―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(46)]―
東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、熊本と大分の県境の村で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回は、再び襲われた水のトラブルについてをレポート。
昼間でも氷点下の日。再び水が出なくなった
明日から10年に一度の大寒波が来るという予報の出た日の昼間のこと。来る日も来る日もマイナス気温で、その日も昼頃までは氷点下でした。
なので水道の凍結防止のために、外の蛇口はもちろん家の中の蛇口からもちょろちょろと水を出し備えていたのです。昼間といえども油断大敵!! 「ふふふ、移住7年目にもなると凍結防止にも慣れてきたね~」などど悠長に構えていました。もちろん、昨年大雨で水が止まった経験も忘れていません!
なのになのに「水が出なくない??」「えー!!さっきまで出てたよー! 出し方が少なすぎて凍った?」と大騒ぎの事態が発生。あわてながら家じゅうの蛇口を確認するも、台所も洗面所もお風呂場もやっぱり出ない。外の水道も出ない。
お昼ご飯を用意するときは使えたのに…。これではついさっき食べ終えたお昼ご飯のお皿やお鍋も洗えない。どうする? いやいや、それどころかトイレが使えないじゃないか!? と思った瞬間、なぜかトイレに行きたくなるのは不思議です。
それにしても、さっきまで出ていた家の中の水が数分で凍るほどのマイナス気温ではないはず。おかしくない? もしかしたら根本的な部分に問題が発生したのでは?と嫌な想像をしました。家の中にいてもわからないので、「ちょっと見てくる」と集落の貯水タンクを確認しに夫が家を出て行きました。
その数分後「タンク内にまったく水が貯まってない!」と慌てて夫が戻ってきたのです。
水がなくなった原因はずっしりと重たい雪
その後、集落の方々と連絡を取り、一緒にタンクから水源まで水が出ない原因を探しに行きました。前日に降った雪は、雨交じりの重い重い雪。その重い雪が少しだけ解けて、白い雪とドロドロのヌカヌカの土が入り混じっている山の中。道のりは、ただ平らなだけでなく斜面もあり、一部川の中に入って渡って行く部分もある。
長靴を履いた足がぬかるみに沈み次の一歩を踏み出すのも力が入り、滑ってバランスを崩して転ばないようにするのが大変。途中までは一緒に行き、そこから更に奥の水源へは集落の方の1人が見に行ってくれました。そうして苦労して調べた結果、前日の重い重い雪が木を倒し、倒れた木が水を通しているパイプを外してしまっていたのです。
さぁどうする?
明日から大大寒波がやってくる予報。水を通しているパイプが外れたままで、途中のパイプが凍ってしまったら数日は水が出ないし、それどころか凍って破損したりしてさらに被害が大きくなってしまいます。
今ここにある道具と材料で直すしかないぞ! とチェーンソーで倒れた木を切り移動させる。足元はドロドロのぐちゃぐちゃでしかも急斜面。作業着を着た体はパイプからあふれ出る水が常にじゃかじゃかかかっていてびちゃびちゃ。そのままの悪状況のなか、小1時間ほどパイプをつなげるのに、夫と集落の方が格闘してくれました。
やっとのことでパイプがつながったときには、格闘した2人は水と泥でびちゃびちゃのドロドロのクタクタ。
本当にありがたい。大大寒波の前で、少しだけ気温が上がった昼間の出来事でよかったーと心の底から思いました。移住7年目、まだまだ山の暮らしは油断できません。
折居多恵さん
雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。