成り立ちを知ればつらくない!? 旅を面白くする「のぼり道」の魅力

—[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]—

GoToトラベル事業も一時停止となり、相変わらず旅には出づらい状況が続く今日この頃。そんな時期だからこそ、次の旅へ思いを馳せ、いつか思う存分に旅が楽しめるようプランを練りに練っておきたいところです。今回は、観光ホスピタリティコンサルタントの石田宜久さんが「旅を楽しむためにはぜひ知っておくべき!」と語る「のぼり道」の楽しみ方について話を聞きました。

のぼり道を楽しめるようになれば、あなたも旅の上級者

オランダ坂
オランダ坂/長崎県長崎市(筆者撮影)

 これまで、ソーシャルディスタンスを取りやすいソロ旅のコツとして「高いところに行ってみる」と紹介し、「心置きなく旅ができるようになる日のために足の健康を維持しよう!」とさんぽ旅について記事にしてきました。旅に階段や坂道がつきものだというのは、多くの観光地を巡ってきた私が身をもって体験してきています。

 たとえば「坂の町」と呼ばれる長崎。そのなかでも有名なオランダ坂は、長崎の異国情緒を映し出し、長崎屈指の観光スポットにもなっています。多くの修学旅行生も訪れる場所で、坂を見ずして長崎観光とは言えません。

 それこそ、修学旅行先として有名な栃木県日光市にある「いろは坂」も、坂自体が欠かせない観光スポットになっていますよね。

 ほかにも神社やお寺には長い階段がつきものですし、お城を訪れたならば必ずといっていいほど急な石階段が待ち構えています。普段なら「面倒だなぁ」「きついなぁ」と敬遠しがちな階段や坂道ですが、楽しみ方のコツさえ知れば旅がもっともっと充実したものになります。そこで今回は、その楽しみ方とぜひ訪れてほしい「のぼり道」の名所をご紹介します。

のぼり道は最高の写真映えにもなる!

 前述のとおり、「のぼり道」と聞くと日常では避けたくなる嫌われ者のイメージがあります。普段生活している環境であれば、エスカレーターやエレベーターで補われていますからね。しかし、旅先では意味が違います。実際に、歴史あるスポットへ続く道であったり、道そのものに歴史的価値がありパワースポットになっていることもあります。また写真に収めると素晴らしい景色になったりと、のぼり道の魅力はとても多くあるのです。

パワースポットとして注目される和歌山県熊野古道

熊野古道

紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録されている熊野古道。本宮・新宮・那智の熊野三山を結ぶ道なのですが、山ということもあり多くの部分が坂道です。近年はパワースポットとして注目されている熊野エリアにおいて、手軽に古道を歩けるスポットとしてあがるのが、上の写真の「大門坂」です。

 那智山へと続く全長600m、高低差約100mの石畳の坂で、夫婦杉や石畳につくコケの美しさが有名ですね。昔から多くの人がここを歩いて聖地を目指していたと思うと、自然とゆっくり歩みを進めたくなります。

かご屋もいる香川県金比羅山

金比羅の石段

「こんぴらさん」の名称で親しまれている、香川県の金比羅宮。特徴的なのが参道入り口から本宮まで785段、奥社までは1368段続く石段です。三重県の伊勢参りと並ぶ「一生に一度はお参りしたい」として多くの人の憧れとなる場所ですが、やはりネックとなっているのがこの1000段を超える石段ですね。

 ただこの階段道は参道なので、多くのお店が並んでいます。お土産はもちろん、食事も甘味も楽しめます。また杖の貸し出しもしているので、足腰に不安がある人には大きな助けになってくれるはず。また、どうしてもつらいという場合は「かご屋」もあります。ご自身のレベルに合わせて参拝できますので、心配し過ぎる必要がないのです。

 達成感があるのか、階段をのぼり切った参拝者の皆さんが笑顔になるというのが、こんぴら参拝のありがたさでもあります。

長い階段に鳥居が並ぶ東京都山王稲荷神社

稲荷鳥居

 全国各地に点在する稲荷神社。京都の伏見稲荷大社が総本山となっており、分社などを含めると3万社もの稲荷神社があるといわれています。

 稲荷神社のなかには、いくつもの赤い鳥居が並び、その間を歩む長い階段道「千本鳥居」が名所となっている神社もあります。東京都にある山王稲荷神社もその1つ。なぜこれほどの鳥居がつくられたのかというと、願いごとがかなったお礼として、鳥居を奉納するしきたりが江戸時代以降に広がったからだとか。

 山王稲荷神社は規模は小さいですが、長い階段が続き、登っているとなんとも言えない神聖な気分になっていきます。願いも苦労なしではかなえることができないと教えてくれているかのようですね。

 ここで紹介したスポットだけでなく、日本には素敵な階段や坂道がまだまだたくさんあります。それぞれ表情が違い、成り立ちや独特な趣もあってじつに興味深いものばかりです。確かに登るのが大変な道もありますが、そこに隠された歴史やエピソードを噛み締めながらゆっくりと歩んでみると、また違った趣や絶景に出合えるはず。次の旅では、階段や坂道を毛嫌いせずに積極的に歩いてみてはいかがでしょうか?

—[ふるさと旅を10倍楽しくする!/石田宜久]—

観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi(ディシィ)代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ