下諏訪町移住4年目。見えてきた自分らしい暮らし方と働き方

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

 地域おこし協力隊を卒業し、長野県下諏訪町でまちづくり会社を設立した今野由香里さんと綿引遥可さん。移住当初から自宅のリノベーションや家庭菜園などでお世話になった下諏訪町の方々に、恩返しをできる機会が少しずづ増えてきたそうです。

地域で楽しく暮らし、働く。フツウだからこそ目指したい姿

地域おこし協力隊時代から合同会社chiokoの今に至るまで、高いツナギ着用率
地域おこし協力隊時代から合同会社chiokoの今に至るまで、高いツナギ着用率

 まだまだ移住初心者なような気もしますが、気がつけば下諏訪町での暮らしも4年目、だんだんと自分らしい暮らし方と働き方が形になってきたような気がしています。「町の黒子になりたい」という思いを込めた、まちづくり会社のロゴとイメージビジュアルをイラストレーターさんにつくってもらいましたが、ここには私たちの会社「chioko」が実現したい地域と人の在り方が描かれていました。そんな私たち自身にも「地域の活気につながる、暮らし方や働き方の見本を目指す」というビジョンがあります。そこで今回はchiokoの代表、今野の暮らしと仕事をご紹介します。

家から野菜まで!自分たちで手を動かして暮らしをつくる

壁には漆喰、床には古材。苦労はしたけど、元の和室の雰囲気からは大きく変わりました
壁には漆喰、床には古材。苦労はしたけど、元の和室の雰囲気からは大きく変わりました

 夫婦ふたり暮らしの住まいに選んだのは、人づてで見つけた昭和な一軒家。もともと取り壊す予定だったそうですが、リノベーションをして住みたいという希望もあり大家さんに直談判した結果、借りることができた掘り出し物のおうちです。1年に1部屋ずつという無理のないペースでリノベーションしながら住んでいて、今では趣味はリノベーションと言えるようになりつつあります(笑)。

 手を入れ始めた当初は、びっくりするような事態の連続でした。見えないところにシロアリ被害があったり、天井から雨漏りしていたり、ドタドタ騒がしいと思ったらネズミが出没したり…。古い建物はやはり一筋縄ではいきません。それでもひとつひとつをクリアしながら、仲間と集って手を動かし少しずつ空間が生まれ変わりました。ときにはプロの力を借りますが、知り合いの古材屋さん、知り合いの建具屋さん、知り合いの大工さん…というように、「関わっている人がみんな知り合い」というのもローカルな暮らしならでは。信頼できる仲間と一緒につくり続けて、愛着とこだわりがいっぱいに詰まった自宅です。

やっぱり自分でつくった野菜は格別。この夏のシシトウの収穫量は、驚きの約1300本!
やっぱり自分でつくった野菜は格別。この夏のシシトウの収穫量は、驚きの約1300本!

 今年の新たな試みは、駐車場の一部を畑として開拓したこと! 今までも小さなスペースでの家庭菜園を楽しんできましたが、育てる種類と数をより増やすことに。種や苗を少しずつ買ってうまく育つか実験でしたが、葉物は一度も買わずにこの夏を越してしまうほどの大豊作。収穫した野菜を使って、揚げ物パーティをしたり、豪華なサラダをつくったり。

 世の中ではさまざまな問題が起きていますが、暮らしにまつわる多くのことを、自分たちの手を動かしつくっていく安心感と楽しさを、ますます感じるこの頃です。

協力隊の縁から広がり、自分ができることで仕事をつくる

 そんな思いを形にした事業のひとつが、連載でもご紹介している「小商いヤッテミレバ!」です。「自分の好きなこと」と「誰かの困りごと」の掛け合わせから生まれた地域に根付いた働き方が、私たちと同じようにモヤモヤを抱えている人の選択肢になれるよう、応援する活動をしています。

小商いの実践までを伴走する連続講座「小商いヤッテミレバ!キャンプ」2期目がスタートしたばかり
小商いの実践までを伴走する連続講座「小商いヤッテミレバ!キャンプ」2期目がスタートしたばかり

 しかし、それだけではありません。私たちの事務所が位置する下諏訪町の御田町商店街のみなさんには、協力隊時代から仕事のことや暮らしのことをいつも相談させてもらっていました。当初は頼りになりっぱなしでしたが、今では逆に困りごとを相談してもらえるような関係が築けました。ご高齢になりこれまでのようにいかないこと増えたり、新型コロナウィルスの影響で大変な思いをしていたり。

 そんな困りごとのなかには「あれ? 実は私たちでも役に立てそうなことがあるのかも」という気づきがありました。補助金申請のためのPC作業、買い物代行、ちょっとした事務や力仕事のお手伝いなどなど。「自分ではフツウと思っていることでも、誰かにとっての力になれる」ことを実感しています。

 さまざまな方からお声がけいただいたことがお仕事に繋がっていることに感謝しつつ、あらためて下諏訪町のみなさんが大好きだと再確認し、お役に立てていることをうれしく思ってます。

●今月のコアキナイビト その9 and, books by たくらだねこさん

たくらだねこさんのお人柄が表れているホシスメバの本棚。実店舗のオープンが待ち遠しい!
たくらだねこさんのお人柄が表れているホシスメバの本棚。実店舗のオープンが待ち遠しい!

 たくらだねこさんは、「年々減りゆくまちの本屋を復活させたい!」という思いを持って、愛知県から下諏訪町へ移住、本屋「and, books」のオープンを目指して活動中です。

 下諏訪町での新しい暮らしや仕事を応援する施設「しごと創生拠点施設ホシスメバ」の共有スペースには、たくらだねこさんが選んだ本が並ぶ、かわいらしい本棚があります。小説や漫画など幅広い選書のなかで、特に愛着があるという「着物」や「猫」を題材にした本は特に目を引かれます。

 現在は、商店街にある古着屋さんの一角で開業の準備を進め、来年のオープンに向けてリノベーションの真っ最中とのこと。下諏訪町で暮らしているなかで、今までたくさんの「まちに本屋が欲しい」と言う声を聞いてきました。きっと「and, books」ができることを待ちわびている人がたくさんいるはず!またひとつ、道ゆく人がふらりと立ち寄りたくなるお店が、まちに増えそうな予感です。

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

今野由香里さん 綿引遥可さん
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。2020年、合同会社 chiokoを設立し、下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。