煮物もおやつもふっくらツヤツヤ「赤酒」は熊本の食卓に欠かせない調味料

熊本県民が愛用する調味料「赤酒」。すっきりとした上品な甘味で、食材のうま味を増し、臭みはとって、照りよくふっくら仕上げてくれる調味料です。地元でキッズ食育トレーナーとして活動する松野文枝さんに紹介してもらいました。

赤酒は熊本では日常的に使われる調味料

赤みを帯びた赤酒

 赤酒とは、時の経過とともに自然に赤みを帯びる、熊本地方に古くから伝わる清酒の一種。ひと口含むと濃厚な甘さが口の中に広がります。もろみ発酵後に、保存性を高めるため、木灰を入れることから、「灰持(あかもち)酒」とも呼ばれ、熊本県の家庭では昔から日常的に使われています。お正月のお屠蘇も赤酒です。

 発酵と糖化が並行して行われ、糖分、アルコール、アミノ酸が混然となって、甘味とうまみ、発酵の香りを兼ね備えます。

照り良く煮えたあら煮

 お酒には珍しく「微アルカリ性」という性質があり、料理に用いると肉類・魚類などのタンパク質を固めず、ふっくらとした仕上がりになります。
 肉や魚の臭みをとるほか、糖分・デキストリン・タンパク質・アミノ酸などの成分をバランスよく含有しているため、照焼き・煮しめ・かば焼きなどに使用すると照りよく仕上がり、冷めても料理のツヤが落ちません。
 アクのある野菜を煮てもきれいな色に仕上がり、甘味のキレがよくすっきりしていて、食材のうま味が増す効果もあります。

瑞鷹株式会社

 地元では慶応3年から続く酒蔵「瑞鷹株式会社」の赤酒が有名。「本伝東肥赤酒」と「東肥赤酒(料理用)」の2種類があり、2つの違いはエキス分(甘味、うま味成分)だけなので、どちらも飲用にも料理用にも使うことができます。熊本県内ではお酒の取り扱いのあるスーパー、酒屋さんなどで購入できます。

日常的な調味料として使用

赤酒で子どものおやつも簡単においしく

子どもとクッキング

 お酒はしっかり加熱してアルコール分を飛ばせば、子どもの食事にも使えます。赤酒の上品な甘さはおやつづくりにもおススメで、たとえば、みたらし団子のたれやプリンのカラメル、ホットケーキのシロップは赤酒を煮詰めると簡単においしくなります。

みたらし団子

<みたらし団子>
【材 料・つくりやすい分量】
白玉粉100g
豆腐110g~
A(赤酒大さじ5、しょうゆ大さじ2、水さじ4)
水溶き片栗粉  適量
※「本伝東肥赤酒」を使う場合、砂糖は微調整

【つくり方】
1. 白玉粉と豆腐を混ぜて耳たぶくらいの柔らかさになるまでこねる。
2. 熱湯に入れてゆで、浮き上がってきたら冷水にとる。
3. 鍋にAの材料を入れて煮詰める。水溶き片栗粉を少しずつ加えてとろみをつける。
 水をきった白玉を加えあえて完成。

熊本から全国のご家庭へ

あら煮に欠かせない赤酒

 筆者が赤酒を知ったのは、熊本に引っ越してきたあと、友人が「赤酒、知らないでしょ! 教えてあげるね」と、魚のアラと赤酒を持ってきて、目の前で調理してくれたときです。赤酒を使うことで簡単にふっくらとおいしくなることに感動して、子どもたちも以来、アラ煮が大好きになり、なんでもおいしく仕上げてくれる赤酒は、わが家でも必須の調味料となりました。

 熊本の食生活に当たり前のように使われている赤酒は、子どもたちが大きくなって熊本から離れたときに、故郷のお母さんの味と共に思い出すことでしょう。私は食育の先生として熊本で長年受け継がれ愛用されている赤酒を、子どもたちを通して次世代へ継承していきたいと思います。

 熊本の「赤酒」は、忙しい毎日の食事づくりを簡単においしくしてくれますので、ぜひ、調理に取り入れてみてくださいね。

<写真・文/松野文枝>
取材協力:瑞鷹株式会社

[地元の食文化から食育を考える]

松野文枝さん
熊本市在住。1男1女の母。日本キッズ食育協会マスタートレーナー、青空キッチン熊本校主宰。東京から引っ越して9年目。おいしい食材が豊富な熊本を楽しんでいます。「食べることを大事にすることは生きることを大事にすること!」小さな頃から食育を学ぶことは、生きる力を培うことという思いを軸に、子どもたちに食育を教えています。
(社)日本キッズ食育協会

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