岩国れんこんでつくる「殿様寿司」。200年続くソウルフードです

 これから冬にかけておいしくなるレンコン。全国でも5本の指に入る産地、山口県岩国市では「岩国れんこん」と呼ばれ、200年の歴史を誇る郷土料理、殿様寿司(岩国寿司)が有名だそう。管理栄養士でキッズ食育トレーナーの藤原真希さんが紹介してくれました。

殿様も喜んだ9つの穴の岩国れんこん

掘ったれんこん

 レンコンはなぜ穴があいているかご存知でしょうか。レンコンは泥の中で育ちます。「蓮根」=「蓮(ハス)の根」と書きますが、実際は根ではなく、地下茎(地中に埋もれている茎)が大きくなったものです。そして穴は、水上の葉から地中の茎や根に空気を送る役割を担っています。

一面に広がるハスの立ち葉

 7月頃、いち面に広がるハスの立ち葉は圧巻。高いものでは180㎝ほどになります。

 では穴の数は何個でしょう。面白いことに、ほかの地域のレンコンの穴は8個なのに対し、「岩国れんこんの穴は9個」と言われています。

 岩国のレンコン栽培は今から200年前、地元の篤農家、村本三五郎が諸国を旅して持ち帰ったハスを干拓地に植えつけたのが始まりとされており、その9つのレンコンの穴が、当時の岩国藩主、吉川家の家紋である九曜紋にも通じることから、殿様に大変喜ばれたという逸話が残っています。
 
 持ち帰ったハスの種類が、それまで日本で自生していた在来種(花がピンク色)とは異なる中国種(花が白色)であったことが、「岩国れんこんの穴は9個」という言い伝えの理由と考えられますが、現在食用として流通されている多くは中国種のため、地域による穴の数の明確な違いはなくなっています。

岩国れんこんを使った郷土料理、岩国寿司

酢飯を専用の木枠に詰め、彩り鮮やかに具材を飾る

 岩国にはレンコンを使った郷里料理が多数あり、なかでも有名なものが「岩国寿司」です。一度に5升から10升の酢飯を専用の木枠に詰め、その上を錦糸卵や酢レンコン、シイタケ、でんぶ、春菊などで彩り鮮やかに飾ったもので、これを同様に何層も重ね、職人たちが押し蓋の上に乗って押し固めて仕上げる押しずしです。

寿司は1人前ずつに切り分ける

 旧岩国藩の城下町として栄えたこの町では「殿様寿司」とも呼ばれ、豪華な具と整った四角い形が特徴的で、出来上がったすしは1人前ずつに切り分け、大勢で分け合っていただきます。かつては藩主(殿様)への献上品として、更に盆や正月、結婚式、葬儀など人が集まる場には欠かせない料理でした。

何層も重ねて押し固める

 今では地元のスーパーや惣菜店でも購入することができますが、日本三名橋のひとつ、「錦帯橋」付近の料理屋や旅館などで食べることができるのは有名です。具材や味つけは家庭や地域によって多少異なり、各所で何世代にもわたり受け継がれてきた、そこにしかない味があるのも興味深いです。

五連のアーチが美しい木造橋「錦帯橋」

錦帯橋付近の料亭でいただける岩国寿司ランチ

昔から変わらないふるさとの味を次世代に伝えたい

 かつては各家庭に専用の器が存在するほど身近な料理だった岩国寿司ですが、現在では家庭でつくる機会が減ってきており、再び身近なものとなるよう、次世代へ伝える普及活動が広がっています。

牛乳パックで作る岩国寿司

 次世代へ郷土食を受け継ぐ活動を行っている、岩国生活改善実行グループ連絡協議会の江本宏子さんは、どこへ行っても郷土の味を覚えていてほしいと、地元小中学校や岩国市民に家庭でつくれる簡単な方法として、少量の酢飯で手軽にできる「牛乳パック岩国寿司」を提唱。

 江本さんのつくる岩国寿司は、岩国れんこんが流通する11月から4月末まで、朝市やJAファーマーズマーケットで販売もされています。料理屋や旅館のものとはひと味違った、昔から変わらない、そして何個でも食べたくなる、まさにお母さんの味。岩国に立ち寄った際は、ふるさとの味を賞味してみてはいかがでしょうか。

レンコンを通した授業と給食で地産地消を学ぶ

れんこんの収穫

 授業でレンコンについての学習を取り入れている小学校もあります。岩国市立愛宕小学校はレンコンの生産体験を30年以上続けており、3年生は4月の植えつけから10月の収穫まで、5年生は岩国寿司づくりを経験し、生産から流通、地産地消について学んでいます。

 泥だらけになりながらも、どの生徒も毎年楽しく授業に参加しており、年間通して、地元のレンコンをより身近に感じられる授業となっています。

れんこんチキン

 自校給食の愛宕小学校では収穫体験の日は、レンコンを使った給食が提供されます。「チキンチキンレンコン」や「レンコンチップス」などが人気で、レンコンメニューの日は残菜も少ないという声もあります。地元の食材を取り入れ、地域の特産品を知り、伝統食文化を味わい、地域への愛着につながることを願って、愛宕小学校の食育授業は行われています。

れんこんチップス

 岩国れんこんと岩国寿司は、地元の気候や風土、歴史によって長年育まれてきた大切な食文化です。時代とともに薄れていくこともありますが、次の時代を担う子どもたちに受け継いでいく機会や活動があることは大変喜ばしく感じます。これからも地域に伝わる料理を大切にしていきたいですね。

<写真・文/藤原真希>
<取材協力>
岩国市産業振興部 山口県農業協同組合岩国営農センター 岩国生活改善実行グループ連絡協議会(江本宏子) レンコン生産農家 岩国市立愛宕小学校教職員

[地元の食文化から食育を考える]

藤原真希さん
山口県在住。2児の母。キッズ食育トレーナー。青空キッチン山口周南スクール主宰。管理栄養士。
「食で親子のコミュニケーション」・「ママが料理を楽しめる工夫で家族みんなをHappyに」をテーマに、大人も子どももキッチンに立つことが楽しくなる方法を日々考案しています。
(社)日本キッズ食育協会