンAはニンジンの2倍、カルシウムは牛乳の2倍以上の栄養価があり、スーパーフードの名高い野菜。栄養ドリンクの「青汁」で苦いイメージがありますが、じつは一年を通して栽培と収穫ができ、季節によって味のバランスが変わります。

 春と秋に収穫できるケールは、青味と苦味のバランスがよく、夏に収穫できるケールは、虫に食べられないようにと青味と苦味が増します。

 1年のなかでもいちばん甘味が出るといわれるのは冬。12月から2月にかけて収穫できるケールは、寒さを乗りきるためにぎゅっと栄養が蓄えられて甘くなります。

 そんなケールも栽培している農家はまだ少なく、野菜王国の茨城県でも、県内の野菜全体作付面積の割合からは、わずか0.01%ほど。公益財団法人日本特産農産物協会のデータによると、栽培戸数はつくば市に3戸しかありません。

春限定の花芽摘みが人気。サラダやおひたしに

葉の大きさに驚く子ども

 つくば市にあるベルファームつくばは約30年前から、無農薬でケール栽培をされています。通常、収穫されたケールは青汁に加工して販売されますが、毎年3月から4月にかけてケールの花芽摘み体験ができます。1年のなかでも甘くておいしい花芽が摘めるのはこの時季ならで、大変人気です。

「これがケールか!」と初めて認識できたのは、子どもたちを連れてケールの花芽摘みに行ったときのこと。葉っぱの大きさに驚きながら摘んだことを今でも覚えています。

ケールとナッツとリンゴのサラダ

 冬から春にかけて収穫できる花芽は、栄養価が高いうえに、甘味が増してクセもなく、子どもや青汁が苦手という人でも食べやすいのが特徴です。みそ汁やパスタの具材にしたり、炒め物にしたり、おひたしやサラダにしてもおいしく食べられます。

ケールと納豆のあえもの

ふかふかの土を使う、こだわりの栽培方法

健康な土壌づくり

 ベルファームつくばの畑づくりには、こだわりがたくさん詰まっています。農薬は使わず、土にも化学肥料を一切使わず、青汁製造のときに出るカスや米ぬかなどでつくった自家発酵堆肥を使用しています。微生物が土中の有機物を分解してくれるおかげで、約1.5mもの棒がスルスルと入るほど、ふかふかでやわらかいそうです。

ベルファームつくば

 それにしても広大なケール畑の景色はみるだけでも圧巻。とにかく1株1株がじつに大きいのです。鈴木社長は以前、病気で余命いくばくかというとき、青汁をとり入れた食事療法を医師に勧められ回復。自身の経験をきっかけに、病気で苦しんでいる人を同じように助けたいという思いからケール栽培が始まったのです。

 健康な土壌で育ったケールは元気そのもの。私たちが花芽摘みのときに見た大きな葉っぱは、人の思いと手間暇をかけられたこだわりの賜物だったのです。
「ふかふかの土の上で綱引きや、かけっこをしたりしたこともあったんですよ。包丁を使わず手で野菜の葉っぱをちぎってサラダをつくって食べる、というイベントも開催したことがあります。」と広報担当の粟野さん。

「言葉で伝えるより体感してほしいから」と、子どもから大人まで、畑に足を運んで楽しめるような体験型イベントも企画されています。ケールの花芽摘みもその一環。

子どもとケールの花摘み

 緑色の野菜を見ただけでプイっと顔をそむけてしまう。そんな子どもの野菜嫌いに悩むご家庭も多いと思います。たとえ野菜が苦手で食べられないとしても、畑に足を運んで本物の野菜を見たり触ったり匂いを嗅いだりすることだけでも、想像以上に子どもにとっては貴重な体験になります。

 畑の土ってこんなにやわらかいんだ、どんなふうに作物は育つのかな? そうやって少しずつ野菜への興味がわいてくると、それはきっと野菜嫌い克服の一歩になります。

 わが家の子どもたちは野菜が苦手でなかなか食べませんが、収穫は大好きです。いつか収穫体験がキッカケとなり「食べてみようかな!」と思えるときが来ると信じて、あせらずその日を楽しみにしています。

 毎年、ベルファームつくばでは3月から4月にかけてケールの花芽摘みを実施しています。生のケールを収穫できるチャンスもなかなかありません!ぜひ早春にしか味わえないご馳走を自分の手で収穫して味わってみてください。

<取材・文:宮内真由美>
<取材協力:株式会社ベルファーム、茨城県農林水産部産地振興課>

[地元の食文化から食育を考える]

宮内真由美
茨城県在住。2女の母。キッズ食育トレーナー。栄養バランスも大事、好き嫌いなく食べられたらいい、でももっと大切なことは「楽しく食べること」そう信じています。
(社)日本キッズ食育協会認定 青空キッチンつくば校主宰