熊本だけのカラカラの油揚げ。「南関あげ」はおいしく長期保存可能

[地元の食文化から食育を考える]

全国に点在する「日本キッズ食育協会」のキッズ食育トレーナーは、各地で子どものための食育活動を行っています。地元で伝え継ぎたい食文化、地元に根ざした食材の魅力を、日本全国のキッズ食育トレーナーに教えていただく連載。第1回目は熊本県を中心に活動する松野文枝さんです。

カラカラに乾いた油揚げ?「南関あげ」との衝撃の出合い

南関あげ
スーパーではこのように積みあがった状態で売っています

 皆さんは熊本の油揚げ「南関(なんかん)あげ」をご存知ですか? 8年前に東京から熊本に引っ越してきた当初、関東に比べてお豆腐の棚に油揚げが占める割合が少ないなぁと思っていました。ある日、スーパーの片隅に積みあがった「南関あげ」の存在に気づいて、これって油揚げ?? 油揚げなのにカラカラに乾いてるよね? これどうやって使うの? おいしいの? いろいろな気持ちが混ざり合って、好奇心でワクワクしながら買ったのが、私と南関あげとの出合いでした。

南関あげが3枚入っています

 南関あげを買ってみて袋を開けると、厚さ約1cm、10cm角の揚げが3枚入っていて、お値段は150円くらいとコスパ最高。さらにこれより大きな20㎝角やカットしてあるタイプなど、いろいろな種類が売られています。

手でパリッと割れます

 子どもでも簡単に手でパリッと割れますから、包丁を使わなくても調理が出来て便利です。食育の先生としては、これなら小さな子どもが扱っても危なくないし、気軽にお手伝いしてもらえるなぁといううれしい発見も。

小松菜と南関あげのごま油炒め煮

 このパリパリが料理に加えるといい感じに水分を吸って、普通の油揚げよりふわふわととろけるような舌触りでコクが出るので、みそ汁だけでなく、季節の野菜と炒めたり、おでんやお鍋に入れたり、サラダにしたり、この形を生かして南関あげいなりなど、いろいろな料理に使えるのです。

常温で3か月保存でき、そのまま使えて油抜きも不要!

 南関あげは、熊本県の北西部に位置する玉名郡南関町という山々に囲まれた町で、昔から一枚一枚、丁寧に手作業でつくられています。水分を極力減らして揚げるため、一般的な揚げ豆腐や油あげより長期保存が可能。常温で約3か月保存ができるので、熊本のご家庭には必ずある食材です。さらに油揚げを使うときに面倒な「油抜き」の手間がなく、水分のある料理にはそのまま入れて調理ができるので時短にもなり、忙しい現代にピッタリの食材ではないでしょうか。

 熊本の人たちが当たり前のように毎日使っている南関あげは、熊本の伝統食品。なぜこんなにおいしいものが熊本だけに…? こんなに便利な南関あげを熊本から全国に教えてあげたい、そんな気持ちでいっぱいです!

南関あげにお肉や野菜を巻いた南関あげ巻き
野菜との炒め物

南関あげをくるっと巻きつけた「南関あげいなり」の専門店も

 南関あげは家庭の味だけではありません。熊本市内には「南関あげいなり寿司」の専門店もあります。いなり寿司というと独特な形を思い出すと思いますが、南関あげいなりは、くるっと巻いた形が特徴的ないなり寿司です。

熊本市健軍の南関あげいなり専門店「konkonいなり」さん

 ジューシーでとってもおいしい南関いなり。「konkonいなり」は人気店なので、購入するときは予約するといいかもしれません。

メニューは2種類。カラフルな「とりどり」と「ロールいなり」
「konkonいなり」  住所:熊本県熊本市東区健軍3-1-1 nanoAP1F 電話:096(200)4477
HP:http://konkoninari.com/

南関あげは熊本民が全国区だと信じるほど身近な存在

 食育講師をしている青空キッチン熊本校で、熊本の子どもたちに「『南関あげ』って熊本にしかないのよ」と言ったら、「え~~~!!!全国にあるものだと思ってましたぁ!」とビックリしていました。南関あげは、熊本の人たちにとって、それくらいポピュラーで身近な食材であるということ。こんなにおいしい油あげが当たり前だなんてとってもぜいたくですよね。
 子どもの頃の食の記憶は、その後の食の土台となっていきます。熊本の子どもたちは、将来熊本を離れ故郷を思い出したときに、きっとこの南関あげも思い出すことでしょう。その思い出が「がんばろう」というメッセージとなり、生きる活力を与えてくれる、食にはそんな力があると思っています。

 熊本の油あげはカリカリだけど、絶品伝統食材。一度食べたら忘れられない出合いになるはず。「南関あげ」はふるさとチョイスでもお取り寄せできますので、ぜひ食べてみてください!

[地元の食文化から食育を考える]

<取材・文/松野文枝>

松野 文枝
熊本市在住。1男1女の母。日本キッズ食育協会マスタートレーナー、青空キッチン熊本校主宰。
東京から引っ越して8年。おいしい食材が豊富な熊本を楽しんでいます。「食べることを大事にすることは生きることを大事にすること!」小さな頃から食育を学ぶことは、生きる力を培うことという思いを軸に、3歳の子どもから食育を教えています。
ブログ:https://ameblo.jp/fu-mu
日本キッズ食育協会HP

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