ぴかぴかの鮮度を求めて100万人が来訪。佐賀県呼子の「イカの活づくり」

「イカの活づくり」が誕生した町として有名な佐賀県唐津市の呼子町には、そこでしか食べられない特別なイカを求めて、年間100万人もの観光客が訪れるそう。地元で食育トレーナーとして活動する黒田香織さんが紹介してくれました。

最高のイカは漁師とお店が一丸となって鮮度を保つ

イカ活造り

 佐賀県唐津市にある人口約5500人の小さな町、呼子(よぶこ)町は「イカの活づくり」が誕生した町として有名です。玄界灘、対馬海流の恩恵を受けた豊富な栄養分を含む呼子の漁場では、コウイカ、アオリイカ、ヤリイカなどさまざまなイカが獲れ、なかでも「剣先イカ」は日本有数の産地となっています。

 呼子のイカの活づくりが、ほかにないほど新鮮で身が透明なのは、豊かで穏やかな湾でストレスなく生かされていることに加え、とにかく繊細に扱われているからにほかなりません。
 漁師さんは釣ったイカは触らず、弱らせないよう船からいけすまでダッシュして移動させ、直接お店へ届けます。イカは人の体温に触れることで火傷し、鮮度が落ちるためです。海でのイカの寿命は1年、さらにいけすの中では3日もたないのです。

 海水から上がってすぐに調理されるのも、透明な理由といわれます。船から店(いけすや板場)という最短ルートを漁師さんと飲食店が協力して行うことで、鮮度のいい活けづくりを提供することが可能になりました。

活づくりのあとは「後づくり」も絶品

イカを箸で持ち上げた様子

 透き通るイカの活づくりはコリコリとした食感と口いっぱいに広がる甘味が特徴。一度食べたら忘れられないおいしさで、リピーターが多いのもうなずけます。

 活づくりのイカをよく見ると、表面が十数秒ごとにきらきらと虹色に変化する様子が見えます。これはイカが皮膚の中に虹色の光を出すことのできる色素細胞のひとつ、「虹色素胞」をもつからです。

 イカはその鮮度で透明、茶、白というように色が変化していきます。呼子の子どもたちにイカの絵を描いてもらうと、虹色はじめさまざまな色の表現を見ることがあるのですが、地元の鮮度のいいイカを見慣れている証ですね。

イカの天ぷら

 イカの活づくりを堪能したあとは、「後づくり」もお楽しみ。刺身がなくなる頃合いを見て店員さんが「後づくりはどれにしますか」と声をかけてくれます。まずは刺身を先に味わってから、天ぷら、塩焼き、煮つけなど、刺身以外の料理を注文する流れが、どのお店でも定番です。

 刺身以外の料理も、イカ自体がもともと甘くやわらかいので、なにを選んでも絶品です。とくにどの店にも必ずある天ぷらはサクサク、ふわふわで箸が止まりません。

毎日開かれる朝市では一夜干しもおすすめ

イカの一夜干し

 海沿いの松浦町商店街で行われる「呼子朝市」は、300年もの歴史をもつ日本三大朝市のひとつです。元旦を除き毎日開かれていて、地元のお母さんたちの元気な声が飛び交います。

いかぐるぐる

 イカをはじめ地元の新鮮な魚介類や野菜、果物の買い物やグルメを楽しめます。一夜干し用に干したイカがびゅんびゅんと高速回転する「いかぐるぐる」も朝市名物。早く乾燥させるためと、干している間に虫や動物に狙われるのを防ぐという理由で、昔からあるようです。

 佐賀を訪れた際は、呼子町でイカを堪能してください。この時季は、剣先イカが旬ですが、1月~3月はヤリイカ、2月~6月はコウイカ、10月中旬~4月中旬にかけてはアオリイカと、1年を通じてイカを楽しめます。

<写真・文/黒田香織>

―[地元の食文化から食育を考える]―

黒田香織
佐賀県在住。キッズ食育マスタートレーナー/野菜ソムリエ。「できた!をいっしょに。」料理、食を通じて子どもたちの”自分でできる喜び“を育みます。
(社)日本キッズ食育協会認定 青空キッチン佐賀スクール 主宰