山村の仲間と返礼品を開発。すてきな香りの「ボタニカル・スープ」が完成

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(38)]―

東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、新商品完成についてをレポート。

素材豊かな産山村で芸達者な人材も調達

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イメージ画像は、蒸気でロゴを描いたおしゃれなデザイン

 産山村の「目指せ1億!ふるさと納税」という無謀(?)な目標を達成するために始まった役場と商工会が主催のものつくり塾。第1回目に続き、第2回目も参加。「目指せふるさと納税1億円。山村の仲間とワクワクする返礼品を開発中」で書いたように今回は産山村のさまざまな人々と組みたい! と意気込んで鼻息も荒く始めました。

 今回完成したのは「ボタニカル・スープ」という名のルームポプリ。産山や阿蘇の植物をブレンドしたものを煮だして、水蒸気とともにただよう香りを楽しむ商品です。

 商品企画にあたり、素材や香りの共同研究開発を依頼したのは、「ときめくものつくりを!!」をコンセプトに活動している、ふぁとりあin 産山さんとorganさん。どちらも産山在住。ロゴや取説などのデザインは自然時計さんに依頼。こちらも産山在住の方です。素材だけでなく人力も産山村産!

 ありがいことに産山村には芸達者なメンバーがチラホラいます。思いついたことや迷っていることを相談できる人々がいることは企画を進めるうえでは重要なこと。1人きりだったらとっくに途中で放り出していたかも!?

 奇しくも、今回は同世代チームなので、いやだからこそ、押したり引いたりする力加減もちょうどいい。コロナ渦のこのご時世、なにもなければしばらく会わないところを、感染拡大防止対策をばっちりしながら、いろいろと打ち合わせなどで会えて盛りあがれるのもうれしい。

野草や花にスパイスを加えた「ボタニカル・スープ」

ポプリ
ルームポプリの「ボタニカル・スープ」セット

 今回商品化したのは香りを煮だすルームポプリ。乾燥したハーブや野草や花を水からたきこみ、水蒸気とともに香りがたちあがり、お部屋の中にほんのりと香りが漂う。それをボタニカル・スープと名づけました。これは最初に考えたこの商品のコンセプトの「大人のままごと」にもぴったり。

 野の花やハーブなど植物のなかにはとてもいい香りをまとった植物が多く存在します。ただ、このすてきな香りたちは自然の香りなのでいつまでも残るような強さではありません。繊細な香りでわかりにくいため商品化するのは難しい…。市販のルームポプリなどは人工的な香りがつけられていたり、精油などのオイルで香りをたしたりするものがほとんどなのです。

 ならばボタニカル・スープではどう香りを表現しようか? と考えてブレンドしたのが香り高いスパイスたち。シナモンやカルダモン、クローブやジュニパーベリー。つぶしたり刻んだり煮込むことで香りを放ち、ラベンダーやカモミールやローズマリーなどのハーブや花などのボタニカルと相まってすてきな香りがお部屋に漂う。

苦戦と実験の繰り返しでようやく完成

ポプリ
ポプリは手作業でひとつずつ詰める

 今回もっとも苦戦したのがボタニカル・スープをわかすための器や方法でした。当初は産山村で陶芸をされている方にお皿を焼いてもらおうと提案しました。でも実験をやってもやっても、ちょうどよく香りをたたせるのが難しい。素焼きのお皿や焼き皿で試しても、中々温まらずに香りがたちにくい。器のサイズや形や厚みなど、ちょっとしたことで熱の伝わり具合が変わるのです。

 また火も焼き物の器の場合、ティーキャンドルでは全然温まらず、かといって燃焼剤では燃える際の匂いが気になるのと火力が強すぎて見ていても落ち着かず…。

 あーでもないこーでもないとさまざま方法や道具で試した結果、あるメーカーのアロマオイルウォーマーが最適だと判明しました。そのメーカーに何度か交渉し、めでたくボタニカル・スープセットに入れられることになりセットが完成!

 数量限定で「さとふる」の産山村のふるさと納税でデビューします!!  苦労をしましたが、やっぱりものづくりは楽しい。そして、産山村民のポテンシャルの高さを実感した商品開発第2回目でした。

―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし]―

折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手おもちゃメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。