何個でも食べられそう。茨城県のメロンの王様「イバラキング」

茨城県は23年連続メロンの生産量日本一を誇るメロン王国。今回は特別なメロン「イバラキング」について、茨城県出身でキッズ食育トレーナーとして活動する石井千賀子さんが教えてくれました。

メロン王国独自の品種「イバラキング」

イバラキング

 茨城県のなかでもメロンの生産がとくに盛んな鉾田市(ほこたし)でメロンづくりが始まったのは、約50年ほど前といわれています。

 メロンといえば北海道の「夕張メロン」が有名だった当時、北海道の職員が鉾田市を視察し、昼夜の寒暖差が激しい気候や、火山灰が積み重なってできた水はけのいい土壌をみて、「ここはメロンづくりに最適だ!」と、メロンの種を持ってきたことが始まりだそうです。

 そして「イバラキング」は、茨城県が10年ほどかけて開発した独自の品種です。約4万個体から選び抜いた母親メロンと約400通り以上の組み合わせを行って誕生しました。上品な香りと甘さ、なめらかな口あたり、そして、きめ細かな果肉が魅力のメロンです。

 2022年5月16日には、岸田文雄首相が鉾田市の生産者や岸田一夫市長らの表敬訪問し、「イバラキング」と「クインシーメロン」の2品種を試食しました。

丸ごとのイバラキング

「イバラキング」の特徴は、果実の肥大化。ほかの品種よりも約1割ほど果実が大きく、糖度は主力品種と同等に保たれています。日本で「イバラキング」がつくられているのは茨城県だけという、特別なメロンです。

デリケートなメロンは「網目」に注意

整然と並ぶメロン

「イバラキング」を栽培している方波見(かたばみ)嘉弘さんのメロン畑には、100m続くビニールハウスが数棟。ここで3種類のメロンをつくっています。ちょうどメロンの収穫を終え、市場やお客さんに出荷するための箱詰めの作業をしているところにお邪魔しました。

 ところで、「メロンを描いてみよう」と紙と色鉛筆を手に取ると、表面に「網目」を描くことが多いかもしれませんが、じつはメロンの網目模様は最初からあるわけではないのです。

発育中の網目のないメロン

 上の写真は、網目がまだできていない「イバラキング」です。最初はこのように表面はつるつる。メロンの実は大きくなる際、表面が縦に横にひび割れし、そのひび割れをなおそうと分泌物がでて固まること(カルス化)によって網目ができます。

網目が出来たメロン

 収穫時期を迎えた「イバラキング」は、上の写真のようにきれいな網目と、メロンに直接つく葉が枯れるサインで、収穫時期を見定めます。雨や気温の変化で果実が急に大きくなると、その裂け目が太く大きくなってしまったりと、メロンはとてもデリケートです。

ハウスで栽培

 網目にできた傷は、糖度やおいしさに違いは出ませんが、傷みやすいことや、贈答品としての商品の価値が下がってしまう可能性があります。農家にとって、日々のメロンの世話や、ハウス内の温度、気候の変化はとても神経を使う部分だそうです。

商品にならないメロンを活用して破棄を減らす

枯れ葉でも判断

「イバラキング」はとてもデリケートな品種のひとつで、出荷できないことも多いそうです。出荷できないものは地元の加工屋さんでメロンピューレにしたり、都内の飲食店やメーカーに「おいしいけれどそのままでは売れないメロン」として卸し、破棄を少なくする努力をしています。

メロンにかぶりつく子ども

 子どもたちと「イバラキング」を試食して、その果肉の大きさと、甘さにとても驚きました。糖度は18度と、とても甘いのですが、口当たりがやわらかく、甘いのにどこかすっきりしていて、「何個でも食べられそう!」と子どもたちも大喜び。おいしくいただきました。

メロンを器にしたフルーツポンチ

 味に自信があるからこそ、ぜひそのままのメロンの味を堪能してほしいとのこと。ただカットして食べるだけでなく、メロンの皮をバスケットにしてつくるフルーツポンチなど、楽しく特別感のあるフルーツとして食べるのもおすすめです。

 メロンの収穫時期は、まさに今、5月から6月です。日本でほかにはない「イバラキング」をぜひ、食べてみてくださいね。

<取材・文・写真/石井千賀子>
<取材協力/(株)小太郎物産 小沼広太、メロン農家 方波見嘉弘>
<参考/茨城県営業戦略部販売流通課>

[地元の食文化から食育を考える]

石井千賀子
東京都在住。キッズ食育トレーナー/薬剤師/2児の母
「親の手が離れた後も子どもが正しい食を選択できるように」「食で子どもの探究心を育む」をテーマに活動している。(社)日本キッズ食育協会認定 青空キッチン大田区久が原校主宰