―[東京のクリエーターが熊本の山奥で始めた農業暮らし(56)]―
東京生まれ横浜&東京育ち、田舎に縁のなかった女性が、フレンチシェフの夫とともに、大分との県境にある熊本県産山村(うぶやまむら)で農業者に。雑貨クリエーター・折居多恵さんが、山奥の小さな村の限界集落から忙しくも楽しい移住生活をお伝えします。今回はアナグマ対策や収穫期の心配ごとについてレポート。
人より野生動物が多い集落。アナグマに畑を荒らされる
畑を荒らすアナグマとの闘いはまだまだ続いています。
ある日のこと、畑への進入路発見! と排水溝にフタをしてみたものの、翌朝もまんまとアナグマに畑をホジホジと掘られていました。またある夜には、わが家の屋根から道路にぴよーんと元気に飛び出してきたイタチも目撃!! 今年はあちこちでシカの群れもよく見る。
なんだなんだここは。野生動物たちがメインで私たちのほうが侵入者なのか…と、思ってしまうほどです。まぁ、数でいえばそうなのでしょう。実際に集落内の人口は移住してきた当時より減っています。
すぐお隣の大分県をみても、高齢のため田んぼをやめる人が近年多発。その結果、田んぼは草ボーボーになりイノシシやシカなどの野生動物に荒らされています。
田んぼの畦が崩れたら、その田んぼは水がきれいに溜まらなくなります。水が溜まらない田んぼは新しい使い手も決まりにくい。だからどんどん荒れていく…という悪循環に陥るのです。
里山を侵食していく黒い太陽光発電パネルの大規模設置には反対ではありますが、高齢になり田んぼの手入れもままならずどんどん荒れゆく田んぼを眺め、太陽光パネルの設置したら草刈りもせずにきれいに保てるなぁ~と考えてしまう人の気持ちも痛いほどわかります。
ベテラン猟師のアドバイスでアナグマを捕獲できた
さて、畑を荒らすアナグマやイタチですが、ある日、うぶやまキュッフェのジビエをお願いしているベテラン猟師さんにも一緒に畑を回ってもらいました。進入路はここかなーという怪しい場所をチェック。そして箱ワナの仕かけも見てもらいました(わが家は、ワナの狩猟免許はもっており、産山村ではアナグマも駆除の対象になっています)。
「アナグマは下ばかり見て歩いているから、箱ワナの中の高い位置に食べ物を置いてもダメ。箱ワナ内の地面に置いたほうがいいよ」とアドバイスをもらいました。なるほどー、なるほどーと勉強になります。
ワナ用に大量に買い込んだキャラメルコーンもつきたので、畑からミミズを掘ってきました。そのミミズと甘い梨をワナに仕込んだところ、なんとその2日後にアナグマがワナにかかったのです!
私たちが夜に目撃した排水溝アナグマよりも小さなアナグマでした。が、その日の夜は「よかったねー」と喜びながら、安心しぐっすりと眠りました。
しかし、そんな平和な睡眠は1日しか続かず。翌朝、またもや足跡を発見。そして今度はなんと防護ネットも張り巡らせてあるハウス内に侵入し、ピノブランという品種のワイン用ブドウまで食べているではありませんか!
「えー!!!大ショック!」とかなり大きな精神的ダメージを受けつつも、即対策をしなければならない状況です。
再度箱ワナを3つ仕かけ、防護ネットの周りを確認し、気休めかもしれないミントをブドウの木の下にばらまいて歩き(アナグマはミントやレモンや硫黄の匂いが嫌いらしいので)、夜にはもう一度見回りに。
はたして無事に収穫までたどり着けるのでしょうか。第一弾の収穫まであと2週間ほど…と思っていたら、今度はまさかの台風直撃予報が!! さてさて今年の収穫はどうなることやら。
【折居多恵さん】
雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストランasoうぶやまキュッフェを営んでいる。